福島原発の2号機建屋から海側のトレンチに汚水が流入するのを遮断するための『氷の壁』が半年経っても凍らないため、最終的に壁の開口部に止水材を投入してきました。しかしそれでも凍る気配はなく、逆に一部で温度が10℃上昇しているということです。
11月中旬まで待っても凍結しなければ『氷の壁』は断念して、トレンチをコンクリートで埋めるということです。
随分と長い回り道でした。
『氷の壁』が出来なかった理由は、水路が部分的に凍ると通水断面積が減って通過流速が上がるためです。トレンチの凍結の場合は開口面積が約1割に減じた時点で凍結が進まなくなったということです。
これは極く基本的な問題で、これへの対策がないままに着工するということは本来ありえない話です。しかし凍結しなくなったことが判明してから、氷やドライアイスを投入するなどのドタバタ騒ぎを数ヶ月間も続けた挙句にギブアップしたところを見ると、完全に見落としていたとしか思われません。
トレンチはいずれコンクリート封鎖で解決するとしても、問題は本体の延長1400mに及ぶ「氷の壁工事」の成否です。トレンチと同じ「一部が凍らない」現象が無数に生じることは明らかで、それがどの部分で起きているかの把握が出来ないことも明らかです。
この問題がクローズアップされるのは時間の問題です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「氷の壁」温度10度上昇 福島第1原発 コンクリでの埋設も現実味
産経新聞 2014年11月1日
東京電力福島第1原発の海側のトレンチ(地下道)に流れ込む汚染水を遮断するための「氷の壁」が半年たっても凍らない問題で、東電は31日、未凍結部分に止水材投入後も、一部で温度が約10度上昇していたことを明らかにした。全体的に温度は低下傾向にあるとしているが、11月中旬までに止水材投入に効果がないと判断すれば、トレンチをコンクリートで埋め、氷の壁を断念するという。
この日の原子力規制委員会による検討会で、東電側が報告した。東電は4月末、凍結管を通して周囲の水を凍らせる氷の壁を導入したものの、氷やドライアイスを投入しても約1割が凍らないため、10月初旬から止水材を入れて未凍結部分を間詰めする工事を実施してきた。
間詰め後に温度は一時、マイナス15度近くまで下がったが、10月30日に計測したところ、再び10度近く上昇していたことが判明。東電は「水位が高い所で温度が上昇しており、熱量の流動のデータを見て吟味している」と話し、原因を究明中だという。
間詰め工事は10日まで行われる。当初は、凍結止水した上で、汚染水を移送し、トレンチに閉塞(へいそく)材を充填(じゅうてん)する方針だった。氷の壁で止水効果が確認できない場合、トレンチ内の水を抜き取るのではなく、汚染水ごと水中不分離性のセメント系材料で埋める方策に移行することがこの日の検討会で確認された。
トレンチには高濃度の汚染水が約1万トン以上滞留しており、津波などによる海への漏洩(ろうえい)が危険視されている。
この日の検討会でコンクリ埋設の案について、会津大の角山茂章・教育研究特別顧問が「リスクの高い汚染されたコンクリートが増えるだけだ。かなりの量になると推定できる」と懸念を示した。