2017年3月28日火曜日

移動手段や周知 原発避難、課題なお多く 京都・丹波地域

 京都新聞が、京都府丹波地域の原発事故時避難計画の問題点を洗い出しました。
 いずれも簡単には解決しない問題ばかりです。机上で定めることは出来ても、実効性のある避難計画を立てることが如何に困難であるかを示しています。
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移動手段や周知…原発避難、課題なお多く 京都・丹波地域
京都新聞 2017年03月26日
 東日本大震災から6年が過ぎた。福島第1原発事故を教訓に、各自治体は地域防災計画や住民避難計画の見直しを進めてきたが、運用面の課題は多い。京都府丹波地域も福井県の原発から約30キロ圏内の緊急防護措置区域(UPZ)があり、迅速な避難への備えが急務だ。避難計画は機能するのか、検証した。
 
 南丹市では美山町全57集落中、高浜原発(高浜町)のUPZに53集落、大飯原発(おおい町)には50集落がそれぞれ含まれ、原発事故時の避難対象者は約4300人。京丹波町は高浜原発の同圏内に和知地域27集落があり、避難対象者は約3200人となっている。
 市の避難計画では、集落ごとに園部、八木町の公民館など13カ所にバスで避難する。市は約1700人分のバスを確保し、府の応援も受けるが、全員の台数を確保できるか不透明だ。
 
 京丹波町の同計画では、各集落の公民館からバスで移動するが、確保したのはバスやワゴン車など22台にとどまっている。定員は計約800人で、全員の避難には最低でも4往復する必要がある。
 今冬は積雪による渋滞が多発し、美山町では府道の土砂崩れで芦生など3集落が孤立。道幅が狭い避難路も多いが改修など安全対策のめどは立たない
 避難先も課題を抱える。耐震性不足で18年度から改修される市園部公民館は避難所に指定されているが、地震による損壊も懸念される。市総務課は「周囲に代替施設は多い」とするが、各施設への避難者の振り分けは決まっていない。被災時の周知や誘導の遅れといった混乱も生じかねない。
 町は廃校舎も避難先に指定している。大簾、広野地区の160人が避難する予定の旧須知小講堂は築80年の木造で、耐震診断はされず、雨漏りもある。避難先として活用できるか疑問だ。
 
 避難計画の周知も十分ではない。京都新聞が2015年11月、美山町の住民50人に行ったアンケート結果で、過半数の36人が「避難計画を知らない」と答えた。市は避難区域の住民代表を対象に説明会を開いているが、現時点で一般住民も対象に開催する予定はないという。
 
 京丹波町は計画策定中の11年から住民説明会を開き、12年11月以降、避難訓練を計3回実施した。13年の策定後は防災パンフレットを全戸配布したが、その後の移住者には情報提供していない。
 日中、学校で学ぶ児童の保護も重要だ。5校の統廃合で昨年4月に誕生した美山小は、原発事故が発生した場合、校内で親に児童を引き渡すことにしているが、校区が広く、片道約50分かけて登校する児童もおり、円滑に進まない恐れもある。土砂崩れや大雪時の対応も課題という。
 
 和知地域の子どもたちが通う和知小では、13年度から毎年、保護者も参加した避難訓練を続ける。緊急情報は電話による地域連絡網を活用するが、伝達が途切れたケースがあり、メールの活用も検討する。
 甲状腺被ばくを抑制する安定ヨウ素剤の配布に関し、市は昨年8月、公立南丹病院に加え、美山診療所にも分散配備した。京丹波町も昨年10月、町病院から避難者に近い和知支所に移した。国の指針は、ヨウ素剤を処方する際に医師などの問診を求めているが、両市町とも人材を確保できていない。府の支援など対応が急がれる。