九州電力川内原発の重大事故時の避難計画について国や県は「避難計画は整備済み」としていますが、避難者を受け入れる自治体のほとんどに避難所となることを知らせておらず、施設側も把握していないことが東京新聞の調査で分かりました。こんな最も基本的な事柄さえも詰められていない計画というのは一体何なのでしょうか。ズサンな計画というべきです。
これでは受け入れ準備もないままで過酷事故を迎えることになり、混乱を招くのは必至です。また福島原発で避難中に落命するケースを生じた避難弱者の悲劇が再現されます。
そもそも最も難題である避難弱者の避難計画はキチンと出来ているのでしょうか。
経産省から5人のメンバーが避難計画の立案に参加したことになっていますが、実際には地元の説明会などに出席するのが主な仕事で、避難計画の立案には殆ど参画していなかったと言われます。
そもそも川内原発の30キロ圏内には20万人以上の住民がいますが、一体どういう交通手段で避難するのでしょうか。もしバスであれば何台が必要で、その調達のめどは立っているのでしょうか。
そうした裏づけがない避難計画は文字通り机上の空論に過ぎません。計画の実効性は果たしてチェックされているのでしょうか。
東京新聞の記事を紹介します。
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川内避難計画 形だけ 自治体の大半 施設側に知らせず
東京新聞 2014年11月6日
九州電力川内(せんだい)原発(鹿児島県)の重大事故時に避難者を受け入れる自治体のほとんどで、受け入れ先に指定した施設に避難所となることを知らせておらず、施設側も把握していないことが本紙の調査で分かった。国や県は「避難計画は整備済み」としているが、受け入れ準備もないままでは、いざという時に混乱を招くのは必至。計画の実効性が問われそうだ。(小倉貞俊)
本紙は、川内原発の事故時に、五~三十キロ圏内からの避難者を受け入れることになっている十五自治体(熊本県含む)に、対象施設との話し合いや物資の備蓄などの状況をヒアリング。さらに学校や公民館などいくつかの避難所を訪ねるなどして、当事者意識などについて取材した。
その結果、十二の自治体では、避難先に指定されていることを施設に知らせていなかった。知らせた三自治体も、伝えた内容は避難者の予定数程度だった。避難所の立ち上げや食料など物資の調達・負担について、避難元と避難先の自治体のどちらが行うのか、具体的に決めた事例もなかった。
知らせていない理由を尋ねると「各施設は地元の災害時の避難所に指定されており、あらためての通知は不要と考えている」(南九州市など)、「場所を提供するだけ。食料などは避難元が準備すると認識」(熊本県津奈木(つなぎ)町など)との回答だった。当事者意識は薄く、いざという時、素早い対応ができるかは疑わしい。
避難所の指定施設を回ると、どこの職員も原発事故の避難所になっていることを聞かされ、驚きの表情を浮かべた。
約二百人が避難することになっている霧島市の中学校では、校長が「いま避難してこられても、マニュアルもなく対応できない。教職員も心の準備ができない」と困惑。姶良(あいら)市の公民館の職員は「台風などの自然災害時に地元の人が避難に来ることも多く、原発事故と同時に起きたら手に負えない」と話した。
鹿児島県の避難計画では、避難所の開設などの初期対応はできるだけ受け入れ自治体が行うべきだとしているが、理想にはほど遠い現状だ。
県の担当者は取材に「現場となる施設に対しても、事前に周知するのが望ましい」と認めつつも、指導するかどうかは決まっていないという。
<川内原発の避難計画> 原発30キロ圏にある9市町が策定した。計画の中で指定した避難所は約700カ所あり、場所は事前に県が調整した。圏内人口は21万人で、自治会ごとに1カ所ずつ小学校や公民館などが割り当てられている。政府は避難計画を9月の原子力防災会議で了承し、安倍晋三首相は「具体的かつ合理的」と強調。ただし、国も積極的に計画づくりに関与したのは、事故時に即時避難を求められる5キロ圏にすぎない。