原子力規制委は13日の定例会合で、柏崎刈羽原発6・7号機の再稼働に向けた審査を行い、東電の原発事業者としての適格性について、東電が8月末に提出した安全確保などに関する文書の内容を保安規定に明記することなどを条件に認めることで合意しました。
事実上の合格を意味する審査書案の取りまとめは、次回以降に持ち越しました。
保安規定はこれまでほとんど言及されたことはありませんが、原発の運転の際に実施すべき事項や、従業員の保安教育の実施方針など保安上必要な基本的な事項が記載されているもので、当然事業者は順守義務を負い、保安規定に違反した場合は規制委は原子炉の運転停止や設置許可を取り消すことが出来ます。
保安規定は事業者が規制委に申請して許可されるものなので、保安規定に文書内容を反映させることについて規制委は東電経営陣に同意させる必要があります。
必要で重要な規定であることには違いありませんが、この段階で保安規定が前面に登場したことに唐突の感は否めません。
保安規定に加えるにしても抽象的な文言を盛り込むのでは無意味です。明大の松浦正浩教授の「規制委が東電の適格性の有無を判断するのではなくて、適格性に関する情報をつまびらかにする責任がある」、そして「適格性を評価するのであれば抽象的な言葉で語られている要素を客観的に評価できるようにする必要がある」という指摘を十分に反映したものにすべきです。
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東電の原発運転の適格性 条件付きで容認 原子力規制委
NHK NEWS WEB 2017年9月13日
新潟県にある柏崎刈羽原子力発電所6号機と7号機の再稼働の前提となる審査で、原子力規制委員会は13日の会合で、東京電力が原発を運転する適格性については条件付きで認めました。事実上の合格を意味する審査書案の取りまとめは、次回以降の会合で行われます。
柏崎刈羽原発6号機と7号機の再稼働の前提となる審査で、原子力規制委員会は、福島第一原子力発電所の事故を起こした東京電力に原発を運転する適格性があるかについて議論してきました。
13日の会合では、東京電力が示した福島第一原発の廃炉に取り組む覚悟や、経済性よりも安全性を優先して原発を運転することなどを担保するため、事業者が順守すべき保安規定に盛り込み、所管する経済産業省も東京電力を監督・指導する意向を示せば、原発を運転する適格性については認めることが提案されました。
これに対し、委員から、保安規定に盛り込むことについて、東京電力から「直接、社長に確認すべきだ」といった意見が出され、今後、委員会として、経済産業省と東京電力の社長の意向を確認することを条件に、原発を運転する適格性については認めることを決めました。
事実上合格を意味する審査書案の取りまとめは、次回以降の会合で行われます。
田中委員長「ほかの事業者と同レベルで審査してはいけない」
原子力規制委員会の田中俊一委員長は、条件付きで認めた東京電力の適格性について、「ほかの事業者と同じレベルで審査をしてはいけないという思いで議論をしてきた」と述べました。
そのうえで、「東京電力の安全文化やマネジメントなどに疑義があり、完全に払拭(ふっしょく)されていないので、担保する方法として、保安規定で縛ることになった。保安規定には大きな効力があり、規制側として確認していく」などと述べ、事業者が順守すべき保安規定に、東京電力が取り組む内容を盛り込むことで、違反がないかチェックしていく考えを示しました。
審査の経緯と残された課題
原子力規制委員会は、原発事故を起こした東京電力に柏崎刈羽原発を運転する資格があるのかという“適格性”について、条件をつけて容認しました。規制委員会で電力事業者の適格性が議論されたのは初めてで、規制委員会には審査の内容を国民にわかりやすく説明することがが求められます。
実績・具体性はどこへ
柏崎刈羽原発の再稼働の前提となる審査で、規制委員会は技術的な課題だけではなく、原発事故を起こした事業者としての安全に対する姿勢を確認する必要があるとして、7月10日、東京電力の経営陣から直接、聞き取りを行うという異例の対応を取りました。
この中で、規制委員会は「福島第一原発の廃炉を主体的に取り組み、やりきる覚悟と実績を示すことができない事業者に原発を運転する資格はない」としたうえで、田中俊一委員長が、汚染水処理のあとに残る放射性物質を含んだ大量の水の処分や、放射性廃棄物の搬出など廃炉の課題について触れ、「東京電力の主体性がさっぱり見えない」と批判し、対応を文書で回答するよう求めました。
さらに、その2日後に開かれた会見で、田中委員長は「姿勢を見せるだけで信用しろというほど甘い話ではない」、「東京電力の覚悟と具体的な取り組みが全然見えない」と述べました。
これに対して東京電力は、先月25日に文書で回答し、廃炉に取り組む姿勢や覚悟などは示しましたが、具体的な方針はなく、30日の規制委員会と経営陣との面会でも具体的な説明はありませんでした。
ところが、田中委員長はこの場で、一転して、「安全に対する取り組みの姿勢を示すものとして受け止めたい」と東京電力の姿勢を評価し、これまでの姿勢を覆すような発言をしました。
課題も適格性を条件付容認
今月6日には、東京電力が原発を運転する“適格性”があるかについて規制委員会の委員全員で議論が行われ、委員の大半も東京電力の姿勢に理解を示しました。
しかし、伴信彦委員は「決意表明としては受け止めるが、それだけで『適格性あり』と判断してよいのかどうか、そこまでわれわれはお人よしでよいのか、不安を感じている」と指摘しました。
結局、13日の定例会では、福島第一原発の廃炉に取り組む覚悟や経済性よりも安全性を優先して原発を運転することを事業者が順守すべき保安規定に盛り込み、所管する経済産業省が東京電力を監督・指導することを条件に、原発を運転する“適格性”を認めることにしました。
わかりやすい説明を
ただ、今後、東京電力の取り組みをどのように評価するのか判断基準は示されておらず、規制委員会には、審査の内容を国民にもわかりやすく説明することが求められます。
専門家「適格性の客観評価を」
科学技術政策に詳しい明治大学公共政策大学院の松浦正浩教授は、原子力規制委員会が柏崎刈羽原発6号機と7号機の再稼働の前提となる審査の中で、東京電力が原発を運転する“適格性”を条件付きで認めたことについて、「規制委員会が、東京電力の適格性の有無を判断するのではなくて、審査の中で見えてきた適格性に関する情報をつまびらかにする責任があると思う」と述べました。
そのうえで、東京電力の“適格性”を評価するのであれば、「抽象的な言葉で語られている要素を客観的に評価できるようにする必要がある。原発を運転する人員の配置などの態勢や経営のガバナンスなどに落とし込んで評価すべきだ」と指摘しました。