国内外に日本が所有するプルトニウムは47トンに及びます。電事連は保有量を減らすためには「16基から18 基」の原発でプルサーマルを行う必要があるとしていますが、そんなことのために危険な運転を行うのは本末転倒です。
国に核兵器所有の野心がないのであれば、先ずは核燃料の再処理は止め、プルトニウムの所有権を海外に引き渡すという対策に踏み込むべきでしょう。
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プルトニウム保有量「減少させる」と明記 原子力委員会
NHK NEWS WEB 2018年7月31日
国の原子力委員会は、日本が保有するプルトニウムの利用が進まないことを受けて、利用の基本的な考え方を15年ぶりに改定しました。使用済み核燃料を再処理して取り出すプルトニウムの量は原発で利用する量だけとし、保有量を「減少させる」と明記しました。
日本は、原発から出た使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムを利用する政策「核燃料サイクル」を進めていますが、プルトニウムは核兵器の原料にもなるため、「利用目的のないものは持たない」という原則を示しています。
しかし、プルトニウムの利用は進まず、保有量は国内外で47トンに上り、青森県六ヶ所村にある再処理工場が目標とする2021年度上期の完成のあとに運転すれば、最大で年間7トンのプルトニウムが取り出されることになるため、削減に対する国際的な関心が高まっています。
こうした状況を受けて原子力委員会は31日、プルトニウム利用の基本的な考え方を15年ぶりに改定しました。
現在、プルトニウムは原発のプルサーマル発電で利用して消費することになっていますが、基本的な考え方では、再処理工場では必要な量だけを取り出して確実に消費し、電力会社が協力して利用し、削減を図るとしています。
また、高速増殖炉「もんじゅ」など、原子力の研究開発で使われたプルトニウムについては、利用方針が明確ではない場合、「処分」の在り方も検討するとしています。
そして、原子力委員会は「プルトニウム保有量は減少させる」と明記し、国際社会に周知することにしています。
原子力委員会の岡芳明委員長は「核不拡散の点で、日本だけがプルトニウムをためていくのではないかという懸念があると非常にまずい。プルトニウムの利用を具体化することが重要だ」と話しています。
専門家「確実な削減には踏み込んだ取り組みを」
新たなプルトニウム利用の考え方について、元原子力委員会委員長代理でプルトニウム政策に詳しい、長崎大学核兵器廃絶研究センターの鈴木達治郎センター長は「保有量をこれ以上増やさず、減少させることにコミットしたことは評価できる」と述べる一方、「どのように消費するかは電力会社に任されたままで担保がなく、不確かさが残る。確実に削減していくには、国が電力会社からプルトニウムを買い取ったり、海外に所有権を引き渡すといった、踏み込んだ取り組みも必要だ」と話しています。
原発の稼働に影響は?
原子力委員会がまとめた、保有するプルトニウムの量を減らすという新たな考え方は、原発の運転にも影響を及ぼす可能性があります。
原子力委員会の「考え方」では、青森県六ヶ所村にある使用済み核燃料の再処理工場について、一般の原発で消費する「プルサーマル」に必要な量だけプルトニウムを取り出すとしていますが、現在、計画の4分の1程度にとどまっているプルサーマルが着実に広がらなければ、再処理が遅れるおそれがあります。
全国の原発には再処理工場に送られる予定の使用済み核燃料がおよそ1万5000トンあり、プルトニウムの消費が進まず再処理が遅れれば、原発にある燃料の貯蔵プールが満杯になって核燃料の交換ができなくなるなど、原発を稼働できなくなる可能性があります。
このため、原子力委員会の「考え方」では、「使用済み核燃料の貯蔵能力の拡大に向けた取り組みを着実に実施する」としています。
使用済み核燃料の貯蔵をめぐっては、東京電力などが青森県むつ市に新たな貯蔵施設を建設しているほか、四国電力が原発の敷地内に貯蔵施設を作ることを国に申請するなどの動きがありますが、各社の取り組みの状況はまちまちで、業界全体の課題になっています。
電力各社でプルトニウム融通?
プルトニウム利用の新たな考え方には、イギリスとフランスに保管されている日本のプルトニウム、合わせて36トンの着実な削減に取り組むことが盛り込まれています。
そのためには電力各社が連携や協力をし、プルトニウムを融通するなどして、原発で消費するプルサーマルを行うことが考えられるということです。
プルサーマルについては、電力各社で作る電気事業連合会が「16基から18基」の原発で行う目標を掲げていますが、福島第一原発の事故後、関西電力と九州電力、四国電力の3社が合わせて4基の原発で行ったのにとどまっています。
ほかの電力会社でもプルサーマルの実施を目指していますが、再稼働の前提となる国の審査が進まなかったり、地元の了解が得られていなかったりして、結局、プルトニウム利用の見通しはたっていません。
このため、原子力委員会では、プルサーマルを実施している電力会社にプルトニウムを融通し利用してもらうなどして、削減に取り組むことが必要だとしているのです。
これについて電気事業連合会の勝野哲会長は、今月20日の記者会見で「具体的な検討はしていない」と述べていましたが、基本的な考え方が改定されたことを受けて、電事連はプルトニウム利用の選択肢の1つとして、今後、検討していく考えを示しました。