週刊誌「女性自身」が、福島県などの降下物中の放射性物質量が16年9月から17年1月にかけて1平方メートルあたり84ベクレルだったのが、17年1月には5470ベクレルと短期間で約65倍となったのは、丁度その期間に1号機建屋カバーの解体作業をしていたことが関係している可能性があると報じました。
それに対して原子力規制委は、福島原発敷地内34カ所のモニタリングではその間異常を検知していないのでカバー撤去によるものではないと言っていますが、放射性の降下物量のただならぬ急増とカバー撤去の時期が一致していることから、「関係がある」と考える方が自然です。
1号機建屋内では大型吸引器によるゴミ掃除作業を行っているということですが、家庭の吸引掃除機がそうであるようにホコリは100%取れるものではなく微細な粒子はいくらでもすり抜けて、末端が多分上方に向けられている排気ダクト出口から建屋外(上方)に排出されます。
その気流は線香の煙がそうであるように細い流れになって風向きに沿って流れるので、地上のモニタリング点はジャンプしたり、あるいは細い流れとなって設置ポイントの中間を通り抜けたりして検知されない可能性があります。
規制委は単に口先で否定するのではなく、吸引機付のバッグフィルターなどのダスト捕集機の性能をチェックする必要があるのではないでしょうか。
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原子力規制庁、「女性自身」記事うけ見解
原発建屋カバー撤去と数値上昇は「関係ない」
J-CASTニュース 2017年3月29日
(「女性自身」 3月21日発売)
原子力規制庁は2017年3月24日、21日発売(首都圏など)の週刊誌「女性自身」(4月4日号)に掲載された「福島第一原発1号機 建屋カバー撤去で65倍の放射能が降っている!」などと題した記事についての見解を原子力規制委員会の公式サイト上で発表した。
この記事は、福島第一原発1号機の原子炉が収納された建屋を覆うカバーが16年11月に全撤去されたことで、大気からの降下物(ほこりや雨)に含まれる放射性物質量が増加した可能性があると指摘するもの。これに対し、原子力規制庁は今回の発表で、カバー撤去と降下物の数値の変動に「関係はないと考えております」と指摘。一方、「女性自身」編集部は「(記事内容を)訂正するつもりはありません」としている。
撤去後、「65倍に」
今回の「女性自身」記事では、福島県などの降下物中の放射性物質量が16年9月から17年1月にかけて上昇していることを、原子力規制庁が公開したデータを用いて紹介。1号機の建屋カバーの撤去作業が始まったのは16年9月中旬だ。
記事の中では、16年9月の1か月間の降下物中の放射性物質量が、1平方メートルあたり84ベクレル(放射性セシウム134と放射性セシウム137の合計値)だったのが、17年1月には5470ベクレルと短期間で約65倍となった福島県双葉郡のケースなど6つの都道府県データを取り上げている。
15年9月から16年1月の数値も棒グラフ形式で紹介しており、それによると、今から1年前の16年1月の福島県双葉郡の数値は1130ベクレルだった。記事では、こうしたデータを挙げた上で、元東電社員の男性(記事では実名)の話として次のようなコメントを掲載している。
「福島県の降下物が15年に比べて16年が増えているのは、昨(16)年9月から1号機建屋の解体作業をしていたことが関係している可能性もあります」(カッコ内はJ-CAST編集部注)
「(カバーの撤去後、大型吸引器によるゴミ掃除の作業が始まり)それで汚染ぼこりが飛散しているんでしょう。1号機は屋根もカバーもないわけですから、飛散しやすいんです」(同)
さらに記事の終盤部分では、降下物中の放射性物質量を定期的にモニタリングしている原子力規制委員会に問い合わせたところ、
「いま数値が上がっていることと、建屋カバー撤去との関係は否定できません」
との回答があった” とも書いている。
規制庁「特段問題がある数値とは認識していない」
こうした「女性自身」の記事の内容を受け、原子力規制庁は17年3月24日に公式サイト上に見解を掲載。この「平成29年3月21日女性自身の記事について」と題したコメントでは、
“「降下物の数値の変動と建屋カバー撤去工事及びその後の作業との関係はないと考えております」
と説明。その理由については、記事で紹介された16年9月から17年1月の期間中、カバーの撤去作業が行われた1号機の敷地内や敷地境界など計34か所に設置した飛散物のモニター装置では、「異常な数値」が確認されなかったためだと説明している。
J-CASTニュースが3月27日、原子力規制庁福島第一原発事故対策室の担当者に取材したところ、原子炉建屋のがれきなどの撤去作業時には「のり状」の飛散防止剤を吹き付けるなど「徹底して飛散物が出ないよう管理を行っている」として、
「カバーの撤去と降下物の数値の変動に関係があるとは思えません」
と話した。
また、同庁監視情報課の担当者は取材に対し、今回の記事で指摘された降下物の放射性物質量の増加については、
“「風や天候の影響で数値が左右されやすい調査になりますので、今回のように数値が大きく上下することは通常でも十分に考えられます。(記事で取り上げられた)数値の変動についても、環境的な影響によるものではないかと考えています」
と説明。17年1月に福島県双葉郡で観測された5470ベクレルという数値については、「特段問題がある数値とは認識していない」としていた。
担当者が話した通り、同庁が実施している降下物の過去の調査データを見ると、短期間で放射性物質量の数値が乱高下しているケースはある。特に、福島県双葉郡の15年のデータは上下が激しく、2月に8700ベクレルあったものが、4月には75分の1以下の115ベクレルまで激減。その翌月の5月には再び610ベクレルまで上昇している。
女性自身編集部「訂正を出すつもりはありません」
とはいえ、今回の女性自身記事には「建屋カバー撤去との関係は否定できません」という発言が、原子力規制委のコメントとして掲載されている。担当者は、
「『女性自身』側から電話を受け、担当者が応答したことは事実です。本人に確認を取りましたが、口頭でのやり取りということもあり、どのような内容だったかは正確には分かりませんでした。記事に掲載されたような内容を本当に話したかどうかは不明ですが、本来回答すべき内容は発表した通りです」
と話した。なお、サイト上に見解を掲載したことはすでに「女性自身」編集部にも伝えているという。
一方で、「女性自身」編集部の担当者は27日のJ-CASTニュースの取材に、同誌の取材に応じた原子力規制委のコメントについて、
「記事に掲載した通りの回答があったことは事実です」
と説明。原子力規制委が発表した見解については「何とも言えません」として、
「(記事の内容を)訂正するつもりはありません」
と話した。