浜岡原発の31キロ圏にかかる11市町には96万人が居住しており、静岡県はその全員を退避させるため避難者の受入を12の都県に要請していますが、交渉は難航しています。このため内閣府は月内にも12都県に通知を出して、受け入れを促すことにしています。しかしとてもそれで解決するとは思えずに、茨城県の東海第二原発(避難人口98万人)同様に避難計画自体も「めど」が立ちそうにありません。
原発事故発生時の自治体の避難計画をテーマにしたシンポジウムが24日、脱原発を目指す滋賀、京都、愛媛の3府県の市長や研究者が参加して、京都市で開かれました。
そこでは、「地震や津波と原発事故が同時に起きる複合災害のときにどうなるかは、市の計画に入っていない。避難の時に大混乱を起こす可能性がある」と、複合災害に対応する難しさを指摘する声が相次いだということです。
地震・津波と原発事故が重なる確率こそがダントツに高いのですから、それを想定しない避難計画では意味がありません。
先の大飯原発運転差し止めの福井地裁の判決では、250キロ圏を避難区域=被曝区域とするのは、チェルノブイリの実績からみても合理性があるという見方が示されました。現実に福島原発でも、原発から16キロの地点よりも250キロ離れた東京の一部の方が放射線量が高いという報道もあります。
アメリカでは80キロ圏内を避難区域としています。
それに比べて日本の31キロ圏内というのはあまりにも過小です。これはそれ以上に設定すると対象人口が増えてとても避難が出来なくなるからという、ご都合主義的理由から決めたものなのでしょう。そしてそれでも避難計画が立てられずに四苦八苦しているわけです。
まず実効性のある避難計画が立てられるということは勿論絶対条件ですが、原発から放射能が飛散されれば簡単には戻れなくなるわけなので、計画が出来れば再稼動しても良いということではありません。
大飯原発についての福井地裁判決を、浜岡原発の運転差し止めや廃炉を求める訴訟の原告らは、「原発の危険性を認めた画期的な判決だ」「浜岡訴訟の大きな追い風になる」と歓迎しています。
浜岡原発は東海地震の震源域の真上にある危険な原発なので、直下型地震に見舞われれば瞬時に原子炉が破損する危険もあります。
その点からも浜岡原発は廃炉しかありません。
地震国・火山国の日本に原発を作ったのがそもそもの間違いであることが、ますます明らかになってきています。
浜岡原発関連の4つの記事を紹介します。
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浜岡原発の避難先、国が仲介 12都県に受け入れ促す
朝日新聞 2014年5月25日
南海トラフ巨大地震の想定震源域に立つ静岡県の中部電力浜岡原子力発電所で重大事故が起きると、交通の大動脈が分断され、多くの人が避難を迫られる。静岡県は原発周辺の96万人の避難者を12都県に受け入れてもらう方針をたてたが、受け入れ先との交渉が難航したため、内閣府は月内にも12都県に通知を出して受け入れを促す。ただ、通知は受け入れ可能人数を示すよう求めるにすぎず、自治体だけでは解決できない多くの課題がなお残されている。
国が公表した放射性物質の拡散予測に基づき、静岡県は避難計画の策定が必要な地域を原発から半径31キロ圏と定める。31キロ圏にかかる11市町の人口は96万人。圏内には86万人が住む。放射性物質が敷地外に放出されるような原発事故と、南海トラフ地震や津波との複合災害が起きた場合、96万人全員を県外に避難させる。原発事故だけなら県内や隣県などに避難させる方針で、両方合わせて受け入れ要請先は12都県に上る。
茨城県の日本原子力発電東海第二原発の対象人口は最大98万人だが、避難計画のめどがたっておらず、静岡県の計画ができれば全国最大規模になる。
原発の複合災害への対応は困難 避難計画でシンポ
東京新聞 2014年5月24日
原発事故発生時の自治体の避難計画をテーマにしたシンポジウムが24日、京都市下京区で開かれた。脱原発を目指す滋賀、京都、愛媛の3府県の市長や研究者が参加し、「地震や津波と原発事故が同時に起きた場合、車が流され避難の手段がなくなる」などと、複合災害に対応する難しさを指摘する声が相次いだ。
シンポは「脱原発をめざす首長会議」などの共催。四国電力伊方原発の30キロ圏内にある愛媛県西予市の三好幹二市長は、南海トラフ大地震と原発事故が同時に起こる可能性に触れ、「複合災害のときにどうなるかは、市の計画に入っていない。避難の時に大混乱を起こす可能性がある」と訴えた。 (共同)
大飯原発判決 浜岡訴訟に追い風
中日新聞 2014年5月22日
◆原告や周辺首長ら歓迎
