2014年11月2日日曜日

再生エネ受入 全原発再稼働を前提に試算 経産省

 電力5社が再生エネの受け入れ手続きを中断し北陸、中国の電力が受入が「厳しい」と主張している問題について、経産省は30日、各社の受け入れ可能量を検証する専門部会の第回会合を開き、受け入れ可能量の試算方法を決めました。
 しかしそれによると、原発を震災前と同じように稼働させる前提になっているため、電力会社が実態とかけ離れた試算結果を出して、再生エネの受け入れができないという結論になりそうです。
 老朽化した原発まで再稼動させるという「原発最優先」の考え方では、再生エネの受け入れ余地は限りなく縮小され、事態の解決など望むべくもありません。
 
 経産省の担当者は「まずは現状の設備を前提に試算してもらい、廃炉が決まった場合は試算をやり直してもらう」「試算があまりにおかしければ、部会で有識者が指摘してくれるだろう」と話しているということですが、再生エネなどどうなっても構わないという考え方に他なりません。
 こうした政権の下では、太陽光発電などの再生エネの活用の増大などは全く望めません。
 そもそも突然の再生エネの受入中断で大被害を受けた人たちへの補償について、政府、経産省、電力はどう考えているのでしょうか。
 メディアの電力会社に対する弱腰も歯がゆい限りです。
 
 古い記事も含めて、東京新聞の3つの記事を紹介します。
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再生エネ 再稼働前提に受け入れ試算
東京新聞 2014年10月31日
 大手電力会社が再生可能エネルギーの受け入れ手続きを相次いで中断した問題で、経済産業省は三十日、各社の受け入れ可能量を検証する専門部会の第二回会合を開き、受け入れ可能量の試算方法を決めた。原発を震災前と同じように稼働させる前提になっているため、電力会社が実態とかけ離れた試算を基に再生エネの受け入れを拒否する恐れがある。
 
 再生エネの受け入れ手続きを中断した北海道、東北、四国、九州、沖縄の五電力と、「厳しい」と主張している北陸、中国の二電力が、この方法に沿って次回会合で試算を示す予定。
 原発は現時点で保有している設備を、震災前三十年間の平均稼働率で動かす前提。経産省は将来の望ましい再生エネや原発の比率をまとめていないため、過去の実績を基に試算してもらうことにしたという。
 しかし、震災を機に全国的に原発が停止し、再稼働のめどは立っていない。中でも、九州電力玄海原発1号機(佐賀県)と中国電力島根原発1号機(島根県)は稼働から四十年前後となっているため廃炉になる可能性があるほか、北陸電力志賀原発1号機(石川県)は原子炉直下の活断層が疑われている。試算ではこうした原発も運転する前提となる。
 原発の稼働想定が増えれば再生エネを受け入れる余地は狭まる。このため電力各社は過大な原発の稼働想定を基に「出力が高まりすぎるのでこれ以上再生エネを増やせない」と主張する可能性がある。
 
 経産省の担当者は「まずは現状の設備を前提に試算してもらい、廃炉が決まった場合は試算をやり直してもらう」と説明。「試算があまりにおかしければ、部会で有識者が指摘してくれるだろう」と話している。
 
 
揚水発電利用率わずか3% 経産省「再生エネ蓄電に活用を」
東京新聞 2014年11月1日
 標高が高い場所に水をくみ上げることで余った電気を実質的にためることができる「揚水発電所」の設備利用率は昨年度、全国で3%にとどまり、太陽光発電などの再生可能エネルギーが余ったときに蓄電する受け皿としてはほとんど活用されていないことが、経済産業省の集計で1日、分かった。
 
 九州電力など電力5社は再生エネの供給が増え過ぎて需給バランスが崩れる恐れがあるなどとして、新規受け入れを中断している。経産省は揚水発電を最大限活用すれば、再生エネの受け入れ可能量が増えるとみており、5社に試算の提出を求める。(共同)
 
 
再生エネ受け入れ量試算へ 原発再稼働を盛り込む恐れ
東京新聞 2014年10月17日
 大手電力会社が再生可能エネルギーの受け入れ手続きを相次いで中断した問題で、経済産業省は十六日、各社の受け入れ可能量を検証する専門部会の初会合を開いた。次回以降に計算方式を決めて各社に可能量を試算させ、年内に妥当かどうか検証する。しかし、原子力発電など再生エネ以外の発電をどの程度見込むかは電力会社の判断に委ねられ、「原発が稼働するので再生エネは受け入れられない」といった電力会社側に都合のいい試算が示される可能性がある。 
 可能量は二〇一三年度の実績を基に季節・時間別の電力消費と、太陽光と風力の発電実績を照らし合わせて受け入れ余力を計算する。まずは現行の規制やルールの範囲内で試算する。
 さらに、電力会社同士を結ぶ「連系線」という送電線の運用ルールを変えるなどの規制緩和を行った場合の試算も示す。緩和されれば一社で引き受けられない再生エネを別の会社に送りやすくなり、再生エネの受け入れ余地が広がる。こうした拡大策の詳細は次回の会合で詰める。
 しかし、原子力など再生エネ以外の電源がどれだけ稼働するかという想定は、電力会社に任せる。原発の再稼働などは先行きがはっきりしないため、経産省は想定を電力会社に「丸投げ」した格好だ。
 国と電力会社は原発について、昼夜を問わず常に一定の出力で稼働する「ベースロード電源」と位置付けており、稼働を見込めば再生エネを受け入れる余地は狭まる。電力会社側は「再生エネを受け入れると、送電網に多くの電気が流れすぎ、トラブルが起きる恐れがある」と主張できる。