2017年4月10日月曜日

原発避難者の葛藤を 修士論文に

 大学院国際協力研究科を昨年修了した中学教員の出口裕加里さん(25は、「社会の中の『差別の種』を見つけたい」との思いから、福島県や関東からの避難者7人に、1人当たり26時間かけて話を聴き、避難者が抱える問題を調べました。
 避難者たちは、親族や友達避難に伴う問題を真剣には受け止めてもらえない、関東からか福島からかでも避難者へのまなざしはまったく違う実体のないイメージだけがひとり歩きしている一時的に注目を集めてもすぐ忘れられてしまう、などと語りました。
 「避難するかしないか、避難継続か帰還か、どのような選択も尊重できる社会にしないといけない」とも・・・
 
 論文の一部が載った冊子も発行されています。
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原発避難者の葛藤を修士論文に 7人へ長時間取材  
神戸新聞NEXT 2017/4/9
 「親戚、友人にも言っていない」「でも私たちの存在を知ってほしい」-。東日本大震災の原発事故で避難を続ける人たちに関心を持った大学院生が、避難者らの声にじっくりと耳を傾け、修士論文にまとめた。社会が向き合おうとしてこなかった矛盾とひずみをあぶり出した力作。「避難者個人の問題ではない。『あなたはどう考え、どうするのか』が問われている」と痛感したという。(鈴木久仁子)
 
 神戸大大学院国際協力研究科を昨年修了した中学教員の出口裕加里さん(25)=奈良県天理市。研究テーマを模索していたころ「社会の中の『差別の種』を見つけたい」との思いから、避難者が抱える問題を意識するように。福島県や関東からの避難者7人に、1人当たり2時間から6時間かけて話を聴いた
 
 関東からの避難者の1人はこう話した。
 親族や友達には放射能や避難についての話を『一切しない』。なかなか真剣には受け止めてもらえず、分かり合えないもどかしさに苦しむこともある。
 黙っていれば、避難者とは分からない。出口さんは「どう思われるか考えると怖くて言えない、でも助けが必要なときもある、というジレンマや葛藤を避難者は抱えている。その結果、社会の中で避難者の存在そのものが認識されていない」。
 さらに、関東からか福島からか、避難先の支援状況、抱えている個別事情でも、避難者へのまなざしはまったく違う。そのうえで「一緒くたに『大変だね』のひと言で片付けられる。このことも、理解されていない苦しみを増幅させている。実体のないイメージだけがひとり歩きしている」と指摘する。
 
 別の避難者は言う。
 いじめや住宅問題など、単発でニュースは流れるが、一時的に注目を集めてもすぐ忘れられてしまう
 
 また、こんな声も。
 どこに行っても少数派だし、頑張っても結果出ないし、むなしさがある。
 「避難するかしないか、避難継続か帰還か、どのような選択も尊重できる社会にしないといけない」
 
 東日本大震災避難者の会が論文の一部が載った冊子を発行している。注文はメールで。500円以上の寄付を呼び掛けている。アドレスは Sandori2017@gmail.com