「デブリ取り出し」課題に議論 札幌で原子力学会大会が開幕
福島民友 2017年09月14日
日本原子力学会の秋の大会が13日、札幌市で開幕した。初日の分科会では、東京電力福島第1原発から事故で溶け落ちた核燃料(デブリ)を取り出す課題についての議論が行われた。廃炉に向けた技術開発を進める国際廃炉研究開発機構(IRID)は、デブリ取り出し作業を通じて新たな放射性物質を放出させないような安全システムの構築の必要性を訴えた。大会は15日まで。
1~3号機のデブリ取り出しを巡っては、原子炉格納容器全てを水で満たさない「気中工法」の採用を決定。原子炉格納容器底部の横側からデブリを取り出す方針だ。
IRIDは、デブリ取り出しにどの手法を採用したとしても、住民や環境を放射性物質から守るための最低限の約束事が必要だとして〈1〉燃料を冷却する機能〈2〉気体や液体を問わず作業で放射性物質を外部に出さないようにする〈3〉火災や事故などで新たな放射性物質を生み出さない―などの観点から、安全を確保する仕組みづくりを訴えた。
具体的には、特殊な機具を使ったデブリの切除作業などで発生が見込まれるちり状の放射性物質を外部に出さないようにする空調管理システム、作業を通じてデブリが核分裂反応を起こす「臨界」を防ぐシステムづくりを目指す。IRIDは「デブリ取り出しのガイドラインは存在していない。実際の作業に入る前に安全を担保する仕組みを作るべきだ」と主張した。
分科会には東電や原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)も参加、廃炉に関する技術で関心も高く、会場では立ち見も出た。
燃料デブリはフッ素で安定処分 日立などが技術研究
福島民報 2017年9月14日
日立GEニュークリア・エナジーなどによる研究グループは、東京電力福島第一原発事故で溶けて構造物と混じり合ったとみられる核燃料(燃料デブリ)を取り出した後、フッ素と化学反応させて安定的に処分する技術開発に取り組んでいる。模擬デブリを使った実験では燃料に含まれていたウランやプルトニウムと、鉄などの廃棄物を分離させた処分が可能であると確認した。
札幌市の北海道大で13日に開幕した日本原子力学会秋の大会で報告した。研究では模擬デブリ5グラムを約600度の炉で熱し、フッ素を注入した。化学反応によりデブリ内のウランなどを気化させ、廃棄物と分離させた。グループによると分離後は、それぞれの物質の処分は容易だという。研究成果をまとめ技術採用に向けて提案する。
グループは燃料デブリが炉内構造物を巻き込み複雑な状態となっているとの予測を踏まえ、成分を変えた模擬デブリ14種を作成した。現時点で10種類の実験を終え、全てで安定的な処分ができたという。
グループは日立GE、三菱マテリアル、東北大で構成している。