2017年3月31日金曜日

31- 伊方原発運転停止の申し立て退ける 広島地裁

 伊方原発3号機愛媛県の運転を停止するよう、広島県などの住民4人が求めた仮処分の申し立てについて、広島地裁は「住民たちが重大な被害を受ける具体的な危険は存在しない」として退ける決定を出しました。
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伊方原発運転停止の申し立て退ける 広島地裁
NHK NEWS WEB 2017年3月30日
愛媛県にある伊方原子力発電所3号機の運転を停止するよう、広島県などの住民が求めた仮処分の申し立てについて、広島地方裁判所は「住民たちが重大な被害を受ける具体的な危険は存在しない」として退ける決定を出しました。
愛媛県にある伊方原発3号機について、広島県などの住民4人は去年3月、「重大な事故が起きる危険がある」として、運転の停止を求める仮処分を広島地方裁判所に申し立てました。
伊方原発の周辺には複数の活断層があり、四国電力は九州、四国、近畿にかけて延びる断層が長さ480キロにわたって連動した場合などを想定して、原発での最大の揺れを算定した結果、「原発の安全性は確保されている」と主張していました。
 
30日の決定で、広島地方裁判所の吉岡茂之裁判長は「原子力規制委員会の新規制基準は、福島第一原子力発電所の事故の教訓を踏まえた成果というべきもので、不合理な点はない」と指摘しました。
そのうえで、「四国電力は詳細な地盤構造などの調査を行って不確かさを考慮しながら、想定される地震の最大の揺れを決めており、伊方原発が新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断に不合理な点はない。住民たちが放射線被ばくにより、重大な被害を受ける具体的な危険は存在しない」として申し立てを退けました。
一方、決定では、火山の影響について、「原子力規制委員会の立地評価に関する審査の内規『火山ガイド』は、噴火の時期や規模が事前に的確に予測できることを前提にしている点で不合理な点がある」と指摘しました。
伊方原発3号機は原子力規制委員会の新しい規制基準の下で去年8月に再稼働しています。
伊方原発3号機をめぐっては、このほかに松山地裁と大分地裁、それに山口地裁岩国支部でも、原発に反対する住民が運転停止を求める仮処分を申し立てています。
 
裁判所の主な判断
30日の決定では、地震や津波、それに火山などのリスクを考慮したうえで、原子力規制委員会の新規制基準や伊方原発の審査に「不合理な点はない」と判断しました。
このうち、地震のリスクについては、「最新の科学的・技術的な知識を踏まえ、不確実さも考えたうえで複数の手法を用いて多角的に検討しており、四国電力の地震想定に不合理な点はない」と判断しました。
一方で、「四国電力の地震想定の合理性の有無について、確信を得るにはなお慎重な検討を要すべき問題がある」としたうえで、「地震学者などの関係者を呼ぶ作業が不可欠だが、そのような証拠調べは正式裁判で行われるべきで、仮処分の手続きにはなじまない」と指摘しました。
また、津波のリスクについては、四国電力が到達する最大の津波の高さを8.1メートルと予想し、原発の重要な施設が10メートルの高さに位置していることから、津波の影響はないとしていることについて「不合理な点はない」と指摘しました。
また、火山の影響については、「伊方原発の稼働中に大規模な噴火が発生する可能性の根拠が、今回の手続きで示されたとは言えず、再稼働を認めた原子力規制委員会の判断は、結論においては不合理な点はない」としました。
一方で、原子力規制委員会が審査で用いている指針の「火山ガイド」について、「噴火の時期や規模が事前に的確に予想できることを前提にしている点で不合理だ」と指摘しました。
 
申立人の綱崎健太さん「諦める理由ない」
仮処分の申立人で、広島市に住む綱崎健太さん(36)は「残念な決定ですが、諦める理由はないので、今後も原発を止めるため意思表示を続けていく」と話しました。
また、被爆者で正式な裁判を起こしている原告団の団長を務める広島市佐伯区の堀江壯さん(76)は「裁判官には被爆の実態や福島の現状を実際に自分の目で見てから決めてほしかった。世界でこれだけ事故が繰り返されている原発をなぜ、司法は止められないのか残念に思います。命の続くかぎり、次の世代に負の遺産を残さないよう訴えを続けたい」と話していました。
同じく被爆者で、原告団の副団長の伊藤正雄さん(76)は「放射能による被害のおそれが目前にあるのに、これが本当に良心に基づく決定なのか疑問で、本当に残念な思いです」と話しています。
 
住民側弁護士「極めて不当な決定」
住民側は記者会見を開き、この中で河合弘之弁護士は「極めて不当な決定で、決して許すことができない。決定の中で同様の仮処分が複数、申し立てられていることを理由に、判断の枠組みを、これまでの同種の仮処分で唯一、高裁で決定が出ている福岡高裁宮崎支部の判断に従うとしているが、裁判官の独立の放棄に等しい」と述べました。
そのうえで、「安全ではないと住民側が立証することを求めている部分があり、会社側がすべての情報を握っている中では、初めから結論は決まっているのと同じだ」と述べ、決定を不服として広島高等裁判所に抗告する考えを明らかにしました。
 
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