「東芝の誤算 原発事業撤退」 連載の第3弾です。
記事の冒頭で、あの おもちゃの様に見えるサソリ型の原子炉内部監察用のロボットは、これまで何度も失敗を重ねていますが、それには国の補助金が何と億単位(数億円)が投じられていると報じています。原子力ムラの人たちにとってはごく当たり前のことなのでしょうが・・・
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【東芝の誤算 原発事業撤退】(下)
技術力にも疑問符…
政府に見放される東芝、とって代わる「野武士」日立の躍進
産経ビジネス 2017年4月14日
■廃炉期待もガバナンス欠如に不信感
溶け落ちた核燃料(デブリ)の堆積物をそろりそろりと乗り越えながら、東芝の「サソリ」が進む。2月16日早朝、東京電力福島第1原発2号機の原子炉格納容器内に初めて投入された自走式の探査ロボットだ。
搭載カメラから真っ暗な格納容器内の映像が届き、関係者が安心したのもつかの間。作業用レールを5メートルほど進んだところ動きが鈍くなり、やがて完全に止まった。堆積物が駆動部に入り込んだためとみられる。
同日午後、東電は回収も難しいと判断し、ケーブルを切断した。国の補助金を使い億円単位の開発費用を投じたサソリ。政府関係者は「今回は期待していたのに…」とため息を漏らした。
総額8兆円もの費用を見込む福島第1原発の廃炉作業は、請け負う東芝にすれば「確実にキャッシュが入る再建中の中核的なビジネス」(経済官庁幹部)だ。しかし、東芝が頼みにする高い原子力技術にいま、疑問符が付けられている。
■高まる不信感
福島第1原発で東芝の技術が最も活用されているのは、原子炉を冷やした水から放射性セシウムを除去する浄化装置だ。また、62種類の放射性物質を取り除く多核種除去設備(ALPS)も、当初は東芝製が使われていた。
だが、東芝製ALPSは性能が不十分と指摘され、途中から日立製作所の高性能ALPSが配備された。
東芝が原子炉を建設した中部電力浜岡原発1、2号機(静岡県)の廃炉作業も日立が受注したもようだ。
平成27年の不正会計に加え、今回は米原子力子会社ウェスチングハウス・エレクトリック(WH)の工事遅延で巨額の損失を出すなど、東芝のガバナンス(企業統治)欠如は明らかだ。大手電力関係者は「いま安心して仕事を任せられる相手ではない」と漏らす。
ただ、福島のデブリ取り出しは現状の技術水準では難しい。経済産業省幹部は東芝に大型のマジックハンドのような取り出し装置の製造を依頼したことを挙げ、「東芝が外れたら日本連合の力が落ちる。廃炉を進めるため早く戦線復帰してほしい」と期待する。
■再編の胎動
「ついに日立が東芝に取って代わるのか!」
エネルギー業界に衝撃が走った。東京電力が3月31日、過半数の議決権を握る政府の要請を受け、数土文夫会長の後任として日立製作所の川村隆名誉会長の就任を内定したからだ。
東芝の苦境は原発輸出を進める政府の後押しでWHを買収したことに始まる。歴代経営者が経済財政諮問会議の民間議員に名を連ねるなど政権との距離が近い東芝は、政府の“頼み事”を断りづらい立場だった。
度重なる経営危機で東芝の威信が地に落ち、政府の視線は距離があった日立に向いた。東電だけでなく、経団連の次期会長候補には中西宏明日立製作所会長の名前が挙がる。「公家の東芝、野武士の日立」と評された両社の立ち位置が入れ替わるのは時間の問題だ。
原発の再稼働が進まず、原子力技術や人材の維持は難しくなりつつある。政府は原発事業の再編に向け静かに策を練る。「核になるのは日立」(エネルギー業界関係者)だ。東芝の「歪(ゆが)み」は、国内原子力産業の基盤をも揺るがしている。(この企画は井田通人、宇野貴文、高木克聡、田辺裕晶、永田岳彦、古川有希、万福博之が担当しました)