文春オンラインに「福島第一原発は津波が来る前に壊れていた」とする衝撃の記事が載りました。
福島原発のメルトダウンについては、これまで「津波で電源を喪失し、冷却機能を失ってメルトダウンが起こり、重大事故が発生した」という説明が流布されてきましたが、元東電社員が、東電に要求して得た未公開データ:「炉心流量(炉心内の水の流れ)」を解析した結果、事故原因は「津波」ではなく「地震」だったことを突き止めました。
「津波が原因」なら「津波対策を施せば、再稼働できる」ことになりますが、そうではないということになると、もう一度原発の規制基準を見直す必要があることになります。
これまで地震の直後(津波来襲の前)に、(竪型)冷却用海水ポンプが破損していたとか、タービン建屋内で配管ラインが破損し水が噴出していた等の情報はありましたが、炉心が異常になっていたという情報は初めてです。
ただ残念ながらこの記事はそのごく概要を述べたもので、詳細は「文藝春秋」9月号 の記事をお読みくださいということになっています。
追記)今問題になっている「トリチウム汚染水」が発生している原因は、1~3号機の原子炉格納容器の地下室部分が破損したことにあります。
これも津波が原因で地下室が破損することはあり得ないので、地震により破損したものです。
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「福島第一原発は津波が来る前に壊れていた」
元東電社員“炉心専門家”が決意の実名告発
文春オンライン 2019年8月13日
福島第一原発事故から8年。
大事故を受けて、一時は「稼働中の原発はゼロ」という状態にもなったが、新しい安全基準(「新規制基準」)が定められ、現在、国内で7基の原発が稼働中だ(玄海原発4号機、川内原発1・2号機、大飯原発4号機、高浜原発3・4号機、伊方原発3号機)。
2013年に定められた「新規制基準」について、電気事業連合会はこう説明している。
「東京電力(株)福島第一原子力発電所の事故では地震の後に襲来した津波の影響により、非常用ディーゼル発電機・配電盤・バッテリーなど重要な設備が被害を受け、非常用を含めたすべての電源が使用できなくなり、原子炉を冷却する機能を喪失しました。この結果、炉心溶融とそれに続く水素爆発による原子炉建屋の破損などにつながり、環境への重大な放射性物質の放出に至りました。こうした事故の検証を通じて得られた教訓が、新規制基準に反映されています」
元東電社員が突き止めた本当の事故原因
要するに、「津波で電源を喪失し、冷却機能を失ってメルトダウンが起こり、重大事故が発生した」ということだ。
この点に関して、津波の規模が「予見可能だったか、想定外だったか」という議論がなされてきた。しかし双方とも「津波が事故原因」という点では一致し、多くの国民もそう理解している。
ところが、「津波が原因」ではなかったのだ。
福島第一原発は、津波の襲来前に、地震動で壊れたのであって、事故原因は「津波」ではなく「地震」だった——“執念”とも言える莫大な労力を費やして、そのことを明らかにしたのは、元東電「炉心専門家」の木村俊雄氏(55)だ。
木村氏は、東電学園高校を卒業後、1983年に東電に入社、最初の配属先が福島第一原発だった。新潟原子力建設所、柏崎刈羽原発を経て、1989年から再び福島第一原発へ。2000年に退社するまで、燃料管理班として原子炉の設計・管理業務を担当してきた“炉心屋”である。
東電社内でも数少ない炉心のエキスパートだった木村氏は、東電に未公開だった「炉心流量(炉心内の水の流れ)」に関するデータの開示を求め、膨大な関連データや資料を読み込み、事故原因は「津波」ではなく「地震」だったことを突き止めた。
「津波が来る前から、福島第一原発は危機的状況に陥っていた」
「事故を受けて、『国会事故調』『政府事故調』『民間事故調』『東電事故調』と4つもの事故調査委員会が設置され、それぞれ報告書を出しましたが、いずれも『事故原因の究明』として不十分なものでした。メルトダウンのような事故を検証するには、『炉心の状態』を示すデータが不可欠となるのに、4つの事故調は、いずれもこうしたデータにもとづいた検証を行っていないのです。
ただ、それもそのはず。そもそも東電が調査委員会に、そうしたデータを開示していなかったからです。そこで私は東電にデータの開示を求めました。これを分析して、驚きました。実は『津波』が来る前からすでに、『地震動』により福島第一原発の原子炉は危機的状況に陥っていたことが分かったのです」
7基もの原発が稼働中の現在、このことは重大な意味をもつ。「津波が原因」なら、「津波対策を施せば、安全に再稼働できる」ことになるが、そうではないのだ。
木村俊雄氏が事故原因を徹底究明した「福島第一原発は津波の前に壊れた」の全文は、 「文藝春秋」9月号 に掲載されている。
(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2019年9月号)