2014年5月22日木曜日

高齢化原発は韓国にも 日本も多数を所有

 朝日新聞に「セウォル号の次は原発 恐れる韓国」と題したレポートが掲載されました。
 韓国では、セウォル号事件で安全管理のずさんさが事故の背景として指摘されましたが、(韓国の)原発にも同じようなずさんさはないのかという懐疑のまなざしが向けられているというものです
 その一番の対象が古里原発1号機で、当初設計寿命が「30年」とされていたものの、その寿命を迎えた2007年韓国政府は10年間の運転延長を認めましたが、2012年にいく度目かの電気電気系統故障が起きて、全電源が約12分間喪失し、原子炉冷却水の温度が20度余り急上昇しました
 
 日本でも運転開始後30年はとうに超えて、40年目に近づいている原発が多数あります。それを更に20年も延長できるようにしようというのが、昨年月に施行された改正原子炉等規制法でした。驚くべきことです。
 
 その一方で肝心の原子炉鋼板の劣化の詳細データは、電力中央研究所が自組織の中で抑えていて詳細を公表していません。もともと劣化度を測定するテストピースは30年分しか原子炉内に取り付けられていなかったといわれています。
 
 高齢化原発の危険性は日本の方がより顕著で、決してよそ事ではありません。
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(核リポート) 「セウォル号の次は原発」恐れる韓国
中野晃〈前ソウル支局員〉 朝日新聞 2014年5月20日
※ 核と人類取材センター
 「原発は、まだ沈没していないセウォル号だ」。韓国紙・京郷(キョンヒャン)新聞は5月6日付で、珍島沖の旅客船沈没事故に関するデスクのコラムを掲載。韓国の原発を、事故を起こした旅客船にたとえ、その安全性に疑問を投げかけた。
 
 韓国検察と海洋警察庁の合同捜査本部のこれまでの調べで、セウォル号は、客室を増やすための無理な改造で重心が高くなっていたことや、過積載の航行を繰り返し、貨物の固定も極めて不十分だったことが判明。事故時に備えた安全教育を受けたことがない、と逮捕された船員が供述するなど、安全管理のずさんさが事故の背景として指摘されている。
 
 「問題だらけ」ながらも当局が航行を見過ごしてきた旅客船。その事故をきっかけに、韓国の原発にも同じような懐疑のまなざしが向けられているのだ。
 
■「最古の原発」不信と不安
 韓国のNGO「エネルギー正義行動」の李憲錫(イ・ホンソク)代表は、セウォル号沈没事故の前後で、原発に関するツイッター上のつぶやき(書き込み)の数に変化があるかどうかを調べた。
 
 それによると、「原電(原発)」という単語を含む書き込みは、事故発生の4月16日までは1日500件未満だったが、事故当日に約1800件に急増。その後も日増しに増え、5月に入ると5千件を超えた。また、韓国で最も古い原発がある釜山市の「古里(コリ)」という地名を含む書き込みは、4月16日まで1日500~800件で推移していたが、16日を境に数が伸び、5月には約4千件に達した。韓国は6月4日に統一地方選の投開票日を控えているが、その目玉であるソウル市長選の有力候補者に関する書き込みよりも「原電」や「古里」が数で上回っているという。
 記者が韓国のブログサイトを検索してみても、「セウォル号の次は古里1号機か」「第二のセウォル号が近づいている。古里原発」といった事故後の記事が次々と出てきた。
 
 李代表は「(日本の)中古船を改造したセウォル号の事故をきっかけに、古里1号機を中心とする老朽化した核発電所(原発)に対する国民の関心が高まり、廃炉を求める声も強まっている」と指摘する。
 水平線上に日本の対馬が見える釜山市の観光名所・海雲台(ヘウンデ)から約20キロ。朝鮮半島で最も日の出が早い岬にも近い古里原発の1号機は、朴槿恵(パククネ)大統領の父にあたる朴正熙(パクチョンヒ)大統領の独裁政権下の1978年、韓国発の商業用原子炉として運転を始めた。漁民らの反対運動は「力で封じられた」(地元のお年寄り)という。以来、韓国政府は一貫して原発推進路線をとり、現在4カ所で計23基の商業炉が稼働し、海外輸出にも力を入れている。
 
 古里原発1号機は当初、設計寿命が「30年」とされていた。その寿命を迎えた2007年、韓国政府は10年間の運転延長を認めたが、電気系統など度重なる故障による運転停止を繰り返してきた。福島第一原発事故直後の2011年4月、不安を抱いた地元住民らが立ち上がる。約100人の市民が稼働中止を求める仮処分を釜山地裁に申請。老朽原発の行方に関心が集まった。
 
 そんな中、12年2月、1号機で再び電気系統が故障。非常用の発電機も作動せず、全電源が約12分間失われて原子炉の冷却水の温度が20度余り急上昇した。あわやという事態を原発側は国にも報告せず、出入り業者の会話を地元の食堂で耳にしたという市議の追及でひと月余り後に明るみに。重大な「事故隠し」に周辺集落を含む多くの釜山市民から「廃炉」を求める声がわきあがった。「事故隠し」を指示した1号機の所長らは刑事訴追されたが、韓国政府は半年後、国際原子力機関(IAEA)から安全性に関する「お墨付き」を得たとする原発側の申し立てを受けて1号機の再稼働を容認。やがて、世間の関心も薄れていった
 
 セウォル号が沈没した今年4月16日。折しもこの日、定期点検で2月末から運転をとめていた古里1号機が再稼働した。国の原子力安全委員会が認めた。沈没事故の報道一色でマスコミではほとんど取りあげられなかったが、SNSを通じて市民の間に「古里1号機は大丈夫か」という不安が広がった。ポータル・サイトでは「再稼働反対」の署名が1週間で1万人を超えた。ソウルの地下鉄衝突事故も起き、あらゆる安全管理システムへの信頼が揺らぐ中、「次は原発かも」という不信と不安が膨らんでいるのだ。
 
■不正・癒着…ずさんな安全意識
 韓国の原発をめぐっては、部品納入をめぐる不正をあばく検察の捜査が進行している。昨春、一部の原発や建設中の原発に使われている、原子炉を制御するケーブルの「試験成績書」、すなわち品質検査の証明書が大量に偽造されていたことが、関係者の告発がきっかけで判明した。捜査は、部品納入業者だけでなく、韓国のすべての原発を管理・運営する公営企業「韓国水力原子力」(韓水原)の本社、さらには政府の関係省庁にまで及び、長年隠されてきた「非理(不正)」がイモヅル式にあらわになった。