<原発からの請求書>(5) 最終処分場建設、運営に3.7兆円 増額の可能性も
東京新聞 2017年3月6日
Q 原発から出る核のごみを受け入れる最終処分場にはいくらかかりますか。
A 経済産業省の試算では建設・運営費で計三兆七千億円かかります。東京五輪向け新国立競技場(総工費約千五百億円)が二十四個できる金額です。
Q なぜそんなにかかるのですか。
A 燃料は再利用しますが、廃液など「高レベル放射性廃棄物」が出るからです。人が近づくとすぐ死亡するほど危険なので、ガラスに混ぜて固め、三百メートル以上の地下に埋めます。日本は地震が多いので耐震性を高め、完全な地下水対策も必要。その状態で最長十万年管理し、やっと放射線が減少するのです。その分、費用はかさみます。東京電力・福島第一原発事故の溶解燃料も受け入れる可能性があり、その場合もっと高くなるでしょう。
Q お金はだれが払うのですか。
A わたしたち電気を利用する国民が払っています。大手電力が出資する専門組織が建設・運営するのですが、費用は電気料金に上乗せされ、積み立てられています。東電の上乗せ額は一キロワット時あたり〇・〇四二五円で、約三百六十キロワット時使用した家庭(図のケース)では月十五円。家庭が電力会社を選べるようになった昨春以降は主に大手電力の利用者が負担しています。二〇一六年三月末時点の積立金は約一兆円にとどまっており、本紙試算では最低四十六年上乗せを続けないと必要額に達しません。
Q 原発を持たない新電力と契約すれば負担をしなくてよいのですか。
A いいえ、一部は負担を迫られます。経産省は〇五年に最終処分対象の核のごみの種類を増やし、見積総額も約八千億円上積みしました。燃料のリサイクルに必要な費用も膨らんでいたので、まとめて計二兆七千億円分を十五年かけて電線使用料である「託送料」に上乗せして集めると決めたのです。検針票の裏に小さく記されている「使用済燃料再処理等既発電費相当額」という長い名前の項目です。一キロワット時につき〇・一一二円の負担で、図の家庭は約四十円の負担。従来負担と合わせ月五十五円。東電管内の平均家庭(月間使用量二百六十キロワット時)は毎年計千六百七十五円ずつ積み立てに協力している計算です。
Q 処分場はいつできるのですか。
A 政府は長年候補地を探してきましたが、人々の抵抗感は強く、みつかりません。経産省は断層の状況などから有望地域を示す地図を昨年末までに示す予定でしたが、先送りにしています。ごみの受け入れ先がないにもかかわらず、政府と電力会社は原発再稼働を急いでおり「無責任」との批判があります。
日本学術会議も「いまの科学で十万年の安全確保は証明できない」としており、建設計画は難航が必至。資金面でも作業が進めば、三兆七千億円の見積もりを大きく超え、国民は電気代からの積み立て増額などを迫られる可能性があります。 (吉田通夫)