14日で浜岡原発の全面停止から丸三年を迎えましたが、この間、中部電管内での電力供給は極めて順調でした。
「原発がなければ電力不足が生じる」という電力業界の主張はもう通用しません。
中部電の過去3年の夏の予備率を見ると、2011年は11・9%、12年は56万キロワットを他電力会社へ融通した上で7・3%、13年は125五万キロワットを融通した上で3・8%で、いずれも安定供給の目安の3%を上回っています。
浜岡原発がなくても電力には十分に余裕があります。
中部電力は、液化天然ガス(LNG)などの輸入燃料費が増大しているので、浜岡原発の再稼働を織り込まなければ電力費が上がるとして、「原子力は必要不可欠」と主張します。
しかし燃料費がかさむのは、「総括原価方式」で燃料代が高いほど利益が上がるといういびつな構造下で、購入費抑制のインセンティブが生じない中で、日本のLNG購入単価が世界一、それもダントツに高くなっているという事実に、アベノミクスによる円安が加わった結果であって説得力はありません。
それにしても、南海トラフ巨大地震の震源域の真上に設置されていて極めて危険な浜岡原発が、いまだに再稼動に向けて動いていることは不思議なことです。
浜岡原発10キロ圏内の牧之原市の西原茂樹市長は、浜岡原発の永久停止を求めているし、30キロ圏の「緊急防護措置区域」(UPZ)にある7市町も、再稼働に否定的や慎重な姿勢をとっているにもかかわらずに、です。
中部電力は、浜岡原発の再稼働を前提にいま高さ22メートルの防潮堤の建設をすすめていますが、直下型巨大地震(揺れ)に対する対策は可能だという考え方なのでしょうか。
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浜岡停止3年 今夏も余力 中部電 再稼働方針変えず
東京新聞 2014年5月14日
中部電力浜岡原発(静岡県御前崎市)は十四日、全面停止から丸三年を迎えた。この間、中部電管内で電力供給に目立った支障はなく、今夏も供給力には余裕がある見通しだ。「原発がなければ電力不足が生じる」という電力業界の主張は崩れつつあるが、中部電は代替の火力発電コストの増加などを理由に、同社唯一の原発・浜岡の再稼働を目指している。
中部電によると、今夏も前年並みの猛暑の場合、電力供給の余力を示す予備率は3・5%となり、安定供給の最低限の目安とされる3%は上回る。ただし、これは電力不足の関西電力や九州電力に「応援融通」で送る百七十四万キロワットを含めた数字。原発二基分にほぼ相当する応援融通分を除けば、予備率は10%に上る。
中部電の過去三年の夏の予備率を見ると、二〇一一年は11・9%、一二年は五十六万キロワットを他電力会社へ融通した上で7・3%、一三年は百二十五万キロワットを融通して3・8%だった。いずれも安定供給の目安を上回っており、浜岡がなくても電力には余裕があることを示している。
中部電は二月、再稼働を前提に、浜岡4号機の安全審査を原子力規制委員会に申請した。高さ二十二メートルの防潮堤建設などの津波対策に加え、フィルター付きベント設置など過酷事故に備えた工事を一五年九月末までに完了する方針。
総工事費は三千億円。既に五月の電気料金を引き上げた料金改定で、浜岡4号機を一六年一月から、3号機を一七年一月から動かすことを織り込んだ。
中部電によると、浜岡停止で火力への依存度は九割に達し、液化天然ガス(LNG)などの輸入燃料費が増大。浜岡の再稼働を織り込まなければ、燃料費がかさみ値上げ幅は拡大していたと試算した。水野明久社長は「原子力は必要不可欠」との考えを繰り返している。
全面停止から3年 浜岡再稼働へ高い壁
中日新聞 2014年5月14日
