福島原発事故の収束は、被災者への損害賠償と汚染水問題をはじめとしてさっぱり見通しが得られていませんが、それでも政府は体制の刷新に務めているということです。
・政府は昨年12月、関連の閣僚会議を「廃炉・汚染水対策関係閣僚会議」に一本化し、司令塔の機能を強めるとしました。
・今年2月には、賠償や除染で東電に資金援助してきた原子力損害賠償支援機構に、廃炉や汚染水対策の指導・監督権限を加えた新組織の設立を閣議決定しました。新組織の廃炉部門には、原子力や土木工学の専門家を中心とする委員会を設置し、電力会社や原発メーカーなどでつくる国際廃炉研究開発機構(IRID)などと協力し、技術的な助言や指導を行う方針ということです。
・東電も4月1日に、事故対応に特化した社内分社「福島第1廃炉推進カンパニー」を立ち上げました。
いずれにしても、被災者への賠償や汚染水問題解決に関して、政府と東電の対応がこれ以上悪くなるということはもはやあり得ないことなので、新体制を上手く機能させて事態の改善に務めて欲しいものです。
「福島第一原発の現状」と副題を衝けた共同通信の総括版的記事を紹介します。
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廃炉新体制の構築へ 政府、東電が組織刷新
共同通信 2014年5月5日
東京電力福島第1原発の着実な廃炉に向け、政府や東電の組織の刷新が続いている。政府の閣僚会議の統合、東電の社内分社化に続き、今夏にも廃炉を監督する新組織、原子力損害賠償・廃炉等支援機構が発足する見通しで、原発事故に対応する新たな体制が構築されようとしている。
「国が前面に立って福島の再生を加速化する」。昨年12月の復興指針でこうアピールした安倍政権は、事故対応などを協議する閣僚会議を「廃炉・汚染水対策関係閣僚会議」に一本化し、司令塔の機能を強めた。
今年2月には、賠償や除染で東電に資金援助してきた原子力損害賠償支援機構に、廃炉や汚染水対策の指導・監督権限を加えた新組織の設立を閣議決定した。
所管する経済産業省は「廃炉と賠償の関連性も考慮し、経営全体を監督する組織が廃炉の技術支援などを総合的に行うことが適切」と説明する。
関係閣僚会議で決めた中長期的な方針に基づき、東電を指導する役割を持たせるのが狙いで、現在、原賠機構法の改正案が参議院で審議中。通過すれば今夏にも発足する見通しだ。
新組織の廃炉部門には、原子力や土木工学の専門家を中心とする委員会を設置。電力会社や原発メーカーなどでつくる国際廃炉研究開発機構(IRID)などと協力し、技術的な助言や指導を行う方針だ。
また、政府は昨年、凍土遮水壁の設置に国費約320億円の投入を決めたが、原賠機構法の改正案では資金提供できる対象が拡大しており「国費投入が無原則に広がる危険がある」と懸念する声も出ている。
東電も4月1日、事故対応に特化した社内分社「福島第1廃炉推進カンパニー」を立ち上げた。
1200人体制で、 最高責任者 には事故当時、福島第2原発所長だった 増田尚宏 (ますだ・なおひろ) 氏を起用。副責任者には現場経験が長い原発メーカーの部門責任者級3人が就いた。
増田氏は就任会見で「第1原発が安定し、福島の方々の生活が元に戻らない限り、東電の存続は許されない」と意気込みを見せた。しかし、その後も、移送先でない建屋に高濃度汚染水約203トンが流入するなどトラブルは絶えず、予断を許さぬ状況が続いている。