2017年3月22日水曜日

22- 東電の隠蔽体質は改善されていない

 東電の隠蔽体質は根が深くそれが発覚する最初の切っ掛けになったのは、東電福島第1・第2原発、柏崎刈羽原発の自主点検で、原子炉内部の点検を行ったアメリカのゼネラル・エレクトリック(GE)の技術者が、2000年に通産省宛に送ったデータ改ざんの告発文書でした。
 そのときも東電は点検データの改ざんを直ぐには認めずに、2002年にGE社が当時の原子力保安院に全面協力する体制ができてからようやくそれを認めました。告発があってから2年も経ってからのことで、そのとき明らかにされた改ざん個所は約30カ所でした。
 
 それは米社員による告発があったために2000年に明らかになりましたが、そうした隠蔽は、恐らく定期点検や自主点検で不具合が見つかったときから一貫して行われていたものと思われます。
 それからさらに15年が経ちますが東電のその体質は余り変わっていないのではないでしょうか。いまだに地下水の放射能汚染が改善されていない福島原発事故後の対応に関してもその実態は明らかになっていません。
 今年2月、柏崎刈羽原発の免震重要棟の耐震性不足が3年前に分かっていたのに、東電はそれを公開していなかったことが明らかになりました。それを公開したときも東電は、ちょっと普通の人には気が付きにくいような報告の仕方をしたのですが、さすがに原子力安全委員は見落としませんでした。
 東電の隠蔽体質はいまだに変わっていません。
 
 週刊ダイヤモンドと東京新聞が、柏崎刈羽原発の免震重要棟の耐震性に関する東電の隠蔽体質に関連する記事を出しました(10時前に公開したつもりでしたが、手違いで非公開になっていました。18:46記)
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東電の原発再稼働遠のく、現場と本社の連携ミスでまたも失態
週刊ダイヤモンド編集部2017.3.21
「原子力を扱う資格があるのか、あらためて問われている」
 東日本大震災による東京電力福島第1原子力発電所(1F)事故から6年が経過した3月11日、地震が発生した午後2時46分から1分間の黙とうを終えた石崎芳行・東京電力ホールディングス副社長福島復興本社代表は、廃炉に携わる社員約700人を前にした訓示の中でこう述べた。
 だが今の東電は、その資格があるかどうか評価できるような状況にはない。
 現在、東電は新潟県に立地している柏崎刈羽原発6、7号機の再稼働を目指して、原子力規制委員会の審査を受けている。その中で、緊急時対応の前線基地となる免震重要棟の耐震性に関する説明をめぐって、2014年4月に実施した解析で、7種類の基準地震動の全てにおいて規制基準を満たさないというデータがあったにもかかわらず、その説明が抜け落ちていたことが今年2月14日の審査会合で明らかになったのだ。
 
 規制委の田中俊一委員長は、「東電の体質の問題。非常に重症だと思っている」と批判。同28日に廣瀬直己社長に直接、申請書の再提出を求める事態に発展した。
 原因究明に動いた東電は3月9日、本社での情報共有の不備や、部署間での連携不足が背景にあったと規制委に報告。これに憤慨しているのが、柏崎刈羽原発の現場だ。「連携ミスするなんて、本店はいったい何やっているんだ」との怒りの声が噴出した。3年近く取り組んできた審査対応の最終段階だったから無理もない。
 1F(福島第1原発)事故直後から、情報を共有する体制の不備や本社と現場の連携の悪さは問題視されてきたことだ。事故から6年たった今も、東電には依然として悪弊が残っていることが明らかになってしまった。
 廣瀬社長は「原子力を扱う資格があるかないかではなく、常に努力を続ける」と決意を表明したが、その言葉も空虚に響く。
 
遠のく再稼働
 今回の失態は、東電の運命を大きく左右する可能性すらある。
 16年12月、東電の改革の方向性を議論する「東京電力改革・1F問題委員会」(東電委員会)で、柏崎刈羽原発の再稼働は1F廃炉や除染、賠償のコストを稼ぐために重要だと位置付けられた。
 ところが、今回の失態で立地自治体である新潟県からの信頼も地に落ち、原発再稼働は遠のく可能性が高い。再稼働の見込みが立たない事態が続けば、東電委員会でも議論された、東電の原子力事業を分離し、他の電力会社と共同で再稼働を目指すという案が現実味を帯びることも考えられる。
 柏崎刈羽原発の現場だけでなく、信頼回復に向けて汗を流す全ての現場社員の努力が水泡に帰す恐れがあることを、経営陣を含め、本社はあらためて肝に銘じるべきだろう。
(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)
 
 
どうなる柏崎刈羽 新潟知事「再稼働判断延びる」
柏崎市長「廃炉作業を産業に」
東京新聞 2017年3月20日
 新潟県の米山隆一知事と、東京電力柏崎刈羽原発がある同県柏崎市の桜井雅浩市長がそれぞれ、本紙のインタビューに応じた。東電が同原発の免震重要棟の耐震性不足を把握していながら原子力規制委員会の審査で事実と異なる説明を続けていた問題を受け、米山氏は三~四年後としていた同原発の再稼働判断時期が「事実上、後ろにずれる」との見通しを示した。桜井氏も「野球で言えばスリーアウトチェンジ。ゲームセット(試合終了)に近い」と東電の姿勢を批判した。 (山口哲人、荒井六貴)
 
 米山氏は、原発の安全管理に関する県技術委員会が、東電福島第一原発の事故原因の検証を終えた後に、地元自治体として再稼働の是非を判断する方針で、これまで検証に三~四年かかるとしていた。
 だが、免震重要棟問題を受け「東電が出した規制基準への適合審査の申請書が本当か、証拠を示してもらう必要がある。検証することが増えるので、スケジュールは延びる」と早期の再稼働を否定した。
 
 条件付きで再稼働を容認する姿勢の桜井氏も「二〇〇二年に発覚した柏崎刈羽原発を含むデータ改ざん、福島第一原発でのメルトダウン(炉心溶融)隠し、今回の免震棟問題と続き、事実を正確に伝えようとしない東電の体質は問題だ」と企業体質改善を求めた。
 東電が再稼働を目指す柏崎刈羽原発6、7号機以外の1~5号機については「耐震補強などの費用を考えると、東電は再稼働を求めないと思う。2~4号機は〇七年の新潟県中越沖地震で止まったまま。十年稼働していない炉をもう一度動かすだろうか」と指摘。将来の廃炉の可能性を念頭に「廃炉作業を産業にするべきだ」と強調した。