昨年末に廃炉が正式決定した「もんじゅ」について、日本原子力研究開発機構が今年4月にまとめる廃炉の「基本計画」では、燃料の取り出しだけで5年半かかることが分かりました。何とも浮世離れしたペースで原子力規制委の田中俊一氏も「燃料交換に5年半もかかるなら、実用炉としては使い物にならない」とあきれかえっています。
燃料取り出し装置の点検に9カ月程度を要するなど取り出し準備だけで少なくとも1年はかかるという背景もあるようなのですが、突発事態時には緊急に燃料を取り出す必要がある筈なので、それをこれまで未点検のまま放置していること自体が余りにもずさんなことで、悪しき体質がまたしても露呈しました。
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【原発最前線】
廃炉決定「もんじゅ」燃料取り出しだけで5年半!
原子力機構の“悪しき体質”再び露呈
産経新聞 2017年3月24日
昨年末に廃炉が正式決定した高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)。日本原子力研究開発機構は、今年4月にも廃炉にむけた「基本計画」を取りまとめる予定だが、30年にも及ぶ長い工程が想定されている。中でも驚くべきは燃料の取り出しだけでも5年半かかるという原子力機構の説明だ。原子力規制委員会の田中俊一委員長も「燃料交換に5年半もかかるなら、実用炉としては使い物にならない」とあきれかえる。背景には、原子力機構のずさんな体質もあるようで…。(社会部 蕎麦谷里志)
取り扱いが難しいナトリウム
もんじゅの原子炉容器には現在、198体のプルトニウム・ウラン混合酸化物(MOX)燃料と、172体の劣化ウラン燃料の計370体の燃料が入っている。規制委は燃料が炉内にあることが「最大のリスク」ととらえており、可能な限り早期の取り出しを求めている。
ただ、もんじゅの燃料取り出しは通常の原発のように簡単ではない。通常の原発では、燃料の取り出しは水中に入れたままの状態を保ちながら燃料貯蔵プールに運ぶ。定期点検などで行われるが、かかる時間は準備も含めて1週間から10日程度だ。
これに対し、もんじゅでは燃料の冷却材に水ではなくナトリウムが使われている。ナトリウムは水や空気にふれると激しく反応するため、燃料取り出しには密閉した空間をアルゴンガスで満たした上で遠隔操作する必要がある。
作業工程も多く、取り出した燃料は(1)ナトリウムで満たされた炉外燃料貯蔵槽で一時保管(2)高温の蒸気で燃料についたナトリウムを洗浄(3)燃料1体ごとに缶詰缶に封入(4)缶詰缶に入れたまま水の張った燃料池(水プール)で保管-という作業が必要となる。
事前点検に最低1年
そうはいっても、燃料交換のたびに5年以上も停止していたのでは効率が悪すぎる。5年半もの時間がかかるのは工程が複雑だという理由だけではないのだ。
もんじゅは、平成22年以降、稼働しておらず、この間、燃料を取り扱う設備も休止状態だったため、使用再開にあたっては点検を実施し、安全に使えることを確認しなければならないのだ。原子力機構によると、点検に9カ月程度を要する設備もあり、取り出し準備だけで少なくとも1年はかかるという。
また、燃料を一時保管する炉外燃料貯蔵槽にはすでに、200体の燃料が貯蔵されており、原子炉から燃料を受け入れるには、先にこの燃料を燃料池に移す必要がある。
原子力機構は5年半という期間は、あくまでも点検などを含めた期間と強調。取り出しの準備が整えば、1日数体の燃料取り出しが可能で、田中委員長の「使い物にならない」との指摘は当たらないと主張する。
“悪しき体質”廃炉でも露見
ただ、田中委員長は「燃料を抜く装置を、ここに至って点検しないと駄目だなんていうのは、考え方を疑いたくなる」とも指摘する。事故やトラブルなど「何かあったときに原子炉から燃料を抜くのは基本」だからだ。
もんじゅの廃炉が決まったのは、そもそも原子力機構のずさんな体質に見切りをつけた規制委が「もんじゅの出力運転を安全に行う主体として必要な資質を有していない」と烙印を押したのがきっかけだった。
汚名返上が至上命題の原子力機構だが、廃炉の最初のステップで再び“悪しき体質”を露呈させる結果となっているのだ。