2018年8月15日水曜日

いよいよ「デブリ」に接触へ 30年度下期から

 産経新聞の「原発最前線」が、30年下期以降の原子炉内部調査見通しの概要を紹介しました。
 1~3号機の原子炉・格納容器の状況はそれぞれ全く違うため、各号機ごとに整理し直すと下記のようになります。
 
1号機
 293自走式ロボットを投入したがデブリの確認はできていない。
 31年度上期に、長さ約1メートル、高さ約30センチの潜水機能付きボートを開発し、底部堆積物について超音波センサーで厚さを測定るとともに、堆積物のサンプリングも少量行う(量は数グラム以下)。
2号機
 301月にカメラ付きガイドパイプを使った調査を行い、格納容器の底部に落下した小石状の物体をデブリとほぼ断定した。
 今後先端にデブリをつまむ機構を付けガイドパイプを挿入し、デブリの硬さやもろさ、動くかどうかなどを確認する
3号機
 297月下旬、水中遊泳ロボット格納容器内でデブリの可能性が高い物体を初めて確認した
 現在、格納容器を満たしている水の水位を低下させる方策を検討中で、調査の具体的な見通しは示されていない。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
【原発最前線】
いよいよ「デブリ」に接触へ 30年度下期から原子炉調査新段階
産経新聞 2018年8月14日
 溶融核燃料(デブリ)を「見る」から、「つまむ」「動かす」「持ち帰る」へ-。東京電力福島第1原発の廃炉作業で最大の難関となるデブリの取り出しに向けて、これまでロボットによる撮影が主眼だった原子炉格納容器の内部調査が、平成30年度下期からデブリに直接触れる段階へと歩を進める。しかし、33年度に予定される取り出し開始に向けたハードルは非常に高い。(社会部編集委員 鵜野光博)
 
2号機で「つまむ」挑戦
「いよいよ本丸というか、遠くから写真を撮るだけでなく、デブリそのものに少しアタックすることを、これからやっていく」
 8月10日に開かれた福島第1原発の廃炉作業の安全性などを監視する原子力規制委員会の会合で、東電の廃炉・汚染水対策責任者を務める小野明氏はこう述べる一方、「十分検討しながら、(規制委と)相談しながら進めていきたい」と慎重な姿勢を強調した。
 
 これまでの調査では、3号機で29年7月下旬、水中遊泳ロボットが格納容器内でデブリの可能性が高い物体を初めて確認。つららのように垂れ下がる様子などを撮影した。30年1月には2号機でカメラ付きガイドパイプを使った調査を行い、格納容器の底部に落下した燃料集合体のハンドルの一部を確認。その周囲に広がっている小石状の物体をデブリとほぼ断定した。
 一方、1号機には29年3月、自走式ロボットを投入したが、厚い堆積物に阻まれ、デブリの確認はできていない。
 
 東電などの「次の一手」は、2号機に再びガイドパイプを挿入し、前回確認したデブリの硬さやもろさ、動くかどうかなどを確認することだ。「ガイドパイプの先端を改良し、1月はカメラだけだったのを、デブリをつまむ機構を付けてみたい」と東電。実施は30年度下期を予定している。
 
1号機で初サンプリング
 東電によると、この2号機での調査は「デブリをつまんではみるが、サンプリング(標本調査)は考えていない。しかし、機器に付着してきた微量の物はサンプルとして扱う」という。
 最初のサンプリングを予定しているのは、31年度上期の1号機調査だ。長さ約1メートル、高さ約30センチの潜水機能付きボートを開発し、前回、デブリの確認を阻んだ堆積物について超音波センサーで厚さを測定し、堆積物のサンプリングも少量行う。ただし、東電は「前回調査の結果から、堆積物の表層はウランやプルトニウムを多く含むものではないと考えている」としており、デブリの“本丸”のサンプリングとなる可能性は低い。
 
 続いて31年度下期に予定されているのが、再び2号機で行うアーム型装置による調査だ。現時点での設計では、30年1月のガイドパイプが全長約13メートルに対し、アーム型装置は伸縮機構を伸ばした状態で約22メートル。先端には複数の計測機器などを交換して取り付けることができ、カメラやレーザー光を用いた原子炉内の構造物、堆積物の分布調査に加えて、少量サンプリング用の工具を取り付けることで、堆積物を持ち帰ることを検討している。
 
 1月に確認されたハンドル周辺の小石の一部を持ち帰れば、デブリの本丸が初めて人間の手元にやってくることになる。ただ、サンプル量について東電は「今後1~2年は数グラム以下程度」としている。
 
3号機は水位低下を検討中
 サンプルは日本原子力研究開発機構の茨城県内の施設などに輸送し、分析。得られた情報をデブリ取り出し装置や、保管設備の設計などに生かす。ちなみに、3号機については現在、格納容器を満たしている水の水位を低下させる方策を検討中で、調査の具体的な見通しは示されていない。
 
 規制委の会合で福島県原子力安全対策課の高坂潔原子力総括専門員は「従来は画像調査で済んでいたが、今回はより多くの情報を集めるため、デブリにかなり近づく。これを機に、放射線の閉じ込め機能や、臨界の防止、冷却状態の維持、新たな放射性物質の拡散がないことなど十分に計画した上で具体化してもらいたい」と要望した。
 
 サンプリングは32年度以降、「数十~数百グラム程度まで取得量が増加する可能性がある」と東電。その後、本格的なデブリ取り出しが計画されているが、圧力容器の外に広範囲に溶け落ちたデブリを取り出した例は世界になく、非常に高い放射線量などから、取り出しの実現性そのものを疑問視する声もある
 
 デブリへの挑戦は、どのような道をたどるのか。最先端技術が持ち帰る“成果”を注目して待ちたい。
 東京電力福島第1原発のデブリ取り出し 国と東電が策定した廃炉の中長期ロードマップでは、平成31年度にデブリを取り出す最初の号機の選定と工法の決定を行い、33年度内の取り出し開始を目標としている。取り出しには圧力容器から溶け落ちたデブリが格納容器内にどのように分布しているかの把握が必要で、1~3号機それぞれでロボットなどを使った調査が行われている。廃炉終了は事故から30~40年をめどとしている。