2018年8月22日水曜日

東海第二30キロ圏 避難時要支援者は6万人 避難の実効性はゼロ

 東京新聞が、東海第二原発30キロ圏内の市町村避難計画について取り上げました。
 30キロ圏に96万人(全国で最多)が居住し、うち要支援者は6万人もいます。
 ある自治会では住民1900人中に要支援者が約30人いますが、そのうちの20人には避難時の介護者がいないため、最悪の場合、リヤカーで1人について1時間掛けて一時集合場所に移動させることにすると、全部で20時間が掛かります。
 それを具体的にどうするのかが先ず大問題ですが、一時集合場所から30キロ圏外に移動させるには、計算上2900台のバスが必要になります。実際にはバスは何往復かするので台数はもっと少なくなる可能性はありますが、現実に運転手付きで必要台数のバスが準備できるのかは全く未知数です。具体的にバス会社と交渉した結果では、被ばくする惧れがあるところに運転手を派遣することはできないと断られるのが普通です。
 
 避難計画では、「バス何台・何往復で、何時間で避難が終了」と机上で計画し完了になるわけですが、実際にそれに従事するバスと運転手が手配できるかどうかの確認はしていない筈です。
 そこまで踏み込んだ避難計画でなければ実効性は殆どゼロに等しいので、原発の再稼働は許されません。
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東海第二30キロ圏 避難時、要支援6万人
自治会「リヤカー移動」も
東京新聞 2018年8月21日
 日本原子力発電東海第二原発(茨城県東海村)から三十キロ圏内の市町村が、重大事故を想定した避難計画の策定を進めているが、自力で逃げられない高齢者や障害者ら約六万人に及ぶ「要支援者」の移動手段が確保できていない。ストレッチャーなどを載せられる福祉車両を準備できるめどは立たず、自治体が指定する一時集合場所まで自宅から連れて行くことが難しい。さらに、集合場所から避難所へ移動するバスを調達する県の計画も白紙状態だ。(山下葉月)
 
 原発から西へ約十五キロの那珂市の上宿第一自治会。後藤只男会長(71)は、もともと地震などの災害用に購入したリヤカーを前につぶやいた。「原発事故でも使えるのではないかと。リヤカーに人を乗せるのは申し訳ないが、使えるものを使うしかない。本来なら、福祉車両が迎えに来てくれればよいが」
 自治会地区には約千九百人が住む。自治会が把握しているだけで要支援者は約三十人おり、うち約二十人は身近に手助けする人がいない。後藤さんの想定では、リヤカー一台で要支援者宅と集合場所の一キロ前後を往復すると、一人につき一時間、全員で二十時間かかる計算だ。
 
 那珂市は来年三月を目標に避難計画を策定予定だが市に福祉車両はなく、要支援者の避難方法は固まっていない。市の担当者は「自治会や近所の人も市が守るべき対象。被ばくの危険性を考えると自治会に頼っていいのか…」と悩む。
 三十キロ圏に全国の原発で最多の九十六万人が住み、うち要支援者は六万人ほど。避難指示が出る深刻な事故の場合、支援者も要支援者も被ばくする恐れがあるが、各市町村とも有効な要支援者の避難対策を打ち出せていないのが実情だ。
 また、各地の一時集合場所にたどりついても、そこから三十キロ圏外に脱出するバスの確保ができていない。県は必要なバスを二千九百十八台と試算するが、県バス協会に登録された二千九百九十七台のうち約四割は路線バスで、基本的に避難には使えないという。
 県の試算も、市町村で唯一試算を出している東海村の想定台数を準用しただけで、要支援者の割合が多い市町があれば、さらに膨らむ可能性がある。
 
 県は七月二十五日に県バス協会と事故時の協定を結ぶと事前に発表していたが、前日になってキャンセルした。ドライバーに被ばくの可能性を説明していなかったことなどが理由だ。
 本紙が七月、避難計画の策定時期を聞いたところ、三十キロ圏の十四自治体のうち、八自治体が「来年三月までの策定を目指す」、三自治体が「未定」とした。三自治体は策定済みだが、要支援者の具体的な移動手段を盛り込んでおらず、改善が必要としている。