2019年8月8日木曜日

美浜原発死傷事故 発生から15年 改めて振り返る

 関電美浜原発3号機で破れた配管から高温の蒸気が噴出し、作業員11人が死傷した事故から8月9日で15になります。福井新聞が改めて事故を振り返る記事を出しました。
 この事故は蒸気エロ―ジョンにより減肉(10ミリ⇒0.4ミリ)を起こした蒸気配管が破断したことで起こりました。これは水質による腐食ではなく、蒸気中に混じっている液滴が管壁を叩くことで起きるとされています。
 
 当該のラインは点検リストから漏れていたため一度も点検されず、03年に気付いたものの重大に扱われず、048月からの定検に先送りされたなかで、その定検の直前に起きましたの約1カ月前、定検中だった大飯原発1号機(福井県)で予想以上に配管の減肉が進んでいる箇所が見つかっていました。
 本来であれば水平展開して、他の原発でも同様個所について点検すべきであった筈ですが「1日動けば1億円のもうけが出る」として、原発を停止させることを大いに躊躇させる文化があったことも原因をなしていたと思われます。
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美浜原発死傷事故「まさか」が現実 未点検配管破裂、発生から15年
福井新聞 2019年8月7日
 関西電力美浜原発3号機(福井県美浜町)で破れた配管から高温の蒸気が噴出し、作業員11人が死傷した事故から8月9日で15年。運転中の原発で起きた国内最悪の事故は、配管が運転開始から28年間、一度も点検されなかったことが原因だった。美浜3号機は現在、40年超運転を目指し、安全対策工事を進めている。関電幹部は、事故の教訓を忘れず、安全最優先を貫いていく決意を示す。美浜町の経済界や住民からは、常に緊張感を持ち続けるよう求める声が上がる。
 
 事故は2004年8月9日午後3時20分ごろ発生。美浜3号機のタービン建屋で、タービンを回すための2次冷却水の配管が破裂して高温の蒸気が噴出、同14日から始まる定期検査の準備のため近くで作業していた下請け会社「木内計測」(大阪市)の作業員4人が死亡、7人が負傷した。負傷者の1人は同25日に入院先で死亡した。破れた配管は水流や腐食によって厚みが減る「減肉」を起こし、10ミリだった厚みは最も薄い所で0・4ミリまで減っていた
 
「美浜で蒸気漏れがあった。けが人が出ているらしい」。関西電力の元幹部の男性は県内の町役場にいた時、部下からの電話で事故を知り、けが人の情報に鳥肌が立ったという。
 この約1カ月前、定検中だった大飯原発1号機(福井県おおい町)で、予想以上に配管の減肉が進んでいる箇所が見つかっていた。「まさか大飯のようなもの(減肉)ではないやろう」と信じたかったが、「まさか」は現実となってしまった。
 
 原子力安全・保安院(当時)の報告書などによると、破裂箇所はメーカーの三菱重工が1990年に点検リストを作成した際、記載から漏れ、事故まで一度も点検されなかった。事故前年の2003年、三菱重工から点検リストを引き継いだ関電の子会社「日本アーム」(現日本ネットワークサポート)の担当者が気付き、点検対象として関電にメールで報告したが、重大に扱われず、点検は04年8月からの定検に先送りされた
 男性は、事故の背景に減肉現象に対する関電の「不誠実な対応」があったと指摘する。厚みが国の省令で定める基準を下回っていることが分かっても、都合の良い評価をして使い続けることがあったという。「自分で自分をごまかして次の定検で取り換える。それまで技術基準違反の状態で運転するということがいくつも出てきた」
 
 1日動けば1億円のもうけが出るとされるプラント。95年から始まった電力自由化の流れの中で、効率化を追求する経営環境も影響した。被害に遭った作業員は、定検による停止期間を短縮するため、準備として運転中のタービン建屋に入り、配管の真下で作業スペースを設置していた
 
 子会社の指摘を受けて調査し、破裂箇所の厚みが基準を満たしていない可能性があると分かったらどうだったか。「運転を止めた結果、大丈夫だったら『なんで止めたんや、あほ』となる。不確かな情報で止めるのは難しかったと思う。ただ準備作業はいくらなんでもさせなかった」と男性。
「立ち入りさえしなければ、少なくとも人は死ななかった。(放射性物質を含む)1次系に気が行きすぎて、2次系は緩かったというのが反省だ」と悔やんだ。