伊方原発3号機について、広島県などの住民4人が2016年3月、「重大な事故が起きる危険がある」として広島地裁に運転停止の仮処分申請をしたのに対する決定が今日(30日)下されます。
中央構造線に近く巨大地震に見舞われる可能性、南海トラフのよる大津波の発生、九重山が噴火した場合に降る火山灰の厚さと影響などが論争点になっていますが、同原発が日本一細長い佐多岬半島の付け根にあるため半島の住民の避難が困難という問題も見逃せません。
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伊方原発3号機 運転停止の仮処分 きょう判断へ
NHK NEWS WEB 2017年3月30日
愛媛県にある伊方原子力発電所3号機の運転を停止するよう、広島県などの住民が求めた仮処分の申し立てについて、広島地方裁判所は30日、判断を示します。仮処分の決定はすぐに効力が生じることがあり、裁判所がどのような判断を示すのか注目されます。
愛媛県にある伊方原発3号機について、広島県などの住民4人は、去年3月、「重大な事故が起きる危険がある」として運転の停止を求める仮処分を広島地方裁判所に申し立てました。
伊方原発の周辺には複数の活断層があり、四国電力は九州、四国、近畿にかけて延びる断層が長さおよそ480キロにわたって連動した場合などを想定して、原発での最大の揺れを算定しました。
これについて住民側は「連動した場合などの地震の揺れが小さい」と主張したのに対し、四国電力は「地震の不確かな要素を考慮しながら揺れの大きさを算定し、安全性は確保されている」などと争っていました。
伊方原発3号機は、去年8月、原子力規制委員会の新しい規制基準の下で再稼働していて、広島地方裁判所は30日、申し立ての判断を示します。
仮処分の決定はすぐに効力が生じることがあり、裁判所がどのような判断を示すのか注目されます。
原発をめぐる仮処分では、大津地方裁判所が去年3月、稼働中の原発としては初めて、福井県にある関西電力の高浜原発3号機と4号機の運転停止を命じましたが、28日、大阪高等裁判所が決定を取り消して、再稼働を認めています。
主な争点は3つ
伊方原発3号機の運転停止を求める仮処分の申し立ては、主に3つの点が争われました。
最大の争点は、想定される最大規模の地震の揺れ「基準地震動」です。
原発の新しい規制基準で、重要な設備や機器は基準地震動に耐えられるよう設計することが求められています。
四国電力は、原発の北側およそ8キロにあり四国から近畿にかけて伸びる「中央構造線断層帯」と、九州の「別府-万年山断層帯」の、合わせて長さ480キロの断層が連動した場合も想定して、最大の揺れを算定しました。その結果、「中央構造線断層帯」のうち、原発の近くに延びる長さ69キロの区間がずれ動いた場合に最も大きな揺れになるとして、基準地震動を650ガルと算定し、原子力規制委員会も了承しました。
これについて住民側は「断層が480キロにわたって連動した場合の揺れが小さく評価されている」と主張したのに対し、四国電力は「地震の不確かな要素も考慮しながら算定し、断層が480キロ連動した場合でも、原発の安全性は損なわれない」と反論しました。
2つ目の争点は、想定される津波の大きさです。
四国電力は、マグニチュード9クラスの南海トラフの巨大地震も含めてさまざまな地震を検討した結果、「中央構造線断層帯」と「別府-万年山断層帯」のうち、海域にある長さ130キロの区間が連動して動くなどした場合に、最も大きな津波が原発に到達すると判断しました。最大の津波の高さは8.1メートルと予想され、原発の重要な施設が海面から10メートルの高さに位置していることから、原発の安全性に影響はないとしています。
これについて住民側は「地震の規模が小さく評価され、想定を超える津波が到達するおそれがある」と主張したのに対し、四国電力は「マグニチュード9クラスの南海トラフの巨大地震も含めて検討していて、想定を超える津波が到達するとは考えられない」と反論しました。
3つ目は、火山噴火のリスクについてです。
伊方原発から半径160キロ以内には大分県の九重山や熊本県の阿蘇山などがあり、四国電力は、九重山が噴火した場合に降る火山灰などの厚さを最大15センチと予想して、火山活動が影響を及ぼす可能性は低いとしています。これについて住民側は「火山灰などの濃度が低く評価され、原発の冷却機能を維持する非常用の発電機に火山灰が詰まって機能が喪失するおそれがある」と主張したのに対し、四国電力は「火山灰などの量は高く見積もっていて、非常用の発電機の機能が喪失する可能性は低い。原発の運用期間中に巨大噴火が起きる可能性は十分に低い」などと反論していました。