2017年4月29日土曜日

29- 原発からの請求書 読者発編(下)(東京新聞)

  3月に9回にわたり連載した東京新聞の「原発からの請求書」の記事に対して、約100件の疑問や意見が寄せられたということです。
 東京新聞が読者の疑問などをもとに追加調査した「読者発編」3回目で、賠償費用などが上乗せされる送電線の使用料「託送料金」の仕組みが解説されています。
 原記事には理解しやすい図解が載っています。URLをクリックすればジャンプします。
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<原発からの請求書 読者発編>(下)
   「託送料」監視なき値上げ
東京新聞 2017年4月28日
 連載では、福島第一原発事故の賠償費用などが送電線の使用料「託送料金」に上乗せされることに読者から批判が相次ぎました。送電線の使用料である託送料金を上げることは普通の商取引なら「特定の民間工場が失火で燃えてしまったので、全国の高速道路料金を引き上げて立て直す」というような話。消費者の目にも理不尽な話が強引に進められていると映っているようです。
 
 かつて電力会社は、発電も送電も小売りも地域独占で一体経営していました。関東の消費者は東京電力が発電した電気を東電から買うしかありませんでした。
 昨年四月の「電力自由化」で、発電、送電、小売りは別々のサービスに分けられ、家庭への小売りにさまざまな企業が参入できるようになりました。発電を手掛ける企業も増えています。私たちは太陽光や風力など自然エネルギーに強みを持つ発電会社の電気を、携帯通信会社が母体の小売会社を通して買うこともできるようになりました。
 しかし送電線だけは、何本も同じように整備するのは非効率的ですから、これまで通り大手電力会社が地域独占で運営しています。そして送電線の使用料が託送料と呼ばれる料金です。これを東電が自由に決められるなら、もうけを増やすため高く設定するかもしれません。みんなの公共の財産がそんなふうに使われてはいけないので、東電が算出した数字を、経済産業省がチェックします。こうして決まった料金は一キロワット時当たり八・五七円(消費税込みでは九・二六円)。私たちはどの小売会社と契約していても等しく負担しています。月二百六十キロワット時使う東電モデル世帯では電気料金約六千六百円のうち、託送料は二千四百円と全体の36%も占める計算です。
 
 今回、この料金が上がることになってしまったのです。二〇二〇年度から福島第一原発事故の被災者への賠償費用の一部、二・四兆円が転嫁されます。先のモデル世帯では月一八・二円の上乗せ。沖縄を除く全国で、です。送電線を通るすべての電力に影響するので、自然エネルギー主体の電力会社から買っている人も料金に上乗せされます。
 これはまるで全国の高速道路料金を一斉に引き上げて、ある工場の事故の後始末や再建の費用を工面するようなものです。道路は共通インフラなので、輸送される農産品、工業製品などにも広く上乗せされ、全国全ての消費者や企業が負担させられてしまいます。
 託送料は国会のチェックが必要な税金と異なり、経産省の認可だけで上げられるので、同省にとって都合のいい制度。同省が原発を推進する中、すでに核燃料サイクルや最終処分場建設などさまざまな原発費用が上乗せされています。今後も原発で追加費用が必要になれば、本来関係のない「道路料金」が値上げされる恐れがあります。 (吉田通夫)