2018年8月4日土曜日

三菱重工 トルコ原発事業費5兆円に(詳報)

 2日付で、トルコ共和国向けの原発プロジェクトの事業費の総額が1兆円程度から4兆円以上にふくらむ見通しだと紹介しましたが、具体的には5兆円レベルであることが分かりました。
 
 三菱重工側は両国政府による支援なしでは採算が合わないとして、国の支援を期待しています。
 毎日新聞の記事を「詳報版」として紹介します。
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三菱重工  トルコ原発事業費5兆円に 当初計画の2倍超
毎日新聞2018年8月2日
 三菱重工業は2日、トルコで進める新型原発建設計画を巡り、事業の実現性などを調べる事前調査の結果をトルコ政府に伝えたと明らかにした。安全対策費を含む総事業費は当初計画の2倍を超える5兆円規模に達する見通しとなった。費用高騰にトルコ政府は難色を示しており、今後の交渉は難航することが予想される。 
 
 三菱重工などが進めているのは、トルコ北部の黒海沿岸シノップの原発建設計画。三菱重工とフラマトム(旧社名アレバ)の共同出資会社「アトメア」が開発した中型の加圧水型軽水炉4基を建設し、2023年の稼働を目指している。日本、トルコ両政府が13年、アトメアによる受注で事実上合意。事業化した場合、三菱重工など参画企業が建設費を負担し、発電による利益で回収する計画だ。 
 
 今回の調査では、耐震対策費などの増加で当初21兆円程度と見積もられていた総事業費が5兆円規模に拡大。両国政府による支援なしでは採算が合わない可能性が高まった。三菱重工側は、こうした調査結果を日本政府に報告するとともに、7月末にトルコ政府に伝えた。関係者によると、トルコ政府は引き続き日本による建設推進を強く要望しているが、トルコ側の負担増には難色を示しているという。 
 
 安倍晋三政権はインフラ輸出をアベノミクスの柱として推進しており、計画は安倍首相、エルドアン大統領の主導で始まった経緯がある。三菱重工関係者からは「コストや事故リスクを考えると、民間企業として採算性が合わない案件で、政治決着にならざるを得ない」との声が漏れているが、多額の政府支援に両国国民の納得が得られるかは不透明だ。 
 
 事前調査は当初3月末を期限としていたが、見積もりを大幅に上回る公算となり、従来の期間を延長して実施していた。調査に加わっていた伊藤忠商事は4月、事業化のめどがたっていないことなどを踏まえ、計画から離脱する方針を表明している。【柳沢亮、横山三加子】 
 
キーワード・原発輸出 
 相手国に原子炉などの設備を輸出し、原発を建設すること。2国間で安全管理などを定める原子力協定を結び、国際原子力機関(IAEA)の厳格な査察を受ける。新興国や途上国での電力需要の増加に伴い、原発建設は世界で拡大傾向にあり、中国、ロシア、フランス、日本などが輸出国となっている。 
 事故などの際の賠償責任は原則、発電事業者が負うが、メーカーが過失責任を問われるリスクは残る。事業化に向けた事前調査は、建設予定地での地震などの影響を調べ、相手国に報告する。トルコの原発計画では、輸出交渉を有利にするため日本側が費用を負担している。 
 トルコは地震が多発するほか、紛争地域にも近く、テロなどの危険を指摘する声もある。 
 
 
トルコ原発、事業費5兆円規模に拡大 三菱重工、政府支援を期待
産経新聞 2018年8月3日
 三菱重工業は3日、トルコで参加する原発建設計画の事前調査報告を同国政府へ7月末に提出したことを明らかにした。安全対策の強化で総事業費は当初想定の約2兆円から5兆円規模に拡大したもよう。同社は日本、トルコ両政府と事業化の協議を進めるが、資金問題を解決するための政府支援が焦点となりそうだ。
 
 三菱重工の小口正範副社長は3日の平成30年4~6月期連結決算会見で、トルコでの原発事業について「バンカブルな(銀行融資を受けられる)状態で進めることが一つの前提」だと説明。国際協力銀行による融資など日本政府の支援に期待をにじませた。
 トルコへの原発輸出は2013年に両国政府が合意。しかし調査に参加した伊藤忠商事はコスト増などを理由に参加を見送った。
 三菱重工の4~6月期連結決算は前年同期に30億円の赤字だった最終損益が150億円の黒字に改善した。