中部電力浜岡原発(御前崎市)が全面停止して十四日で三年を迎えた。ことし二月に中電は4号機の安全審査を国に申請、安倍政権が将来にわたり原発を活用する姿勢を明確にする中、再稼働を目指す動きを強めている。ただ、海抜二十二メートルの防潮堤建設など防災対策が完了するのは二〇一五年九月末の見込み。周辺自治体には安全面の不安から再稼働に慎重論が根強く、複数の首長が永久停止や廃炉を求めるなど、再稼働へのハードルは高い。
浜岡原発は、東京電力福島第一原発の事故を受け、東海地震の震源域にある危険性を重視した菅直人首相(当時)の要請で全面停止した。脱原発を掲げる民主党政権下でほかの国内原発も定期点検後の運転再開ができなくなり、「原発ゼロ」への端緒となった。
しかし、自民党政権に代わり、昨年七月には原子力規制委員会の新規制基準が施行。国民に「脱原発」を求める声が多い中、安倍政権はことし四月、原発を重要な基幹電源の一つと位置づけ、原発再稼働を進める方針を明記したエネルギー基本計画を閣議決定した。
中電は、一一年九月に防潮堤の工事を始めたが、新規制基準への対応で、当初計画より四メートルかさ上げ。重大事故の際に放射性物質を減らして原子炉外に排気する「フィルター付きベント」の設置など追加の安全対策も必要になり、完了時期は当初予定からずれ込んでいる。
安全対策の完了前に審査申請に踏み切った中電だが、福島第一原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)の浜岡4号機に対する審査は厳しいとされる。さらに、これまでに安全審査の申請をした十原発十七基の中で、審査が終わった原発はなく、どのぐらい時間がかかるのか先は見えない。
一方、浜岡原発の十キロ圏内で中電と安全協定を結ぶ四市のうち牧之原市の西原茂樹市長は、浜岡原発が南海トラフ巨大地震の震源域に位置し、安全面への懸念があることを理由に、永久停止を求めている。
四市に加え、原発の重大事故に備えて防災対策を進める半径三十一キロ圏の「緊急防護措置区域」(UPZ)にある七市町も、再稼働に否定的や慎重な姿勢。七市町は中電と安全協定の締結へ向けた協議も始めている。立ち入り調査権や再稼働に関する事前同意など四市と同等の協定を求める自治体もあり、中電にとっては安全審査が終了しても、地元同意を得られるかどうかの課題は大きい。
◆【解説】安全確保策 課題多い
浜岡原発の全面停止は、当時の民主党政権が国内の原発の中で、巨大地震の震源域に立地することの危険性を重く見たからだ。安全を最優先に望む静岡県や周辺自治体には不安が根強い。一方、安倍政権のエネルギー政策や、中電による国への安全審査申請からは、再稼働を急ぐ姿勢がにじむ。県市町と国・中電の認識のずれは大きく、両者の溝が埋まらない限り再稼働は難しい。
安倍政権は、原子力規制委員会の新規制基準に基づく安全審査をクリアした原発がないにもかかわらず、四月に原発を重要な電源と位置付けるエネルギー基本計画を決定。まず原発ありきの方針だ。
中電は、浜岡原発が震源域にあることから、他原発より厳格な安全対策を講じてきた経緯がある。だが二月、津波などに備えた防災対策の完了を待たずに、4号機の安全審査を申請した。中電は「安全審査と再稼働は別」と説明するが、規制委幹部から「審査基準は他の原発と同じ」と、国の判断で真っ先に停止したことで特別扱いしないとの確約を引き出し、再稼働へ進んでいる。
一方、静岡県は浜岡原発周辺十一市町の全住民九十六万人を対象にした広域避難計画を策定中。十一市町のうち、中電との安全協定のない七市町は、ことし三月に協定締結の協議を中電に申し入れたばかりだ。
津波対策をはじめ安全確保への課題はなお多い。中電も十分理解しているはずだが、再稼働を急ぐだけでは、地元の信頼を得ることはできない。(宿谷紀子)