茨城県の東海第二原発(出力110万キロワット)の事業者:日本原子力発電(原電)が、20日、新規制基準の適合審査を原子力規制委員会に申請しました。九電力会社の十一原発の十八基目です。
同原発は首都圏唯一のもので、半径30キロ圏(UPZ)内には98万人が居住しており、大部隊だけに周辺市町村の避難計画づくりは難航しています。
申請を容認した周辺首長らも、「安全確認のためであり、再稼働に直結しない」ことを条件(新潟県の柏崎刈羽原発も同)としているので、申請が認められたとしても再稼働は難しいと見られます。
また運転開始から間もな36年、再稼動に必要な諸対策が終わる2016年6月には38年になるので、使用限度40年までの残りの2年間で対策費780億円が回収できるのかという問題もあります。
それでも原電の所有する発電所は敦賀と東海村の2箇所だけなので、原電としてはそこに活路を求めるしかありません。
再稼動の見込みが低いなかでのこの切羽詰まった申請は、原発の行詰まりを象徴することがらのように見えます。
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避難計画難航のまま 原電、東海第二の適合審査申請
東京新聞 2014年5月20日
半径三十キロ圏内に全国の原発で最多の百万人近くが居住している首都圏唯一の原発、茨城県東海村の東海第二原発の再稼働に向け、事業者の日本原子力発電(原電)は二十日、新規制基準の適合審査を原子力規制委員会に申請した。 (林容史)
周辺市町村の避難計画づくりが難航しているほか、営業運転開始から間もなく三十六年と老朽化し、原則四十年の運転期間をすぐに超える。さらに、申請を容認した周辺首長らも「安全確認のためであり、再稼働に直結しない」ことを条件として強調するなど課題が多く、申請が認められたとしても再稼働は難しい。
この日、原電の増田博副社長が東京都港区の規制委事務局を訪れ、申請書を提出した。東海第二原発の適合審査申請は、九電力会社の十一原発十八基目。
原電が申請に当たり明らかにした対応策によると、津波対策では、最高で海抜十八メートル以上、全長二キロの防潮堤を新設する。火災対策として、新規制基準では難燃性への交換が求められている電気ケーブルについて、既設のケーブルに燃えにくい塗料を塗って対応するとしており、審査の判断が注目される。対策が必要なケーブルの総延長は一八・五キロに上る。
ほかに、フィルター付きベント設備などを整備するとしている。
今回の対策費として原電は四百三十億円を見込む。東日本大震災後、独自に進めてきた安全対策の事業費を含めると、総額で七百八十億円。二〇一六年六月までに対策を終える予定。
また、原電は適合審査申請前の二十日午前、茨城県や立地する東海村に対し、原発施設の新増設計画書を提出した。
◆「再稼働直結せず」東海村長
山田修東海村長は二十日、申請について「東海第二原発の安全確保を図ることを前提としたもので、決して再稼働に直結するものではない。発電所の安全性が厳重に審査されることを期待する。原電には、これからも信頼を得られるよう、審査状況を含め情報提供を積極的かつ丁寧に行うことを求めていく」とのコメントを発表した。
<日本原子力発電東海第二原発>
1978年11月に営業運転を開始。出力110万キロワット。東京電力福島第一原発と同じ沸騰水型炉で東京電力、東北電力に売電している。2011年3月11日、東日本大震災で自動停止し。高さ約5・4メートルの津波で、工事中だった防護壁(高さ6・1メートル)の溝の穴から海水ポンプ室が浸水、冷却水をくみ上げるポンプ3台と3基あった非常用ディーゼル発電機のうち、1基が止まり、冷温停止まで3日半かかった。県は震災前の10年、津波ハザードマップに基づき、予測される津波の高さを4・9メートルから5・7メートルに引き上げ、原電に防護壁のかさ上げを要請していた。周辺30キロ圏内の緊急防護措置区域(UPZ)に98万人が居住。