<原発避難訴訟> 福島地裁結審 判決10月10日
河北新報 2017年3月22日
東京電力福島第1原発事故時に福島県内にいた住民ら3864人が、空間放射線量を事故前に戻す原状回復などを国と東電に求めた訴訟が21日、福島地裁(金沢秀樹裁判長)で結審した。判決は10月10日。今月17日の前橋地裁判決と同様、事故につながった津波の予見可能性、防護対策を巡る東電、国の過失責任が主な争点となっている。
原告数は全国約30件に上る原発事故の集団訴訟で最も多い。前橋地裁、9月に判決予定の千葉地裁に続いて3例目の結審となった。
21日は原告4人と代理人が最終の意見陳述をした。二本松市でスーパーの営業を続けてきた服部浩幸さん(47)は「子どもたちを避難させるべきだったと自責の念に駆られている。全ての被害者が希望を持てるよう、勇気と正義にのっとった判決を望む」と訴えた。
代理人の馬奈木厳太郎(まなぎいずたろう)弁護士は、除染対象が年間被ばく線量1ミリシーベルト以上の区域となっていることを問題視。「1ミリシーベルトは事故前の線量の約6倍で、受忍しなければならない理由は全くない」と述べ、事故前の水準(毎時0.04マイクロシーベルト以下)に下げるよう求めた。
原状回復を巡り、これまで国は「手段や範囲が特定されておらず、訴えは不適法」と主張。東電は「膨大な費用がかかる。不可能だ」などと反論してきた。
原告は2013年3月から順次提訴。原状回復まで1人当たり月額5万円の慰謝料も求めている。原告の事故時の居住地は県内外で、県内は全59市町村に上る。
津波の予見可能性などの争点を巡り、前橋地裁判決は「東電は実際に予見していた」「対策を取っていれば原発事故を防げた」と判断。東電と国の責任を認め、双方に精神的賠償などの支払いを命じた。
原告らは21日、福島市中心部で集会を開催し、「東電は賠償責任を果たせ」と訴えながらデモ行進した。原告側代理人によると、支援者を含め約1000人が参加した。