2019年8月3日土曜日

03- 東電、連絡ミスで改善策提出 柏崎原発

東電、連絡ミスで改善策提出 柏崎原発 市長、月内に対応判断
新潟日報 2019/08/02
 新潟・山形地震後、東京電力が柏崎刈羽原発に「異常あり」と自治体などに誤って伝えた連絡ミスで、東電は1日、新潟県柏崎市と市議会にそれぞれ3項目の原因と改善策を提出した。原因究明と抜本的な改善策を求めていた桜井雅浩市長は「市民の意見もうかがう中で、受け入れるか否かを判断したい」と述べ、8月中に回答する考えを示した。
 
 東電は連絡ミスの原因を(1)誤認しやすい通報連絡用紙 (2)作業が重なった場合の対応が難しい宿直の当番体制 (3)宿直の当番者の力量不足-と総括した。
 連絡ミスは、使用済み核燃料をプールで冷却する電源に関する異常の有無を「電源の有無」と思い込み、誤って「有」の欄に丸を付けてファクスを送った。
 東電によると、記入した担当者は、急いで通報しなくてはならないという「時間的なプレッシャー」から誤ったとしている。
 
 改善策には、通報連絡用紙の書式の見直し、宿直の当番体制の強化、宿直当番に入る社員に対する継続的な訓練実施-を盛り込んだ。具体的には、用紙の書式は丸の記入を改め、原発の状況に関しては全般的に「正常」「異常」などの選択表記に変更。7月1日から、宿直の当番を従来の6人から8人に増員した。
 柏崎刈羽原発の設楽親所長は3項目に加え、柏崎市と刈羽村で実施する全戸訪問を全所員で行う考えを明らかにした。その上で「所員の地域目線を醸成したい。自分の仕事がどう評価され、情報を誤るとどうなるか。情報発信の重要性を認識して職務に当たる」と述べた
 
 桜井市長は、同原発6、7号機の再稼働の条件として策定を求めている1~5号機の廃炉計画に関連し、「まずは改善策を受け入れるかどうかだ。東電が廃炉計画を持ってくる段階ではない」と述べた。
 東電はまた、緊急時に組織として十分な対応が取れなかったことなどを理由に、設楽所長を7月30日付で厳重注意処分としたことも発表した。
 
◎「人増やして防げるか」
 新潟・山形地震後の連絡ミスを受け、東京電力がまとめた改善策は、7月1日から1カ月にわたる訓練を繰り返し、成果が上がったと判断して提出したものだ。だが東電は2007年の中越沖地震や、昨年の電気ケーブル火災でも通報連絡の不手際を繰り返してきた。改善策の実効性を問う住民の視線は依然厳しい。
 
 改善策の一つ、通報用紙の書式の見直しでは、今回の地震で誤記した使用済み核燃料プールを冷却する電源の状況について、異常がなければ記載は不要と改めた。「印を付ける場所を減らし、労力をかけないようにした」と原発広報部。ミスのリスクを軽減する工夫をした。
 
 外部への情報発信を担う当番体制を巡っては、通報用紙に記入する担当者が他の業務に追われ、別の担当者が代わりに記入したことがミスにつながった。確認もおろそかになっていたとして、用紙記入の専任担当者、最終確認する統括責任者の2人を増員した。
 東電によると、「当番者の力量不足」は、他の担当者の役割を理解せず、自分の役割以外のフォローができなかったことを指す。
 
 宿直者全員を対象に7月から実施した訓練では、通報連絡の訓練と力量評価を毎回行い、力量不足と評価された人は宿直から外す厳しい対応を取った。
 宿直に入る社員は計138人。1回の評価で合格できない人もいたが、7月末までに全員が「力量あり」と認定されたという。
 柏崎刈羽原発の設楽親所長は「事前に何を準備し、どう動けばいいかという意識が訓練でも見て取れる。成果は上がっている。自己満足で終わることのないようにしたい」と語った。
 
 東電は再発防止策の一環として、柏崎市、刈羽村の全戸訪問に全所員が参加することも発表した。ただ、昨年度の全戸訪問で実際に住民に会えたケースは全体の約6割。住民の声をどの程度吸い上げられるかは未知数だ。
 
 抜本的な改善策を求めてきた桜井雅浩市長は、全所員の戸別訪問を評価しつつも、東電の危機管理能力に対しては地震発生日を思い起こし、「(誤った)ファクスを見たときの衝撃は大きかった。疑念が100パーセント払拭(ふっしょく)された段階には至っていない」とする。
 
 柏崎刈羽原発に反対する住民も、改善策の実効性に懐疑的な見方を示す。
 市民団体「原発を再稼働させない柏崎刈羽の会」で事務局を務める女性(50)=柏崎市=は「今までも上の役職の人が宿直に入っていた。人数を増やしたからといってミスを防げるのだろうか」と疑問視する。
 柏崎刈羽原発反対地元3団体の男性(69)=刈羽村=は「02年のトラブル隠し発覚後、東電は企業風土を改善すると約束したが、形を変えてミスが繰り返されてきた。体質は変わらないだろう」と指摘した。