河北新報が、再稼働申請をしてから3年半が経過している東北電力女川原発2号機の審査状況を取り上げました。
これまではあまり注目されてきませんでしたが、女川2号機の原子炉建屋の耐震壁には東日本大震災で幅1ミリ未満のひびが1130カ所入り、最上階は地震への剛性が最大70%低下したことが判明しているということです。
東北電は建屋の耐力自体に影響はないと主張しているそうですが、壁のひび割れはコンクリート躯体が地震でひび割れしたことの顕れなので、強度に影響しない筈がありません。
東北電も最上階については地震に対する剛性が7割も低下していることを認めていますが、これも最上階だけが特異的に強度を失ったということはあり得ず、それ以下の階でも同じように剛性を失っている筈です。
規制委にそうした建物の強度を評価できる人材がいるのかは不明ですが、かつて「火山条項」では火山学の専門家が一致して指摘した問題点を、素人だけの規制委が無視した事実があります。
この問題でも専門家集団による精密・正確な判定が求められます。
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原子力規制委発足5年
福島第1と同型「沸騰水型炉」再稼働の審査ヤマ場
河北新報 2017年9月19日
19日に発足丸5年となった原子力規制委員会で、東京電力福島第1原発と同型の「沸騰水型」の原発再稼働に向けた審査がヤマ場を迎えている。審査中の沸騰水型8原発10基のうち、東電柏崎刈羽(新潟県)に近く、初めて合格が出される見込みだ。審査申請から3年半になる東北電力女川2号機(宮城県女川町、石巻市)を含め、沸騰水型は審査が今後加速する可能性がある。
規制委は今月20日以降に柏崎刈羽6、7号機の新規制基準審査の合格を判断する見通し。福島の事故を踏まえた特別な安全対策が必要なため、審査会合は151回に上った。
他の沸騰水型の審査会合は、日本原電東海第2(茨城県)、中国電力島根2号機(島根県)、中部電力浜岡4号機(静岡県)でも70~90回程度開かれている。
このうち2018年11月に運転開始から40年となる東海第2は、年内にも運転期間の延長申請をしなければならないため規制委は審査を優先させている。
女川2号機は94回目の8月の審査会合で、基準地震動(最大想定の揺れ)が1000ガルで了承された。沸騰水型で基準地震動が決まったのは柏崎刈羽、東海第2に次ぎ3例目。ほぼ同時期に審査が始まった島根2号機などに先行している。
柏崎刈羽が合格した場合の影響について女川原発の菅原勲所長代理は「沸騰水型の合格に道が開かれ、女川も議論が進むと期待している」と話す。
ただ女川2号機の今後の審査はプラントの耐震強度などが焦点となり、行方は見通せない。東日本大震災で原子炉建屋の耐震壁に幅1ミリ未満のひびが1130カ所入り、最上階は地震への剛性(変形しにくさ)が最大70%低下したことが判明している。
東北電は建屋の耐力自体に影響はないと主張しているが、規制委側からは疑問視する発言もある。委員の一人は「被災プラントが想定地震動に耐えられるか不透明だ。議論は入り口で、評価する手法もまだ決まっていない」と明かす。
規制委との会合後、東北電の原田宏哉社長は「プラントなどの課題はあり、(審査が)終盤と言うのは時期尚早だ」と説明。安全対策工事の完了予定は18年度後半だが、再稼働の時期については「言える段階にない」と述べた。
東北電東通(青森県東通村)は敷地内断層の活動性評価で審査が遅れている。
[沸騰水型原発]原子炉内で発生させた水蒸気を発電用タービンに直接送る方式を採用している原発。熱効率が高く建設費も割安だが、蒸気に放射性物質が含まれるため管理の必要な範囲が広い。国内では東日本に多く、東京電力福島第1原発が事故を起こした。