この決定に対して住民の代表の辻義則さんは「大阪高裁は、住民の声に耳を傾けず、原発を容認する行政の姿勢を忖度し、あまりにも情けない決定を出した」と強く非難しました。
住民側の弁護団長の井戸謙一弁護士は「国民の意思を無視した今の政治状況の中で、司法がストップをかける役割なのに残念な結果になった。司法への信頼を勝ち取るチャンスを逃した」と話しました。
とても残念な決定ですが、これまで高裁で脱原発の判決が出た例はないので、この結果は予想された範囲でした。原告の代表は「行政の姿勢を忖度した決定」と述べましたが、最終的にはそこにつながるもののより直接的には(「裁判所の人事を司る)最高裁事務総局の意向を忖度した決定」というべきでしょう。
要するに高裁以上のレベルにおいて国策に反する判決を望むのは無理というのが日本の裁判の実態です。2014年5月、国連拷問禁止委員会でアフリカの委員から、日本の「司法制度の不透明性は『中世の名残』である」と批判されました。その時は検察の取調べのあり方が批判されたのでしたが、権力の意向に沿うことを旨とする裁判のあり方はまさに「中世の司法」と呼ばれるべきです。
(関係記事)
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高浜原発3・4号機 再稼働認める判断 大阪高裁
NHK NEWS WEB 2017年3月28日
福井県にある高浜原子力発電所の3号機と4号機について、大阪高等裁判所は「原子力規制委員会の新しい規制基準は不合理ではなく、原発の安全性が欠如しているとは言えない」として、大津地方裁判所が運転停止を命じた去年3月の仮処分の決定を取り消し、再稼働を認めました。
高浜原発3号機と4号機について、大津地裁は去年3月、滋賀県の住民の申し立てを認め、「福島の原発事故を踏まえた事故対策などに危惧すべき点があるのに、関西電力は安全性の確保について説明を尽くしていない」として、稼働中の原発としては初めて、運転の停止を命じる仮処分の決定を出しました。
関西電力は、異議を申し立てましたが認められず、決定を不服として大阪高等裁判所に抗告していました。
28日の決定で、大阪高裁の山下郁夫裁判長は「関西電力は、原子力規制委員会の新しい規制基準を踏まえて、想定される最大規模の地震や津波の対策をとり、安全性の根拠を示している」と指摘しました。
そのうえで、「福島第一原発の事故は具体的な原因などに未解明な部分が残されているが、同じような事故を防止する対策を行うために不可欠な教訓は十分に得られている。新規制基準は原発事故の原因究明や教訓を踏まえていて不合理ではなく、原発の安全性が欠如しているとは言えない」として、運転停止を命じた仮処分の決定を取り消し、高浜原発3号機と4号機の再稼働を認めました。
また、去年4月に震度7の揺れを2度観測した熊本地震を受け、高浜原発が大地震に立て続けに襲われる可能性があるかどうかについて、「関西電力の調査によると、想定される最大の揺れが連続して発生することはほぼありえず、仮に連続したとしても、原発の安全性は確保されると言える」と指摘しました。
高浜原発では、ことし1月に大型クレーンが倒れた事故を受け、安全対策の総点検などが行われていて、関西電力は、福井県などの理解を得たうえで、核燃料を原子炉に移すなど再稼働に向けた手続きを始める方針で、再稼働まで1か月程度はかかると見られます。
関電社長 理解得ながら再稼働に向け準備を
(省 略)
高浜町長「あるべき判断でほっとした」
(省 略)
福井県知事「妥当で明確な判断に戻った」
(省 略)
住民代表「あまりにも情けない決定」
仮処分を申し立てた住民と弁護団は、大阪市内で記者会見を開きました。
住民の代表で滋賀県長浜市の辻義則さんは「1年前の大津地裁の決定は、関西電力が安全に関する主張を尽くしていないという画期的な判断で、全国から喜びの声が届いた。一方で大阪高裁は、住民の声に耳を傾けず、原発を容認する行政の姿勢にそんたくし、あまりにも情けない決定を出した」と強く非難しました。
また、住民側の弁護団長を務める井戸謙一弁護士は「決定は最初から結論ありきだったと思う。決定文の中には『過酷事故になることは考えられない』という記述もあり、新たな安全神話というしかない。福島第一原発事故の原因がわかっていない中、原発を容認してきた行政に、司法がストップをかけるチャンスだったが、その役割や責任がかけらも感じられない。全国でたくさんの人が闘っているので、決定を徹底的に読み込んで各地の訴訟に生かしたい」と話しました。
弁護団によりますと、決定を不服として最高裁判所に抗告するかどうかは今後検討するとしています。
住民側弁護士「司法への信頼勝ち取るチャンス逃した」
住民側の弁護団長の井戸謙一弁護士は「東京電力福島第一原子力発電所の事故の前と変わっていない決定だ。国民の意思を無視した今の政治状況の中で、司法がストップをかける役割なのに残念な結果になった。司法への信頼を勝ち取るチャンスを逃した」と話していました。
滋賀県知事「再稼働容認できる環境にはない」
滋賀県の三日月知事は「1つの司法判断が下されたことについては受け止める。しかし、原発には実効性ある多重防護体制の構築が不可欠で、使用済み核燃料の問題や廃炉について、まだ十分に道筋がついていない段階で、再稼働を容認できる環境にはない」と述べました。
そのうえで、福島第一原発の事故を教訓に万全の安全対策をとるよう、電力事業者と国に強く求めていく考えを示しました。
京都府知事 万全の上にも万全の安全確保対策求めていく
京都府の山田知事は「大阪高裁の決定は尊重する。京都府としては発電所構内でクレーンが倒壊するなどの初歩的なミスによる事故が続いていることから、引き続き、府民の安心・安全の確保を第一に、国や関西電力に対して、万全の上にも万全の安全確保対策を求めていく」とするコメントを発表しました。
官房長官 関電は再稼働について最善の努力を
(省 略)
経産相 関電は理解得る努力しながら再稼働を
(省 略)
原子力規制委「コメントする立場にない」
(省 略)
原発めぐる判断 各地では
(後 略)