2014年11月14日金曜日

電力自由化後は電気料上乗せ分で原発を保護

 経済産業省は13日「原子力小委員会」を開き、電力事業が自由化された後も国が原発事業による収益を保証し、損失が生じる場合は電気料金に上乗せできるようにするなど原発優遇策を盛り込んだ今後の方針をまとめまし
 
 電気料金は201820年をめどに総括原価方式が廃止され、小売り会社が自由に決められるようになりますこのときに廃炉の費用や使用済み核燃料の処分費用まで見積もると原発の発電コストが高くなって火力と価格競争に負けるため、現行の発電コストからはみ出しているそれらの部分を電力料金に上乗せして、その分で原発を救済しようとするもので、英国の制度を真似しようとするものです。
 
 しかし英国の制度は、新基準にすると原発の発電コストが上がることを国民が認めたうえで、新規に建設される原発についてのみ適用されるものですが、日本の場合は原発が高コストであることを明らかにしないままで、既設の全ての原発に適用するという点で根本的に異なっています。
 
 それにしても政府が「原発は安い」という公式見解を変えないというのであればそうした原発優遇策を取る必要性を一体どういう風に国民に説明しようというのでしょうか。
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原発損失料金上乗せ 自由化後の中間案
東京新聞 2014年11月13日 
 経済産業省は十三日、原子力政策について話し合う有識者会議「原子力小委員会」を開き、今後の方針をまとめた「中間整理案」を提示した。電力事業が自由化された後も国が原発事業による収益を保証し、損失が生じる場合は電気料金に上乗せできるようにするなど、原発優遇策の必要性を盛り込んだ。詳細は年明けから詰める。大事故が起きた場合の国と電力会社の責任をめぐる議論は進んでいないが、国民負担を増やす議論は着々と進んでいる。
 
 優遇策は八月に委員会に示された英国の制度を参考にした。国の認可制度の下、電力会社が原発などの発電費用を全て回収できるよう設定できる総括原価方式の撤廃後も、日本の政府と電力会社が原発の建設費や使用済み核燃料の処分など、全ての費用を基に電気の価格を決定、損失が生じたら電気料金に上乗せし回収して穴埋めできるようにする
 さらに計画より早く原発を廃炉にする場合の費用負担も電気料金などに転嫁、原発を持つ電力会社が損をしないようにする。
 このほか「中間整理案」には、原発が廃炉になった場合の立地自治体への財政支援や、実現のめどが立たずに国民負担が増え続けている核燃料サイクル(再利用)計画、高速増殖炉「もんじゅ」の実用化を目指す方向なども盛り込んだ。
 電力自由化後、電気料金は二〇一八~二〇年をめどに総括原価方式が廃止され、小売り会社が自由に決められるようになる。経産省がモデルにした英国では、料金競争で火力発電が安くなり、高コストの原発は担い手がいなくなるため、優遇制度を導入した経緯がある。
 日本でも原発が割高だという民間の試算は多いが、政府は「原発は安い」という公式見解を変えておらず、優遇策の導入と矛盾する。
 また、国民負担を増やす議論が進む一方で、大事故が起きた場合の賠償責任の在り方など、原子力政策の責任をめぐる議論は進んでいない。
 
◆無責任体質そのまま
解説 
経済産業省が示した原子力政策をめぐる中間整理案は、原発についての国や電力会社の無責任体質を放置したまま国民負担を増やし、原発を維持する姿勢を明確に打ち出した。さらに中間整理案は、国が「安い」と言い続けてきた原発が本当は高コストだと認める形にもなっている。
政府は原発によって一キロワット時当たり最低八・九円で電気をつくることができるとして「ほかの電力と比べて安い」との主張は変えず、これを再稼働を進める根拠の一つにしてきた。本当に安いなら自由化後も電力会社が原発による発電に参入するはずで、優遇策が必要な理由が成り立たない。
さらに国民負担を増やす議論が進む一方、原子力政策をめぐる国と電力会社の無責任体質は変わっていない。
国会は、原子力損害賠償法を二〇一二年八月までに見直し、あいまいになっている国と電力会社の責任をはっきりさせると決議。だが具体策についてはいまだに議論中だ。経産省は九州電力川内(せんだい)原発を再稼働するために鹿児島県に「万が一の事故の場合は国が責任を持って対処する」とする文書を渡したものの、宮沢洋一経産相は十一日の記者会見で「責任は一義的には事業者(電力会社)にあるというのが法律上の規定だ」とぼかした。
原発を再稼働する場合に三十キロ圏内にある自治体の同意が必要かどうかも国と自治体、電力会社の思惑はばらばら。東京電力は国会で「必要」と答えたが、同意が必要な関係者を増やすと再稼働のハードルが上がるため、政府がこれを打ち消すという無責任な対応が続いている。
議論は着実に進むが、だれが原発に対して責任を負うのかという根本的な議論は三年前から一歩も進んでいない。 (吉田通夫)

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