2017年4月24日月曜日

24- 再生エネ発電:「圧縮空気」で蓄電するシステム稼働、

 風力や太陽光を利用する再生可能エネルギー発電は、発電量の変動が避けられないので大規模な蓄電システムを必要とします。現状は大型のリチウムイオン電池システムなどを活用するのが一般的ですが、発電時の余力で大量の圧縮空気を作り、再生エネ発電量が低下したときに、圧縮空気を大気圧に開放する際の膨張空気流でタービンを回して発電するという新しい方式の実証試験が静岡県で始まりました。
 極めて単純な原理で、蓄電池のように希少金属や有害物質を使用せず、空気と水しか排出しないというクリーンさが注目されています(原記事にはシステムの説明図が載っています)
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自然エネルギー:電力を「圧縮空気」で蓄電するシステム稼働、
静岡県で再エネの出力変動対策に
陰山遼将 スマートジャパン 2017年04月21日 
 再生可能エネルギーで発電した電力を、圧縮空気として“蓄電”するという新しいシステムの実証が静岡県で始まった。NEDOプロジェクトとして早稲田大学、エネルギー総合工学研究所が実施するもので、再生可能エネルギーの新しい出力変動対策として期待がかかる。
 再生可能エネルギーの導入拡大に伴う出力変動対策として、大規模な蓄電システムを運用する技術開発が進んでいる。大型のリチウムイオン電池システムなどを活用するのが一般的だが、新しい技術として「圧縮空気」を活用した蓄電システムの実証運用が静岡県賀茂郡河津町で始まった。希少金属や有害物質を使用せず、空気と水しか排出しないというクリーンなシステムだ。
 
 実証に取り組むのは早稲田大学、エネルギー総合工学研究所だ。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)プロジェクトの一環として実施するもので、2017年4月20日から運用を開始した。実際の風力発電所と接続し、出力変動対策への効果や制御技術を検証する。
 
圧縮空気エネルギー貯蔵とは何か?
 圧縮空気を利用した蓄電システムとは、太陽光発や風力発電などの再生可能エネルギーで発電した電力を利用し、圧縮機(モーター)で空気を圧縮して高圧状態で貯蔵する仕組みだ。これが一般的な蓄電池における“充電”の役割を担う。
 一方、電力が必要になり“放電”を行う際には、貯蔵した圧縮空気で膨張機(発電機)を回転させて発電を行う。実証システムは圧縮の際に発生する熱も貯蔵できるようになっており、放電時に再利用することで充放電効率を向上させている。
 
 特別な機器を利用することなく、汎用機器の組み合わせで構築できるのも特徴の1つだ。今回構築した設備は、オイルフリー式スクリュータイプの圧縮機と膨張機を採用した。さらに希少金属や有害物質を使用せず、空気と水しか排出しないという点も特徴である。接続する再生可能エネルギー電源の出力に応じて、エネルギーの貯蔵量、つまりは圧縮空気を貯蔵するタンクの容量を自由に組み合わせられるというメリットもある。
 
 エネルギー総合工学研究所は2015年6月から、神戸製鋼所、早稲田大学スマート社会技術融合研究機構と共同で圧縮空気を利用する蓄電システムの開発に取り組んできた。今回実証に利用する設備は、エネルギー総合工学研究所が設備構築を行い、神戸製鋼所が機器の設計と製造を担当している。
 
風力発電の発電量予測技術を組み合わせる
 今回行う実証実験のポイントは、実際の風力発電所を接続して圧縮空気蓄電システムを最適に制御していく点だ。東京電力ホールディングスが運営する「東伊豆風力発電所」と接続を行う。2015年8月から稼働を開始した、11基の風車を備える発電出力18.37MW(メガワット)の風力発電所だ。
 
 圧縮空気蓄電システムの制御は、2つの方式を検証する。1つが風力発電の発電量予測情報に基づく変動緩和制御だ。これは電力系統に対する風力発電の出力変動の影響を緩和するために、蓄電システムの充放電を最適に制御していく技術である。
 もう1つが計画発電制御だ。2016年4月に開始した「計画値同時同量制度」では、発電事業者などは前日および1時間前に30分1コマを単位とする発電計画を作成する必要がある。計画発電制御ではこの事前に用意した発電計画と実際の発電量との差を極小化するために、蓄電システムの充放電を制御していく。これらの制御技術は、早稲田大学が開発を行った。
 天候によって出力が大きく変動する風力発電を、電力系統上で安定的に利用していくには蓄電システムの活用が欠かせない。今回の実証は2018年度まで行う予定で、その中で圧縮空気蓄電システムを利用した制御技術の確立を目指す方針だ。