2014年11月30日日曜日

高浜原発1・2号機稼働延長!?! 小出ジャーナル

 29日の小出ジャーナル(第99回)は、高浜原発1号機、2号機40年超の運転を目指している問題を取り上げました。
 高浜原発の原子炉は中性子のアタックを受けて劣化し、劣化の指標である延性脆性遷移温度が現に95℃にも上がっていると指摘し(正常値はマイナス数十℃)、そんな装置は「もう止めるのが当然のことだろう」と述べています。
 
追記
 小出氏は、来年3月末に京都大学を定年退職し、大阪府泉南郡熊取町の京大の原子炉実験所を離れるということです。そしてそれ以後はしばらく講演等の仕事を減らすつもりとのことです。
 詳細は下記をクリックして下さい。(2014/10/28追記の項)     
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特別検査で高浜原発1・2号機稼働延長か?
第99回小出裕章ジャーナル 2014年11月29日
ラジオ放送日 2014年11月28日〜12月5日 
 
 40年経ったのになおかつ、それを動かそうということ自体が私は随分異常なことだと思います・・・
 
石丸次郎 : 今日は、関西電力の高浜原子力発電所の1号機、2号機の再稼働についてお話を伺いたいと思います。
小出さん : はい。
石丸    : 関西電力が福井県にある高浜原子力発電所1号機、2号機。これは74年に稼働が始まりましたので、40年が経とうとしている原発ですけれども、これを特別検査を申請して、また再稼働させようとする動きが見えてますね。
小出さん : はい。
石丸    : 現行の法律では、基本的に原発の寿命は40年。特別検査をして、合格すれば20年プラスして60年まで稼働が一応可能ということになっておりますが、やっぱり心配になるのは、相当老朽化してるんじゃないかと。40年も動かし続けてということが真っ先に頭に浮かびますけれども。これ、どうですか?40年という稼働の原発は、どう考えたらいいでしょうか?
小出さん : 皆さん、ご自分の周りのことを考えて頂きたいのですが、例えば自分が乗っている車、40年前の車であったとすれば使い続ける気がするでしょうか?
石丸    : なるほど。
小出さん : あるいは、家庭の電化製品でもそうですけれども、40年前の物って、これからもずっと使っていこうと思うのが、むしろ不思議だろうと私は思います。原子力発電所というのは、特に安全性に十分な注意を払わなければいけない機械なわけですし、それがもう40年の寿命というか、40年経ったのに、なおかつ、それを動かそうということ自体が私は随分異常なことだと思います。
石丸    : なるほど。
小出さん  : 一番問題なのは、原子炉圧力容器と言ってる炉心を格納している圧力釜なのですが、それが中性子を被ばくしながら、どんどんどんどん劣化してきてしまっているわけです。
石丸    : やっぱり、鋼鉄製でも劣化してくると?
小出さん : はい、そうです。もちろん人間は被ばくをすれば、簡単に死んでしまうわけですけれども、鋼鉄も被ばくをすればするだけ劣化していくわけです。
     皆さん、家庭で使ってる鍋とガラスでできているコップという物を考えて頂きたいのですが、普通、私達が生活している場所というか、温度ですね。気温10℃、20℃、或いはマイナス零下何℃になるということもあるかもしれませんが、普通、鉄は割れないのです。ガラスは簡単に割れますけれども、鋼鉄は割れません。トンカチで叩いても、例えば落としたって、ひしゃげたり曲がったりするかもしれませんけども、割れないという性質を持っています。
     ただ、その鋼鉄もどんどんどんどん冷やしていくと、ある温度以下になると簡単に割れてしまう。つまり、ガラスのような性質になってしまうという温度が実はあるのです。
      それを私達は延性。普通、その鋼鉄が割れないというのを私達は「延性」と呼んでいるのですが、延びるのですね。金属というのは。それから、ガラスのように簡単に割れてしまう物を「脆性」と私達は呼んでいるのですが、温度が低いと大抵の物は脆性なのです。脆性から延性に変わる温度というのがあって、それを私達は「延性脆性遷移温度」と呼んでいます。
      鋼鉄の場合には、それが通常だと零下何十℃という所で、それ以上の温度であれば延びる。つまり、簡単には割れないという性質を持っているのですが、原子炉が稼働して、鋼鉄が被ばくをするに従って、その温度がどんどんどんどん上がってくるのです。例えば、高浜原子力発電所の1号機の場合には、すでに脆性から延性に変わる温度が95℃という値がすでに数年前に得られています
石丸    : これ、えらく高くなってるっていうことですね?
小出さん : どんどんどんどん、その遷移する温度が高くなってきてしまっていて、95℃以上であれば、まだ金属の性質を持っているけれども、95℃以下、つまり普通、私達が生活している温度の状態では、もう高浜原子力発電所の原子炉はガラスなのです。ですから、何かコトがあれば、バリっと割れてしまうという、そういう危険な状態にすでになってしまっています。本当であれば、もうこういう原子炉は動かさないという判断をするのが妥当だろうと私は思います。
石丸    : なるほど。脆くなる温度が上がってきたと?
小出さん : そうです。はい。
石丸    : これは、中性子を浴び続けたせいなんですか?
小出さん : そうです。まさにその通りです
石丸    : ということは、どんどんどんどん脆くなって、40年間脆くなってきた物を、でも使い続けざるを得ないわけですよね?交換はできないわけですもんね?
小出さん : 交換はできない。ですから、原子力発電所の寿命というのは、もともと40年ぐらいだろうと言われていたわけですけれども、それは、この原子炉圧力容器というものが交換できないし、それがどんどん中性子を被ばくして劣化してくるので、40年ぐらいで止めておくのが妥当だろうなと初めに考えたのです。その時期がもう高浜原子力発電所にはきているわけですし、私はもう止めるのが当然のことだろうと思います。
石丸    : なるほど。動機が経済的な動機、つまり欲ですよね?
小出さん : はい、そうです。
石丸  : 儲けたいということで、この安全の問題がまた二の次になるようなことって本当に困りますよね?
小出さん : はい。 
石丸    : これも高浜の問題もですね、この脆性、脆くなる、ガラスのように脆くなるっていうこと。どれだけ検査で規制の方が検討するのかちょっと分かりませんけれども、注目していきたいと思います。
小出さん : はい。
石丸  : 小出さん、今日はどうもありがとうございました。
小出さん : ありがとうございました。