2017年3月10日金曜日

福島からの避難者いじめ 大人も半数近くに

 NHKが早稲田大学などと協力して、福島県から避難した人たちを対象に行った「原発避難いじめ」のアンケートで、回答した741人のうち、半数近い334人が、大人も避難先などで嫌がらせや精神的苦痛を感じたことがあると答えていました。
 その内容について複数回答で尋ねたところ、賠償金に関するものが最も多く274件、避難者であることを理由としたものが197件、さらに、放射能を理由としたものが127件でした。
 また「子どもがいじめられた」と回答したのは54人に上りました。
 
 新潟県内では、NHK新潟放送局新潟大学などと共同で行った同種のアンケートで、回答のあった104のうち、原発事故に由来したいじめが相次いでいる事態について62%余りの人が「憤りを感じる」と答えました。
 次に多かったのは「大人でも差別意識を感じる」で30%近くと、子どもだけでなく、避難者全体で嫌な思いをしている人が多いことがわかりました。「身内にも起きた」を選んだ人10%余りでした。
 
 それとは別に、横浜市に自主避難してきた男子生徒がいじめを受けていた問題で、生徒が当時の心境をつづった直筆の手記の全文が明らかになりましたので、併せて紹介します
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“原発避難いじめ” 大人も半数近くに
NHK NEWS WEB 2017年3月9日
「原発避難いじめ」について、NHKなどが福島県から避難した人たちに行ったアンケート調査で、いじめを受けていた子どもたちと同じく、大人たちも「賠償金」などを理由として避難先で嫌がらせや精神的苦痛を受けていて、その数は全体の半数近くに上ることが明らかになりました。
 
NHKが早稲田大学などと協力して、福島県から避難した人たちを対象に行った「原発避難いじめ」のアンケートでは、回答した741人のうち、「子どもがいじめられた」と回答したのは54人に上りました。
 
さらに、半数近い334人が、大人も避難先などで嫌がらせや精神的苦痛を感じたことがあると答えていました。その内容について複数回答で尋ねたところ、賠償金に関するものが最も多く274件、避難者であることを理由としたものが197件、さらに、放射能を理由としたものが127件でした。
 
具体的には「避難者であることを理由に団地の行事に参加させてもらえなかった」や「自動車に傷をつけられた」、さらに、「転職先で賠償金をもらっているから資格や給与をあげる必要はないと言われた」など、福島県から避難した人たちに対する嫌がらせや偏見が、子どもだけでなく大人たちにも広がっている実態が浮かび上がりました。
 
首都圏に避難してから2人の子どもがいじめに遭い、自身も職場で嫌がらせを受けたという父親は「東電に文句いえば、金になるんだろうから働かなくていいといわれた。被災者だというのが知られると怖いので、福島の人間だと言わないようにしています」と話していました。
 
アンケートを実施した早稲田大学人間科学学術院の辻内琢也教授は「賠償金が生活環境やふるさとを奪われた人たちに対する償いであるということが忘れ去られてしまっている。多くの人たちが原発事故の被害が今でも続いていることを知ることが大切だ」と話しています。
 
 
避難いじめ 60%が「憤り」
NHK新潟放送局 2017年3月9日
NHK新潟放送局は、東日本大震災と原発事故の影響で(新潟)県内で避難を続ける人などにアンケートを行い、100人余りから回答を得ました。
この中で、去年からことしにかけて県内外で相次いで発覚した「原発避難いじめ」について、その受け止めを尋ねたところ、「憤りを感じる」と回答した人が60%余りに上りました。
 
 NHK新潟放送局は、新潟大学などと共同で、東日本大震災と原発事故の影響で県内で避難を続けている人や避難経験のある人などに、電話や対面でアンケートを行い、104人から回答を得ました。
この中で、県内の小中学校で福島県から避難してきた子どもたちが、名前にばい菌の「菌」をつけて呼ばれるいじめを受けるなど、原発事故に由来したいじめが相次いでいる事態についてどう受け止めているか尋ねました。
アンケートは、7つの答えの中から複数の回答を選ぶ方式で、半数を超える62%余りの人が「憤りを感じる」と答えました。
また、次に多かったのは「大人でも差別意識を感じる」で30%近くと、子どもだけでなく、避難者全体で嫌な思いをしている人が多いことがわかりました。
 
こうした「原発避難いじめ」については、子どもは何も悪くないのに気の毒とか、子どもは大人のまねをして言うから、これは大人の責任だなどと指摘する意見もありました。
さらに、回答の中には、「身内にも起きた」を選んだ人も10%余りいて、自分の子どもが福島の言葉で話していじめられたなどと、つらい胸のうちを語る人もいました。
 「原発避難いじめ」をめぐっては、文部科学省が去年12月、全国の教育委員会に対して、同様のいじめがほかにもないか確認をするよう通知しています。
 県内では、県教育委員会がメールで相談を受け付ける窓口を設けたりと対策が進められています。
この結果について、共同で調査した新潟大学教職大学院の雲尾周准教授は「学校や教員だけの問題ではなく、大人の意識もかなり強い部分がある。きちんと大人の認識を変えると同時に、子どもたちに対しても震災についての教育をきちんと行っていくことが必要だと思う」と話しています。 
 
