<原発からの請求書>(7)核燃サイクルの国民負担 12・6兆円、さらに膨張も
東京新聞 2017年3月8日
Q 高速増殖炉・もんじゅの廃炉では一兆円超の税金が無駄になりました。
A もんじゅは使用済み核燃料をリサイクルする核燃料サイクル事業の一環です。同事業全体ではもっと多額のお金が使われています。青森県六ケ所村の使用済み核燃料の再処理工場で行われている事業です。本紙集計では、地元への補助金なども合わせて、すでに十兆円のお金が投じられています。
各原発から持ち込まれる使用済み燃料から再利用可能なプルトニウムを取り出そうというものです。もんじゅがなくても、ウランと混ぜてMOX(モックス)と呼ばれる燃料をつくり、発電所で再利用する事業の実現を当面、目指しています。
Q 事業は順調ですか。
A 順調とは程遠い状況です。事業主体である日本原燃は、漁師の人など地元住民の反対を押し切って、二十年以上も前に工場を着工したのに完成時期を二十三回も延期し、いまだに完成していません。七千六百億円のはずだった建設費見込みも約二兆二千億円まで膨れ上がってしまった。工場の試運転費や再処理費用積立金などでどんどんお金が費やされている状況。建設費と四十年間の運営費を合わせ費用は総額十二兆六千億円になる見通しです。
Q だれが負担しているのですか。
A 電気料金に上乗せされ、消費者が払っています。
Q いくらぐらいですか。
A 東電契約者では一キロワット時あたり〇・〇八円、平均的な家庭の使用量(月二百六十キロワット時)に換算すると月二十一・三円、年二百五十五円です。経産省はこれだけでは足りないとみて、二〇〇五年から十五年間は電線使用料に上乗せ徴収することも認めました。検針票の裏にある「使用済燃料…」の長い名前の項目です。追加分は一キロワット時あたり〇・一一二円で年三百四十九円。平均家庭は本来分との合計で毎年六百四円を支払っていることになります。
Q それだけ国民がお金を払ってもうまくいっていないとは。
A 工場が軌道に乗らないため、フランスの工場に再処理を頼み、取り出したプルトニウムからMOX燃料をつくってもらっています。
Q 国民負担がさらに増えることはないのですか。
A そのおそれは十分あります。政府は、事業に関与を強めるため「使用済燃料再処理機構」を設立し、費用を見積もり直すとしており、さらに増える可能性があります。
問題は再処理費用がどの程度かかっているか、消費者に公表されないまま、負担がひそかに転嫁され続けていることです。検証もなく実現できるかも分からない事業を続けるなら、国民負担だけが増え続けていく危険が大きくなります。(桐山純平)