福井県内で3基の原発の廃炉計画が認可されました。廃炉という新たなビジネスのチャンスが生まれましたが、地元の企業が「廃炉ビジネス」を成り立たせるには様々な課題があります。
国直轄の除染事業がそうであったように、廃炉事業においても、原発建設をいわば独占してきたゼネコンが元請になります。そうなると、そこから下請企業に仕事が下りてくる縦のラインは従来通りで、地元企業体は簡単には割り込めないということです。
福井新聞がそうした事情を報じました。
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原発廃炉工事、乗り越える課題多く 受注機会充実も地元参入には高い壁
福井新聞 2017年4月20日
福井県内3基の原発の廃炉計画が認可され、今後は工事の受注を目指す企業の動きが本格化する。新たなビジネス機会をつかもうと説明会は盛況だが、地元からは参入の壁が高いとの声も聞かれる。「廃炉ビジネス」を成り立たせるには、乗り越えるべき課題は多い。
■機会は充実
廃炉計画が認可された3基のうち関西電力美浜原発1、2号機(福井県美浜町)は加圧水型軽水炉、日本原電敦賀1号機(敦賀市)は沸騰水型軽水炉とタイプが違う。日本原子力研究開発機構の新型転換炉ふげん(同)、高速増殖原型炉もんじゅ(同)を含めると、廃炉ビジネス参入の機会は多い。
「どれか一つにでも先んじて関わることができれば、全国の廃炉に今後対応できる」というのが、企業側の魅力の一つだ。2016年7月、若狭湾エネルギー研究センターが開いた県内企業向け説明会は、嶺南を中心に227社が参加。会場が満杯となり別室を設けるほどの盛況だった。
関電や日本原電は県内企業との共同研究を実施。原子力機構も、敦賀市での廃炉企業群の育成に本腰を入れている。電力事業者側も着々とビジネス環境を整えている。
■割り込み期待薄
廃炉参入を目指す活発な動きがある一方で、課題を指摘する声も増えている。
3月に敦賀市内で開かれた美浜1、2号機の廃炉工事に関する元請け会社との情報交換会には県内54社が参加し、7月にも始まる系統除染工事への参画機会を探った。美浜町で原発の仕事に長年従事する国川清・わかさ東商工会副会長(67)はこの会合で「元請け、下請けなどのタテのラインが既にあり、割って入って仕事を取るのは難しい」と感じた。地元企業の廃炉への期待感はあまりないという。
敦賀商工会議所は15年6月、美浜1、2号機、敦賀1号機の廃炉工事の受注増を目指し「廃炉ビジネス推進委員会」を設置した。浜田肇委員長(76)は「放射線管理区域内の工事は参入障壁が高い。地元が入れるのは建屋解体などの外側」とし、電力事業者に対し管理区域外の発注を早めにするよう求めている。
解体で大量に出る金属やがれきの処理も課題だ。放射性廃棄物でも国の基準以下ならリサイクルは可能だが、同会議所はふげんの廃炉研究で、廃コンクリートを魚礁として利用する検討をしたものの、漁業者の了解を得られなかったという。浜田委員長は「原発由来だけに安全性の説明や一般の理解が必要」と語る。
■再稼働すれば…
再稼働が進めば、廃炉ビジネスの魅力が乏しくなるとの見方も。関電は廃炉の傍ら、年内に4基の再稼働を目指している。定期検査は約3カ月掛かるため、定検のサイクルが重ならなければ、仕事はほぼ常にある状態となる。
若狭湾エネ研の岩永幹夫専務理事は「(定検があれば)廃炉という未知の領域に飛び込む理由がなくなるかもしれない」とみる。廃炉は工期が長いため、定検より受注単価が低くなる可能性もある。
「いつ仕事が出てくるか分からない状態が業者にとって最大の障壁」と岩永専務理事が語るように、廃炉作業の工事発注見通しを事業者が早期に提示するとともに、業者が定検を含む受注計画を立てやすい環境整備が欠かせない。
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原子力規制委員会は19日の定例会合で、運転開始から40年が経過し、廃炉が決まっている関西電力美浜原発1、2号機、日本原電敦賀原発1号機など4原発5基の廃止措置計画を認可した。