2018年8月4日土曜日

プルトニウム 削減の具体策 いまも見えない

 山陽新聞が3日、国の原子力委員会が、日本が保有する47トンのプルトニウム削減する方針を出したもののその具体策が見えない、とする社説を出しました。
 プルサーマル運転をしている現状4基の原発で消費できるプルトニウムは年間2トンほどで、その基数を増やすのは論外です。
 一方、六ケ所村の再処理工場が稼働すればそこからは年間最大7~8トンのプルトニウムが取り出されるということなので、何はともあれこの点からも再処理工場は稼働させるべきではありません。
 また、核燃料再処理の中心的役割を担うはずだった高速増殖原型炉「もんじゅ」が廃炉になったことも、計画を挫折させたという言い方も間違いで、もしも高速増殖炉が稼働すれば莫大な量のプルトニウムが発生するので収拾がつかないことになります。
 核燃料リサイクル構想には、採算上大赤字が明らかだった上に当初からそうした論理的矛盾・うさん臭さがありました。それが全く解決されないままで「もんじゅ」が廃炉になったのは不幸中の幸いでした。
 
 いずれにしても現状でもプルトニウムの削減の具体的方針は不明で、協定違反でプルトニウムを没収されることを期待してるのかとさえ思わされます。それは確かに有効な方法ではあるのですが・・・。
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(社説)プルトニウム 削減の具体策が見えない
山陽新聞 2018年8月3日
 国の原子力委員会が、日本が保有するプルトニウムの削減に向けた新たな指針を決定した。保有量が現行の水準を超えないように管理し、3年後に完成する予定の使用済み核燃料再処理工場(青森県六ケ所村)で製造するプルトニウムも通常の原発で使う量に限定することなどが柱だ。
 指針の見直しは15年ぶりとなる。先月閣議決定されたエネルギー基本計画では、プルトニウムの削減に取り組むことが明記されていた。背景にあるのは、核兵器6千発分に相当する約47トンのプルトニウムを国内や再処理を委託した英国などで保有する日本に対し、核拡散のリスクという観点から国際社会の懸念が広がっている現状である。
 
 日本にプルトニウムの再処理を認めた日米原子力協定は先月、30年の期限を終えて自動延長され、今後は米国側の通告で一方的に終了できるようになった。米国は日本のプルトニウム管理に関して、一層の説明責任を果たすよう求めている。米国をはじめとする国際社会に対し、削減に取り組む姿勢を明確にすることが求められていた。
 問題は、その実現に向けた道筋が見えないことだ。指針は保有量の具体的上限や削減目標を示しておらず、中途半端な印象は拭えない。
 
 プルトニウムの消費は、プルトニウムをウランとの混合酸化物(MOX)燃料にして通常の原発で燃やすプルサーマル発電が頼りだ。しかし、原子力規制委員会の審査に合格し再稼働できたのは4基のみで、年間消費量は約2トンにとどまっている。福島の原発事故前には、16~18基の稼働を目標に掲げていたが、現状は遠く及ばず、消費を進めるめどは立たないままだ。
 
 削減の手法も電力会社に委ねる格好となる。指針では、再稼働が遅れている電力会社から他社へ融通する方法を念頭に、電力業界の連携を促しながらプルトニウムの保有量を減らすとしている。
 これに対し、電気事業連合会は「正式な要請はない」と冷ややかだ。プルサーマル導入に立地自治体の同意は欠かせないが、プルトニウムの危険性に対する反発もあり、他社から融通された燃料が容易に認められぬ事情もあろう。削減の実効性に疑問符がつく内容と言わざるを得ない。
 
 日本は、原発の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、再利用する核燃料サイクル政策を掲げてきた。その中心的役割を担うはずだった高速増殖原型炉・もんじゅ(福井県)は相次ぐトラブルで廃炉に追い込まれた。MOX燃料を使うプルサーマルも停滞し、政策の行き詰まりは明らかである。
 プルトニウムの削減に本気で取り組むのであれば、年間最大8トンのプルトニウムを生み出すことになる六ケ所村の再処理工場についても根本から見直しが必要だろう。政策の破綻を直視し、転換に向けた議論を急ぐべきだ。