福井地裁が大飯原発3、4号機の運転停止を命じたことを受け、中部電力浜岡原発(御前崎市)の運転差し止めや廃炉を求める訴訟の原告らは「原発の危険性を認めた画期的な判決だ」「浜岡訴訟の大きな追い風になる」と歓迎した。周辺自治体の首長からも浜岡再稼働に否定的な声が聞かれた。
三件ある浜岡訴訟のうち、東京高裁の控訴審で原告弁護団長を務める河合弘之弁護士は「原発の潜在的な危険性に踏み込み、再稼働は認めないと断じた。日本の原発訴訟の中で極めて重要な判決だ」と評価する。原発訴訟に関わって約二十年。福島の事故後は脱原発弁護団全国連絡会代表に就き、福井地裁の法廷でも弁護団の一人として判決を聞いた。
二〇〇七年の静岡地裁判決は「複数の同時故障を想定する必要はない」と原告の訴えを退けた。だが、福島の事故では非常用の発電機二台が同時に故障し、メルトダウン(炉心溶融)に陥った。
河合弁護士は「司法は原発を追認してきたが、今回の判決は事故の教訓を生かして存在そのものが危険だと認めた。想定外の地震の可能性など原発全般に当てはまる内容で運転すべきでないと判断した。より重要で画期的だ」と話す。
原告代表の鈴木卓馬さん(74)=藤枝市=は「長い間原発の危険性を訴えてきたが、ようやく司法が認めてくれた。これを機に脱原発の流れが強まるだろう。浜岡の運転停止を勝ち取るまで引き続き頑張りたい」と力を込めた。
中電と安全協定を結ぶ地元四市のうち、掛川市の松井三郎市長は「万全な安全対策が完了し将来にわたり安全安心が確保され、市民の理解が得られなければ再稼働できない」との考えを繰り返した。浜岡永久停止を求める牧之原市の西原茂樹市長は「事故があれば影響を受ける住民の主張に司法が耳を傾けた」と評価した。脱原発を主張する湖西市の三上元市長は「原発ゼロを望む国民を元気づける判決で、大きな意味がある。これからの原発訴訟は差し止めの判断が主流になってくるのでは」と期待した。
◆福島事故を意識した判決 【解説】
原子力規制委が全国十一原発の安全性の審査を進める中、その判断に先駆けて福井地裁が大飯原発3、4号機の運転差し止めを命じた。判決で「福島原発事故後、(司法が)判断を避けることは、裁判所に課された最も重要な責務を放棄するに等しい」とも言及。原発をめぐる司法の姿勢が大転換する可能性を示した。
判決には福島事故を意識した文言が随所に盛り込まれた。「家族の離散という状況や劣悪な避難生活の中で多くの人が命を縮めたことは、想像に難くない」「原子力発電技術の危険性の本質および、そのもたらす被害の大きさは福島事故を通じて十分に明らかになった」-。国民感情にまで踏み込んだ表現は、事故前の判決ではほとんど見られなかった。
過去の訴訟で裁判所は、国の手続きの適否を中心に審理し、多くは「手続き上、適法」などと判断してきた。だが、福島事故後は「内容に踏み込んで判断すべきだ」との意見が高まっており、最高裁が二〇一二年一月に全国の裁判官を集めて開いた研究会でも、こうした意見が出されたという。
判決は、原発の新規制基準についても「裁判所の判断が及ぼされるべきだ」と指摘し、司法の独立性を宣言。福島事故の「前」と「後」での姿勢の違いを明確に示した。
政府は新基準に基づく審査を進め、原発再稼働への動きを加速させている。だが判決は、電力会社や国に対し、原発の安全性確保をより厳格に求める内容といえる。(福井報道部・布施谷航)
廃炉しかない浜岡原発 共産党がシンポ 熱い議論
しんぶん赤旗 2014年5月25日
日本共産党静岡県委員会は24日、中部電力浜岡原発(御前崎市)4号機の再稼働に向けた審査申請がされている事態のもと、浜岡原発はどうあるべきか考えるシンポジウムを静岡市で開催し、130人が参加しました。「東海地震の震源域の真上にある危険な原発は廃炉しかない」などの議論がされました。
パネリストを水野誠一・元西武百貨店社長(元参院議員)、外岡達朗・静岡県危機管理監代理、井上哲士・党参院議員がつとめ、山村糸子県委員長が主催者あいさつしました。
水野氏は、「御前崎市出身で財界有力者だった父が原発を誘致した。原発事故はなんとしても起こしてはいけないと考え行動している。直下型の東海地震がおきれば福島以上の被害。日本は終わる。絶対に再稼働は許してはいけない」と強調しました。
外岡氏は、県が同原発から31キロ圏内の住民が車で逃げることを想定した避難シミュレーションをしたが、地震・津波による道路被害への対策など課題があると説明。「県として1人でも有効に逃げてもらうため検討している。安全確保につとめていく」と語りました。
井上氏は「浜岡から31キロ圏内の市町約96万人の避難計画をつくることは不可能。浜岡原発は廃炉しかない」と述べました。
特別報告した党福島県議の宮本しづえ氏は「原発ゼロにむけて静岡と連帯し福島が先頭に立って頑張る」と力説しました。