いまだに12万人を超える人たちが避難生活を送り、3万人が狭い仮設住宅で生活しています。
原発事故による居住地の放射能汚染の除去はまだあまり進んでいないにもかかわらず、東京五輪を招致するに当たって放射能はコントロール下にあると言明した手前、無理にも住民を帰還させようとしています。帰還させることで慰謝料の支払いも廃止して対外的にすべて済んだことにしようという魂胆です。
帰還可能の基準は年間被曝量20mSv以下です。
政府はICRPが事故時の措置として20mSvを許容しているということを口実にしていますが、それが誤りであったのは「報ステ」がICRPの副委員長に確認した通りです※。
そもそも1mSvの20倍でも居住が可能などということは常識的にあり得ないことです。政府が住めるという地域の放射線レベルは「放射線管理区域」の4倍にあたる濃度です。この一事をとっても見ても、政府が如何に冷酷であるかということが良く分かります。
LITERAが、安倍政権によるこの ”被災地” 切り捨てを冷酷すぎると批判しました。
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冷酷すぎる! 安倍首相の3・11会見打ち切りで
露わになった政権の東日本大震災“被災地”切り捨ての姿勢
LITERA 2017年3月11日
どこまで冷酷なのか。昨日10日、安倍晋三首相の3.11会見を打ち切ることが発表された。東日本大震災の発生翌年の2012年から毎年3月11日に開いてきた首相記者会見だが、震災から6年となり「一定の節目を越えた」というのだ。
安倍首相は昨日、“森友学園報道潰し”のために、急遽、南スーダンPKO部隊撤退の会見を開いた。自分に都合の悪いことを隠すために会見を開いたり、会見を打ち切ったり、安倍首相の頭にあるのは自らの保身のことだけで、自衛隊員のことも、被災地のことも、まったく真剣に考えていないことの証左だろう。
だいたい「一定の節目を超えた」などと正気で言っているのだろうか。いまも12万人を超える人が避難生活を送り、約3万人が仮設住宅で生活している。被災地では人手不足に加え、東京五輪関連の建設ラッシュのせいで工事費が高騰し被災地での公共工事の入札不調が相次ぐなど、復興が遅れている。とくに福島の場合は、原発事故の影響でいまだ8万人近くの人が避難生活を続けている。
国は福島の11市町村に出した避難指示は、帰還困難区域を除き、9市町村で解除することも決めたが、しかし帰還する人はほとんどいないとみられている。除染も進んでおらずいまだ高い数値を示す場所も多く、実際は帰還できるような安全な状況になっていないからだ。にもかかわらず、国は年間線量が20ミリシーベルト以下になったことを根拠に地域から避難指示を解除する。これは通常の被曝限度である年間1ミリシーベルトの、実に約20倍の数値だ。
そして問題なのは、避難指示解除に伴う賠償金の縮小、打ち切りだ。原発事故で被害を受けた商工業者への賠償は2016年度で打ち切り、また住民一人あたりの慰謝料も2018年3月までに打ち切られる予定。さらに避難指示が解除されれば、そこに住まなくても土地や建物の固定資産税が発生する。
安倍政権は、さらなる被曝の危険性を無視し、除染さえ進んでいない土地に住民を“強制送還”し、まるで原発事故などなかったことにしようとしているのだ。
一定の節目を超えたなどと言っているが、被災地の現実を無視し勝手に終わったことにしているだけではないか。これは、先の戦争の責任をなかったことにして、戦前の体制を復活させようとしている態度とまったく同じだ。
この先、安倍政権下におけるこうした東日本大震災被災地の切り捨てと原発事故の隠蔽はどんどん進むだろう。そして「前を向こう」などという空疎なセリフで、東京五輪やカジノにばかり話題を集中させ、そこにどんどん予算や人がつぎ込まれていくはずだ。
こんな冷酷で身勝手な政治を国民はいつまで放置し続けるのだろうか。 (編集部)