<原発からの請求書>(8)電源開発促進税 原発立地の自治体にアメ
東京新聞 2017年3月9日
Q 検針票の裏に「電源開発促進税」という項目がありますがこれは何でしょう。
A 送電線の利用料に含まれ、消費者に課せられている税金です。発電所のある自治体を中心に補助金の一種である交付金として支出されています。目立たない項目ですが、この税が原発を推進する原動力になったといわれています。
Q どういうことですか。
A この税を財源とする自治体への補助金は表向きは「補助金がもらえるので、発電所を誘致し、電力安定化に協力してください」という趣旨です。だから、火力や水力の発電所がある自治体にも一部は配られます。しかし原発のある自治体には特に手厚いのです。通常の補助金に加えて「原子力発電施設立地地域共生交付金」や「広報・安全等対策交付金」などさまざまな名目でお金が配られ、企業誘致のための補助金などもあります。三千二百億円ほどの年間税収のうち、七割強が原発のある自治体に振り向けられます。自治体が原発から抜け出せなくなる一因といわれています。
Q これまでにどのぐらい投入されましたか。
A 一九七四年度の制度創設から、二〇一五年度当初予算までで、原発絡みで自治体に配られたお金は総額九兆円にのぼります。そもそも電源開発促進税自体が自治体に原発を求めさせるアメとしてつくられたからです。七三年に石油ショックがあり、当時の田中角栄首相は国会審議で「(代替エネルギーで)いちばん早いのは原発だ。発電税をやらねば」と明言。制度をつくりました。
Q なぜ送電線の利用料に入っているのか。
A 自治体対策費は日本全体の利益になるという理屈で、国民全員が使う送電線の利用料への上乗せが認められています。ただ、人件費や修繕費などと同じ「費用」に位置付けているので、利用者に転嫁する段階で消費税も上乗せされます。電力会社の段階では「販売電力一キロワット時につき〇・三七五円」の税金が、消費者への請求額は「〇・四〇六円」に増えています。「税金に税金を課すなんて二重課税ではないか」という批判もあります。
Q 政府が税金で原発を後押ししてきたのですね。
A 原発の維持推進は国策です。電源開発促進税だけではありません。内閣府の「原子力関係経費予算額」をまとめたところ、一九七四年度から二〇一五年度当初予算まで所得税や消費税など一般的な財源からも約八兆円が投入され、原子力技術の研究開発などに使われてきました。高速増殖炉「もんじゅ」などにも一兆円以上が投じられました。原子力政策に投じられてきた税金は、交付金と合わせて十七兆円にのぼります。 (吉田通夫)