 
原発事故で避難 いじめ問題で生徒の手記 全文明らかに
NHK NEWS WEB 2017年3月8日
東京電力福島第一原子力発電所の事故で横浜市に自主避難してきた男子生徒がいじめを受けていた問題で、生徒が当時の心境をつづった直筆の手記の全文が明らかになりました。
 
原発事故で横浜市に自主避難し、転校先の小学校でいじめを受けていた現在、中学1年の男子生徒は、おととし7月に当時の心境を手記に書いていて、これまで一部だけが公開されていました。
今回、NHKの取材で、ノート3ページにわたる男子生徒の直筆の手記の全文が明らかになりました。
 
手記では、「ばいきんあつかいされて、ほうしゃのうだとおもっていつもつらかった。福島の人はいじめられるとおもった」と、原発事故のためにいじめられている現実をみずからの言葉で記しています。
そして、小学5年生の時に同級生から賠償金があるだろうと言いがかりをつけられて遊ぶ金を払わされていたことが書かれていて、「としょホール、教室のすみ、防火とびらのちかく、体育館のうら、人目がきにならないところでもってこいと言われた」と、金を要求された詳細がつづられています。
そのうえで「お金もってこいと言われたとき、すごいいらいらと、くやしさがあったけど、ていこうすると、またいじめがはじまるとおもって、なにもできずに、ただこわくて、しょうがなかった。ばいしょう金あるだろと言われ、むかつくし、ていこうできなかったのもくやしい」といじめから逃れるために金を払い続けるしかなかった心境を書き連ねています。
 
また、学校側に何度も被害を訴えたもののいじめと認められなかったことについては、「いままでいろんなはなしをしてきたけど、しんようしてくれなかった。なんかいもせんせいに言おうとすると、むしされてた」としたうえで、ひときわ大きな文字で「学校も先生も大きらい」と書いています。
そして最後のページには「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだから、つらいけどぼくはいきるときめた」と結んでいます。
現在、男子生徒はフリースクールに通っていて、徐々に明るさを取り戻しているということです。
 
生徒の直筆の手記【全文】
としょホール教室のすみ防火とびらのちかく体育館のうら
3人からどれかしらでお金をもってこいと言われた。
○○○(関係児童名)からはメールでも言われた。
人目がきにならないところでもってこいと言われた。
お金もってこいと言われたときもすごいいらいらとくやしさがあったけどていこうするとまたいじめがはじまるとおもってなにもできずにただこわくてしょうがなかった。
いろんな人から○○(生徒本人名)が(金を払ったと)言われてるが、うらでは、○○○ ○○ ○○○(関係児童名)がしじしてる。
てんこうしたときなんかいつもけられたりランドセルをふりまわしたりいつもこわくてなにもできなくてほんとうにつらかった。
4月もゲーセンにもいってるのに、○○○ ○○ ○○○は(関係児童名)ずっとだまっていて、やつらはほんとうにむかつく。
ばいしょう金あるだろと言われむかつくし、ていこうできなかったのもくやしい。
○○○ ○○(関係児童名)にはいつもけられたり、なぐられたりランドセルふりまわされる、かいだんではおされたりしていつもどこでおわるかわかんなかったのでこわかった。
ばいきんあつかいされて、ほうしゃのうだとおもっていつもつらかった。
福島の人はいじめられるとおもった。なにもていこうできなかった。
しえんぶっしをとられてむかつく。
だれがやったかわからないけどきがつくとえんぴつがおられてる。そしてノートにはらくがきをされてた。
いままでいろんなはなしをしてきたけどしんようしてくれなかった。だからがっこうはだいっきらい。
なんかいもせんせいに言おうとするとむしされてた。
(大文字で)学校も先生も大きらい。
いままでなんかいも死のうとおもった。
でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた。
(大文字で)みんなきらいむかつく
5年のたんにんはいつもドアをおもいっきりしめたりつくえをけったりして3.11のことをおもいだす。
 
いじめに苦しむ人にメッセージ
現在、フリースクールに通っている13歳の生徒が、いじめで苦しんでいる人たちへのメッセージをつづりました。
メッセージの中で男子生徒は「今、僕は楽しく生きています。一日一日前向きにいれば何とかなります。だから、つらいことがあっても自殺を考えないで下さい。もし自殺したら何があったかほかの人に伝える事も出来ない、それに今は学校に行きたくないなら、僕みたいにフリースクールみたいな場所もあるから、そこに行って勉強するのもいいです。環境になれなくてもゆっくり自分のペースでなれればいいです。だから自殺は考えたらダメ」と呼びかけています。