2018年8月9日木曜日

09- プルトニウム削減は「フランス流」で 原子力委員長が会見

 産経新聞が原発のその都度の問題点を深堀りする「原発最前線」が、原子力委員会が7月31日に決定した「基本方針」を取り上げました。
「基本方針」は、核燃料サイクルは堅持し、プルサーマル発電に必要な量だけに限定して再処理を認可することで、プルトニウムの保有量が「現在の水準を超えることはない」ようにするというものです。この使うだけ再処理するというのは、フランスが現に行っている方式だということです。
 
 しかし現在の水準というのは核爆弾6000発分に相当するものなので、逆の言い方をすれば今後もそのレベルがずっと維持されるということです。
 そもそもこれまで漫然と対応した結果こんなに莫大な量が蓄積された訳で、大変なミステークで何らかの反省の言があってしかるべきです。その一方で、「再処理も頑張って欲しい」とするなど、一体保有量を減らそうという意志があるのか一向に釈然としません。
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【原発最前線】
プルトニウム削減は「フランス流」で 原子力委員長会見
産経新聞 2018年8月7日
 日本が国内外で保有するプルトニウム約47トンを今後削減する基本方針が7月31日、国の原子力委員会によって決定された。平成33年度上期に予定されている青森県六ケ所村の再処理工場(日本原燃)完成を前に、日本の余剰プルトニウムに対する海外の懸念を払拭することが主な狙いだ。決定後の岡芳明委員長の記者会見では、再処理量のコントロールとプルトニウムの抑制をフランスをモデルに行うなどとする考えが示された
 
5つの方針で削減
 日本の原子力利用は平和目的のみに限られ、「利用目的のないプルトニウムは持たない」が原則だ。使用済み燃料からプルトニウムを取り出して再利用する核燃料政策を続けているが、プルトニウムを使う高速増殖炉が原型炉「もんじゅ」(福井県)の廃炉決定によって挫折し、ウラン・プルトニウム混合酸化物(MOX)燃料を使うプルサーマル発電も、原発再稼働の遅れから現状では4基にとどまり、利用先は広がっていない。この状態で再処理工場が稼働すれば、プルトニウム保有量が増えることは確実な状況だった。
 
 31日に決定した基本方針では、(1)プルサーマル発電に必要な量だけ再処理を認可する(2)再処理から利用までの期間をできるだけ短くする(3)電力会社間の連携・協力をうながし、海外で保有しているプルトニウムの着実な削減に取り組む(4)研究開発用のプルトニウムで当面の使用方針が明確でない場合は、処分も検討する(5)再処理できない使用済み燃料のために貯蔵能力の拡大に取り組む-と5項目を掲げ、これによってプルトニウム保有量は「現在の水準を超えることはない」と強調している。
 
 さらに、電力会社と日本原子力研究開発機構はプルトニウムの利用計画を改めて策定し、毎年度公表することで透明性を高める。
 
「政策的な平和利用」強調
 決定後に岡委員長が行った会見での主な一問一答は次の通り。
 
 --日本のプルトニウム保有量に対して、海外はどう見ているか
「一般的に核不拡散の話をいろんな国とするときに、日本特有の事情、再処理をしていることに関して常に『なぜ(核兵器保有国以外では)日本だけ』と言われる。私どもとしては今回、規制による平和利用のほかに、政策的な平和利用が重要だということを(電力会社などに)認識してもらい、これに従ってプルトニウムを利用していくことが、世界の核不拡散に貢献すると考えている。日本だけがどんどんプルトニウムをためていくのではないかという懸念があると非常にまずい」
 
 --削減の時期や目標の数値設定をしなかった理由は
具体的なことをわれわれが申し上げるのは適切ではない。民間事業なので地元との関係もあるし、(再処理を委託した)海外との契約もある
 
 --プルトニウムの消費先は
「この10年はプルサーマル発電だと思う」
 
 --電力会社の協力の具体例として、再稼働していない会社のプルトニウムを既に再稼働した会社に供給、譲渡することは
「それも一つの有効なことだが、それ以外にも事業者には案があり得ると思う。すべてをこちらで『こうしなさい』としてしまっては、かえって制約が増えてしまってうまくないと思う」
 
 --プルトニウムの保有量を単純に減少させるなら、再処理工場は動かさずに海外分の削減に努めればいい。再処理工場の稼働にこだわる理由は
「再処理工場は既に作られているし、民間事業だ。国が『止めろ』と言えば国に賠償責任が発生するし、止めたら廃止措置も国の責任になる可能性がある。今は民間事業者(日本原燃)が動かそうとしているから、それをしっかりやっていただくのが先だと思う」
 
「フランスと同じ」
 --(使用済み燃料をすべて再処理する)全量再処理の政策は見直さないのか
「(全量再処理政策を掲げる)フランスでも、使う量だけ再処理する方針でやっており、それ以外の使用済み燃料は貯蔵している。フランスが既にやっていることと、日本がやろうとしていることは基本的に同じだ。使用済み燃料はプルトニウムを含む『資源』であり、全量再処理か、(再処理しない)直接処分かという二者択一は極端であって、現実には合わないと思う」
 
 --再処理工場の稼働を遅らせたり、再処理を止めたりする選択肢も想定しているのか
「仮定の質問なので答えられないが、再処理は頑張ってほしい、削減の方もしっかりやってほしい-がメッセージだ。再処理工場はしっかり動かしてもらわなければいけないが、どんどん動かしてプルトニウムがたまってしまうと、国際的な圧力がかかることになる。基本方針の趣旨をご理解いただいて、使う方も一緒にバランスよくみていただきたい」
 
■プルトニウム  
 原子番号94の元素で、原発の燃料や核兵器の材料に使われる。自然界にはほとんど存在せず、原子炉内で燃料に含まれるウラン238が中性子を吸収してできる。日本は原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、高速炉や通常の軽水炉で再利用する核燃料サイクル政策を掲げる。日本は約47トンを国内外で保有し、核兵器を持つ国以外では最大量。核拡散のリスクから、国際社会は厳格な管理を求めており、削減が急務となっている。