原子力発電所の運転再開を巡って火山の影響が懸念されるなか、29日、日本火山学会は、原発と火山活動について議論する委員会を開き、このなかで「現在の観測態勢では、大規模な噴火の規模や時期を事前に正確に把握することは難しい」とされました。
ことの発端は、一番問題が少ないとして最も早く規制基準の審査をパスすると見られている九州電力川内原発で、火山噴火による火砕流到達の検討が十分に行われていないのではないか、という指摘があったことにあります。
原子力規制委は昨年7月にまとめた新規制基準に初めて火山対策を盛り込み、原発から半径160キロ圏内の火山を調査し、火山灰に対する防護措置を講じることなどを各電力会社に要求するとともに、火砕流が襲う可能性が明確に否定できない場合は、「立地不適」とする方針を示しました。
川内原発のある九州南部は国内有数の火山地帯で、原発の周辺には、巨大噴火の際にできたカルデラ(陥没火口)を持つ火山が「阿蘇」 「加久藤(かくとう)・小林」 「姶良(あいら)(桜島)」 「阿多」 「鬼界」と5つもあります(最も近い姶良までの距離は40キロ)が、九州電力は川内原発の運転再開の前提となる安全審査で、広い範囲に火砕流が及ぶような大規模な噴火の兆候を、地震や地殻変動の観測を充実することで捉え、必要な対応ができると説明していました。
29日の日本火山学会委員会は、九州電力がいうように大規模な噴火の規模や時期を事前に正確に把握することが果たして可能かどうかについて、専門家の意見をまとめようとしたものです。
火砕流が到達した場合原発に与える悪影響は致命的であり、地上のケーブルトレンチに600℃の火砕流(時速100キロ)が流れ込めば、動力ケーブル、制御ケーブルともたちまち焼損し全停止⇒過酷事故となります。
火砕流で原子炉建屋が壊されると、燃料プール内の核燃料が燃えながらまき散らされます。仮に建屋が大丈夫だとしても、周囲が壊滅してインフラが止まり、人が近づけなくなれば、冷却できなくなった炉心と、燃料プールの核燃料が燃え出して大惨事になります。
火砕流で原子炉建屋が壊されると、燃料プール内の核燃料が燃えながらまき散らされます。仮に建屋が大丈夫だとしても、周囲が壊滅してインフラが止まり、人が近づけなくなれば、冷却できなくなった炉心と、燃料プールの核燃料が燃え出して大惨事になります。
将来において仮に火砕流の到達が予測されるようになったとしても、短期間の内に核燃料を安全な外部に搬出したりすることは、事実上不可能と見られています。
従って規制委は当初の取り決めの通り、火砕流が襲う可能性が明確に否定できない場合は「立地不適」とするしかありません。
そもそも地震国、火山国に原発を設置すること自体に無理があったのですから、この問題で決断できないようであれば、規制委の役目は果たせません。
それなのに朝日新聞によれば、川内原発は規制委が審査OKを出す寸前の状態にあるということです。実に不可解なことです。
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火山学会が原発と火山活動を議論
NHK NEWS WEB 2014年4月29日
原子力発電所の運転再開を巡って火山の影響が懸念されるなか、日本火山学会は、原発と火山活動について議論する委員会を開き、このなかで「現在の観測態勢では、大規模な噴火の規模や時期を事前に正確に把握することは難しい」という意見が出されました。
この委員会は日本火山学会が設置し、横浜市で開かれた初会合には京都大学名誉教授の石原和弘さんや東京大学地震研究所教授の中田節也さんらが出席しました。
原発と火山活動を巡って九州電力は、鹿児島県にある川内原発の運転再開の前提となる安全審査で、広い範囲に火砕流が及ぶような大規模な噴火の兆候を地震や地殻変動の観測を充実することで捉え、必要な対応ができると説明しています。
29日の会合では、委員から「現在の地震や地殻変動の観測態勢では、大規模な噴火の規模や時期を事前に正確に把握することは難しい」などといった意見が出されました。
委員会では、今後も大規模な噴火が将来発生する可能性をどのように捉えるかなど原発と火山活動について議論することにしていて、委員長の石原和弘さんは「学術的な観点から意見交換や情報を共有することが大切だ。社会に何を示すことができるか考えていきたい」と話しています。
川内原発、審査最終段階に 九電、規制委に書類提出
朝日新聞 2014年4月30日
九州電力は30日午後、川内(せんだい)原発1、2号機(鹿児島県)について、これまでの原子力規制委員会の審査を反映した申請書類を規制委に提出した。規制委はこの書類をもとに審査書案をつくり、意見募集のうえ正式決定する。運転再開の前提となる新規制基準に基づく審査は最終段階を迎える。
川内原発は規制委が優先して審査している。九電が提出したのは、安全対策などの基本方針を修正した「補正申請書」。昨年7月の申請後、審査で指摘された内容を盛り込み修正した。想定する最大級の地震の揺れや津波をより大きくし、重大事故を防ぐための設備や起きたときの対応策などを追加した。
意見募集は科学的・技術的な内容について30日間で、審査書の正式決定は6月以降になる見通し。この時点で、基本方針については新規制基準を満たす原発と認められることになる。このほか、詳細な施設の設計を記した「工事計画」と、運転や事故対応の手順を定めた「保安規定」の審査もある。九電はこれらの補正申請書も5月末をめどに提出する。
運転再開には工事計画を踏まえた規制委による設備の検査も受ける必要があり、さらに1~2カ月かかるとみられる。九電が地元の同意を得て今夏中に再稼働できるかどうかは微妙な状況だ。