女川原発が立地する宮城県の世論調査(河北新報が実施)で再稼働反対が68%に及んだことについて、河北新報は「女川原発再稼働への拒否感が示された」とする社説を掲げました。
世論調査※によれば、原発が建つ女川町は再稼働賛成が60%近くに及びましたが、市の面積の95%ほどもUPZ(30キロ圏内)に入っている石巻市では80%が反対でした。
背景には原発事故に対する不安(全体の約9割)があり、女川町でも80%近くが「不安」と答えています。
※ 9月2日 女川2号機再稼働 宮城県の68%が反対 … 石巻市は80%が反対
現行の立地「県」と立地「自治体」が「再稼働に同意すれば稼働できる」という考えに「賛成」は1割未満で、5割以上の人が「県と県内すべての自治体」と答えていることに、河北新報は、「11市町村に国の避難指示が出た福島第1原発事故を教訓にすれば、当然なこと。立地自治体に限定する考えの方が時代錯誤ではないか。実態を踏まえて判断しなければならない」としています。
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(社説)女川原発アンケート 再稼働への拒否感示された
河北新報 2017年9月14日
東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働について「反対」が68%だったのに対して、「賛成」は28%にとどまった。
河北新報社が宮城県内の有権者を対象に実施したアンケートの結果である。この数字を見れば、東北電力が2018年度後半以降に目指す再稼働に、拒否感が示されたと言っていいだろう。
反対の理由としては、「使用済み核燃料の最終処分場が決まっていない」がトップ。「全ての原発を廃炉にすべきだ」「安全対策が不十分」と続く。国の原子力政策への根強い不信感がうかがえる。
背景にあるのは、原発そのものへの懸念だ。全体の約9割が安全性について「不安」と回答。再稼働「賛成」が過半数を占めた女川町でさえ、80%近くに達した。
東日本大震災で未曽有の被害をもたらした、東京電力福島第1原発事故の影響があるのは明らか。隣県で起きた過酷な事故だけに、人ごととは思えず、不安感にさいなまれる県民は少なくないはずだ。
女川原発もまた、想定を上回る震災の地震で被災した原発であり、厳しい目を向けられるのはやむを得ない。
原子力規制委員会による施設面の審査で、原子炉建屋の耐震壁に幅1ミリ未満のひびが1130カ所に入ったことが確認されている。
東北電力は「ひびは微細で、構造上の問題はない」と主張しているが、規制委は地震に対する剛性(変形しにくさ)の低下を捉えて耐震安全性に慎重な姿勢を崩していない。
さらに専門家が警鐘を鳴らす「アウターライズ地震」の危険性をはらむ。海溝外側の海側プレートが隆起した領域で発生する地震で、巨大津波が引き起こされる可能性がある。対策の検証が不可欠だ。
再稼働に必要な「地元同意」の範囲についても、課題が浮き彫りになった。
村井嘉浩宮城県知事は「県と立地自治体の女川町、石巻市」との立場だが、アンケートでは「県と県内全ての自治体」と答えた人が5割を超す。知事の考えと同じ内容の回答は1割にも満たなかった。
11市町村に国の避難指示が出た福島第1原発事故を教訓にすれば、当然なこと。立地自治体に限定する考えの方が時代錯誤ではないか。実態を踏まえて判断してほしい。
その意味では、東京電力柏崎刈羽原発を抱える新潟県との対応の違いも際立つ。
米山隆一知事が、福島第1原発事故原因の検証を再稼働の判断に反映させる意向を示しているのに対して、村井知事は「国が総合的に判断すべきだ」と沈黙を守る。
調査では再稼働の是非について、10月の宮城県知事選で投票の材料にすると答えた人はほぼ5割に上った。議論は入り口にも入っていない。4選出馬を明言する村井知事は、女川原発再稼働へのスタンスを明確にすべきだ。