関西電力大飯原発3、4号機の運転差し止めを求めた訴訟で、福井地裁は5月21日、「原発の運転には具体的な危険性があり人格権が侵害される」として、原発の運転差し止めを命ずる画期的な判決を出しました。
それを受けた控訴審が5日、名古屋高裁金沢支部で開かれます。原告弁護団は関電が提出した控訴理由書について「新しい主張はなかった。一審の補充のような印象だ」と述べています。新しい主張がないのであれば、極めて説得力のあった一審の判断に沿った結論が下されなければなりません。
これまで原発訴訟で住民側が勝訴したのは、高速増殖炉もんじゅの設置許可を無効とした2003年の同支部判決と、北陸電力志賀原発2号機の運転差し止めを命じた06年の金沢地裁判決がありますが、いずれも上級審で住民側が敗訴しています。
福島原発事故の後も上級審が政府寄りの判断を示し続けるのか、裁判の行方が注目されます。
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大飯原発差し止め訴訟 5日控訴審 福井地裁判決の是非を問う
福井新聞 2014年11月4日
福井県などの住民が関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の運転差し止めを関電に求めた訴訟の控訴審第1回口頭弁論が5日、名古屋高裁金沢支部で開かれる。東京電力福島第1原発の事故後、初めて原発の運転を認めないと判断した一審福井地裁判決の是非を問う審理が始まる。
控訴審で原告側は控訴棄却を求める。関電は一審判決で欠陥があると指摘された原子炉を冷やす機能や放射性物質を閉じ込める構造、最大の争点だった「基準地震動」(耐震設計の目安となる地震の揺れ)の考え方などについて主張の正当性を控訴理由書で陳述する。
原告弁護団は関電が提出した控訴理由書について「新しい主張はなかった。一審の補充のような印象だ」との見方を示す。
5日の口頭弁論で、原告側は「福井から原発を止める裁判の会」の中嶌哲演代表や脱原発弁護団全国連絡会共同代表の河合弘之、海渡雄一弁護士ら5人が意見陳述する。来年9月の第5回口頭弁論までの期日が決まっている。
一審判決は今年5月21日、提訴から1年半という短期間で出された。福島事故での被害を念頭に、250キロ圏内の原告166人について「具体的な危険があり人格権が侵害される」として、原発の運転差し止めを命じた。基準地震動では関電の想定より下回る場合でも冷却機能喪失が生じ得るとした。
関電は判決を不服として同支部に控訴。原告適格が認められなかった250キロ圏外の住民23人も控訴している。
全国で現在係争中の原発訴訟では、この判決を証拠として提出したり準備書面に活用したりする動きがあるなど注目度は高い。
原発訴訟で住民側が勝訴したのは、高速増殖炉もんじゅ(福井県敦賀市)の設置許可を無効とした2003年1月の同支部判決と、北陸電力志賀原発2号機(石川県志賀町)の運転差し止めを命じた06年3月の金沢地裁判決がある。しかし、いずれも上級審で住民側の敗訴が確定している。