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原発ADR、打ち切り急増 東電の和解拒否で昨年から
東京新聞 2019年8月12日
東京電力福島第一原発事故の賠償を求め住民が申し立てた裁判外紛争解決手続き(ADR)で、国の原子力損害賠償紛争解決センターの和解案を東電が拒否し、センターが手続きを打ち切るケースが二〇一八年から急増している。センターは、東電が和解に応じず膠着(こうちゃく)状態となり、解決の見込みがないまま手続きが長期化したことから、住民に訴訟も検討してもらうための対応だと説明している。
東電は賠償への姿勢を一四年に示した「三つの誓い」で「和解案を尊重する」と表明している。住民側の弁護団は誓いを実行していないとして東電を批判している。
センターによると、東電の和解案拒否による打ち切りは一四~一七年の四年間で計六十一件あったが、全て東電の社員や家族が賠償を求めた申し立てで、一般住民の申し立てはなかった。
しかし一八年は全四十九件のうち東電関係は九件で、大部分は住民からのものだった。この中には福島県浪江町(約一万五千人)や飯舘村(約三千人)、川俣町(約五百六十人)の住民が集団で申し立てたADRが少なくとも十八件あり、申立人は約一万九千人に上る。
各弁護団によると、継続中のADRでも東電が和解案を拒否している案件が複数あるという。
東電は拒否の理由として、和解案が国の指針を超える賠償を提示していることなどを挙げる。センターは、指針に明記されていない損害でも個別事情に応じて認められるとして受諾を勧告してきたが、東電は拒否を続けている。
センターを所管する文部科学省研究開発局は今年三月、「多数の被害者がいまだに苦しめられているという多くの声があることを自覚し、『三つの誓い』を順守し、被害者の方々に寄り添った賠償を進めるよう要請する」との文書を東電に出している。
<原発事故と賠償> 東京電力福島第一原発事故の被災者が賠償を請求する方法として、東電との直接交渉のほか、原子力損害賠償紛争解決センターへの裁判外紛争解決手続き(ADR)の申し立てや裁判がある。ADRの場合、弁護士らが務める仲介委員が中立的な立場から被災者と東電の意見を聞き、和解案を提示。双方が受け入れれば和解が成立する。訴訟と比べ手続きが簡単で費用もかからないが、和解案に強制力はない。申立件数は昨年末時点で約2万4000件、うち約1万8000件の和解が成立した。