福島原発の廃炉工程において、当面の課題である燃料プールから核燃料の取り出しの開始時期を1・2号機については前回決定よりも3年遅らせ、2023年度をめどとすることを決めました。3号機については、これまでどおり来年度中頃から取り出しを始めるとしています。
工程の見直しでは、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が構想しているデブリ取出しの気中工法について、その危険性が改めて指摘されました。
水中でデブリを取り出すのと気中で取り出すのでは、周囲への放射線の照射量(=危険性)は天と地ほども違うので、具体的方法の検討に当たっては、あらゆるケース(予期しない作業時の事故)について漏れなくしかも十分に検討しておくことが必要です。凍土遮水壁のような無様なことは絶対に避けなくてはなりません。
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福島第一原発 1・2号機の核燃料取り出し 3年遅れに
NHK NEWS WEB 2017年9月26日
福島第一原子力発電所の廃炉の工程表が2年ぶりに見直され、1号機と2号機の使用済み燃料プールから核燃料の取り出しを始める時期について、政府は、がれきの撤去や除染などを慎重に進めるとして、前回の工程表より3年遅らせ、2023年度をめどとすることを決めました。
福島第一原発の廃炉への道筋を示す工程表は、対策や調査の進展を踏まえ政府の会議で26日、2年ぶりに見直されました。この中で、議長を務める菅官房長官は「福島第一原発の安全で着実な廃炉は、福島の復興、再生の大前提だ。今後も困難な作業が発生することも想定されるが、しっかり進めていただきたい」と述べました。
新たな工程表では、1号機と2号機の使用済み燃料プールから核燃料の取り出しを始める時期について、がれきの撤去や除染などを慎重に進めるとして、前回の工程表より3年遅らせ、2023年度をめどとするとし、3号機については、これまでどおり来年度中頃から取り出しを始めるとしています。
一方、1号機から3号機の溶け落ちた核燃料が構造物と混じり合った「燃料デブリ」の取り出し方の方針については、格納容器を完全に水で満たさずに取り出す「気中工法」と呼ばれる方法を軸に進め、「燃料デブリ」を最初に取り出す号機や方法を確定する時期は、来年度上期から2019年度に遅らせますが、実際に始める時期は変えず、4年後の2021年としています。
気中工法は、放射性物質が飛散するおそれがあるため、安全対策の徹底を図ることが必要で、今後、追加の調査結果などを踏まえ、具体的な計画を立てられるかが課題になります。
一方、すべての廃炉作業を終える時期については、これまでと同じく廃炉作業を始めてから30年から40年後(2041~2051年)としています。
経済産業省は「廃炉作業を終える時期は燃料デブリの取り出しを4年後に始められる見通しがあることから、現時点では変更する必要はないと考えている」としています。
日本原子力学会の「廃炉検討委員会」の委員長で、法政大学の宮野廣客員教授は、「工程表では、これからの5年ほどは見えているが、そのあとがはっきりせずに30年から40年で終えるとなっている。せっかく見直すのなら、廃炉作業全体を通してもっとしっかり検討してほしかった」と話しています。
東電社長「責任持ち廃炉やり遂げる」
東京電力の小早川智明社長は、「地元の皆さまとの対話を重ね、地元の思いや安心、復興のステップに配慮しつつ、さまざまな課題を克服し、事故を起こした当事者として、責任をもって廃炉を安全にやり遂げてまいります」というコメントを出しました。
世耕経産相「安全確保を最優先 今後も長い道のり」
世耕経済産業大臣は閣議のあとの会見で、「安全確保を最優先に、リスク低減を重視する姿勢を堅持して、廃炉汚染水対策をしっかり進めていく。ここまで6年かかり今後も長い道のりがあると思うが、しっかり取り組んでいく」と述べました。
また、世耕大臣は1号機と2号機の使用済み燃料プールから核燃料の取り出しを始める時期を前回の工程表より3年遅らせたことについて、「1日も早い廃炉を期待している地元の皆さんにとっては決して喜ばしいことではないが、やはり安全を重視しながら着実に進めることが重要だ」と述べました。
専門家「自然災害リスクも考慮した具体的な設計を」
2年ぶりに見直された福島第一原子力発電所の廃炉の工程表について、日本原子力学会の「廃炉検討委員会」の委員長で、法政大学の宮野廣客員教授は「これまでの工程表もそうだが、今回の工程表でも直近の5年ほどは見えているがそのあとがはっきりせず、30年から40年で終えるとなっていて、全体の工程が見えない。廃炉を通じて必要な人材育成もしなければならず、せっかく見直すのであれば、廃炉作業全体を通してどの工程がどう続くのか、もっとしっかり検討して見通しを示してほしかった」と話していました。
また、燃料デブリの取り出しに向けて「気中工法」を軸に検討を進めるとしたことについて、「気中状態ということは、放射性物質が飛び出すおそれがあるということで、閉じ込めるための設備をどうするのかが非常に難しい問題になる」と指摘したうえで、実際にそうした設備を作るには、燃料デブリの取り出し中の事故を防ぐために、「台風や地震、津波のリスクをどう考えるかということまで評価し、具体的な設計を考えないといけない」と話し、気中工法を実現させるには検討すべき課題は多いと指摘しています。
廃炉への工程表は
東京電力福島第一原子力発電所の廃炉への道筋を示す工程表は、作業の期間を第1期から第3期までの3つに分けていて、現在は、燃料デブリの取り出しを始める前の第2期に当たります。
第1期は、福島第一原発1号機から4号機のいずれかの使用済み燃料プールから核燃料の取り出しを始めるまでとされていて、4号機で平成25年11月にその作業が始まったことをもって第1期は終了しています。
第2期は、第1期の終了から、溶け落ちた核燃料と構造物が混じった「燃料デブリ」の取り出しを1号機から3号機のいずれかで始めるまでとされ、4年後の2021年までに取り出しを始めるとしています。現在は、第2期に当たります。
第3期は、燃料デブリの取り出しや汚染した建屋の解体を終え、放射性廃棄物を敷地の外に運び出すなどすべての廃炉作業が終わるまでとなっていて、廃炉作業を始めてから30年から40年後までに終えるとしています。