<原発からの請求書>(6)実現困難でも税金投入 高速増殖炉
東京新聞 2017年3月7日
Q もんじゅが廃炉になるといいます。いくらのお金が使われたのですか。
A 三十六年間に一兆四百十億円が投入されました。成果を出すことなく、政府は昨年末、廃炉を決めました。廃炉費も三千七百五十億円に上る見通しです。
Q なぜそんなことに。
A 高速増殖炉は、「増殖」という言葉どおり、使った以上の核燃料をつくれるとされ、「夢の原子炉」ともてはやされました。政府は「資源の乏しい日本には必要」と力を入れてきましたが、一九九四年に稼働させた途端、冷却剤に使う爆発しやすいナトリウムが漏れる大事故に。その後も問題続きでほとんど運転できませんでした。より小規模で基礎的な「常陽」と合わせ一兆六千億円強が研究に費やされました。
Q 費用はだれが負担しましたか。
A 国民です。大手電力が運営する商用の原発の費用が電気料金を中心に集められているのと違い、研究用なので所得税や消費税などで集めた税金がほとんど。文科省が所管する「日本原子力研究開発機構」に予算投入されてきました。
Q 政府は高速増殖炉はあきらめるのですか。
A いいえ。政府は昨年末に経済産業省主導で次の研究に進み、後継機の開発を始めることを決めました。フランスの高速炉建設計画「アストリッド」への参加を決め、二〇一七年度予算で五十二億円を使う予定。研究者もフランスに送り込みます。増殖炉でないので、もんじゅが目指したように燃料が増えるわけではないが、実現すれば使用済み核燃料から出てくるプルトニウムを何度もリサイクルできる点は同じです。政府はフランスとの共同研究で得た知識を生かし、停止中の常陽も再び活用してデータを集め、実用化に近づいた「実証炉」の建設を目指すといいます。
Q また税金の無駄遣いにならないか心配です。
A 共同研究では仏が多額の資金を要求してくる可能性は大きい。経産省の言う通り新たに実証炉をつくるならば一兆円を超えるのは確実です。もんじゅの二の舞いになる心配はあります。
Q なぜ日本は高速炉開発から撤退しないのか。
A 米国、英国、ドイツなどは実現困難とみてすでに撤退しています。日本は、使用済み燃料をそのまま埋めるのでなく、全部リサイクルに回す政策を取っています。このためフランスなどの再処理工場に委託して使用済み燃料から分離したプルトニウムが四十七トンも国内にたまっています。
プルトニウムは核兵器もつくれる物質なので米国など各国が日本を警戒しています。しかし、このプルトニウムは通常の原子炉では使えないため、高速炉が必要になっているのです。日本は「プルトニウムは武器でなく燃料」と言い続けるために、いくら見込みが薄くても高速炉に多額の国民のお金を使わざるをえない「自縄自縛」に陥っているのです。 (吉田通夫)