2014年11月9日日曜日

川内原発再稼働へ不安の声

 7日、鹿児島県議会が川内原発の再稼働を求める陳情を採択し、それを受けて鹿児島県知事が再稼動に同意することを表明しました。知事は、「もう命の問題なんか発生しない」、「国民生活のレベルを守り、わが国の産業活動を維持する上で重要な要素だ」、「わが国の当面の判断として原発を活用する以外に道がない。安全性がある程度約束されるのであれば、それがベターだ」などと語ったということです。
 
 しかし電力は現状で足りているのに、敢えて不安の残る原発をなぜ稼動させようとするのでしょうか。しかも川内原発については、日本火山学会から新基準の火山条項をクリアしていないと指摘され、さらに避難計画の実効性も疑われているなかで、必要性のない原発を再稼動させようというのです。
 
 8日、川内原発再稼動を取り上げた地方紙の社説は、「後世に禍根を残す判断」「本当に責任が持てるのか」「不安が解消されない」などのタイトルを連ね、再稼動を懸念し不安視しています。
 
 8日付地方紙社説の一例
 
川内再稼働同意 「福島の教訓」生かせたか         西日本新聞
川内原発 再稼働へ多くの課題残し          .    神戸新聞
原発再稼働 無責任ぶりが目に余る              信濃毎日新聞
川内再稼働同意 住民置き去りでいいのか          新潟日報
 
 それにしても原発の真の発電コストは火力よりも高いことを承知している電力会社が、原発を稼動させたがるというのは不思議なことですが、従来のカウント範囲の「コスト」で処理すれば見かけ上収益は好転する上に、将来においてそれから逸脱する部分については国が何とかしてくれる筈だという確信があるからに他なりません。
 
 「避難計画に課題」があるとする熊本日日新聞の記事と、「安全の保証がない」とする神奈川新聞の記事を紹介します。(社説は上記のタイトルからアクセスしてください) 
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「避難計画に課題」 川内原発再稼働へ不安の声
熊本日日新聞 2014年11月8日 
 鹿児島県の伊藤祐一郎知事が九州電力川内原発1、2号機の再稼働に同意を表明した7日、水俣市など50キロ圏内に位置する熊本県内の首長や市民団体からは「避難計画などに課題が残る」「県内が被災する恐れもある」と不安の声が相次いだ。
 
  水俣市は、川内原発から40~50キロ圏。事故時に鹿児島県出水市から避難者約6600人を受け入れるが、西田弘志市長は「国は避難者の除染場所などについて明確な指針を示していない。このまま再稼働すれば、市民の不安を払拭[ふっしょく]できない」と話し、国などに十分な説明を求める考えを示した。
 
  再稼働に反対する市民団体「原発避難計画を考える水俣の会」は同日、原子力規制委員会に川内原発審査の合格取り消しを求め、異議を申し立てた。永野隆文代表(60)=同市=は「事故の被害は水俣まで及ぶ可能性がある。地元の同意は薩摩川内市と鹿児島県だけでは不十分だ」と訴える。同市の無職田村義一さん(86)は「賛成でも反対でもないが、地震や火山の危険を考えると、不安は拭えない」。
 
  芦北、津奈木両町も鹿児島県阿久根市の避難住民計約4600人を計10施設で受け入れる計画。津奈木町の西川裕町長は「原発は日本経済の発展やCO2削減につながる。再稼働すべきだ」と同意表明に理解を示した上で、「阿久根市の住民が長期的に避難する場合の住宅確保など、今後詰めるべき課題は少なくない」と話した。
  両町は地元住民への説明会を開いていないため、避難所のある芦北町計石東区の江島茂松区長(71)は「万一の時に混乱しないよう、地域住民にも十分な周知が必要だ」と求めた。
 
  川内原発運転差し止め訴訟熊本原告団の中島熙八郎共同代表(67)=熊本市東区=は「伊藤知事は県民の生命と財産を守る責任を放棄した」と批判し、「熊本県民も人ごとではない。福島原発の事故に立ち返って、危険性を真剣に考えるべきだ」と訴えた。(隅川俊彦、川崎浩平、横山千尋)   
 
 
川内原発再稼働で神奈川反応 「安全の保証ない」「地域の理解得た」
神奈川新聞 2014年11月8日
 鹿児島県の伊藤祐一郎知事は7日、記者会見し、九州電力川内原発1、2号機(同県薩摩川内市)の再稼働について「やむを得ないと判断した」として同意を表明した。事実上、再稼働が確実になった。原子力規制委員会の審査などが残っており、再稼働は年明け以降の見通し。
 
◇「安全保証していない」原告団長・村田さん
 「事故が起きる危険がないと誰も保証していない。なぜ再稼働を判断できるのか。もっと慎重になるべきだ」。国と東京電力に損害賠償を求めた横浜地裁での集団訴訟で、原告団長を務める村田弘さん(71)=横浜市旭区=は憤る。
 東電福島第1原発事故で自宅がある福島県南相馬市からの避難を余儀なくされ、避難生活は3年8カ月を迎えた。今月2日から3日にかけて半年ぶりに戻った自宅は荒れ果て、あらためてやりきれない思いにさいなまれた。各地に避難している人は疲れ果て、多くの家族が離れ離れのまま。深刻な放射能汚染も解決の道筋は見えていない。
 川内原発の安全性については、責任の所在があいまいだと感じてきた。「原子力規制委は基準に基づいて審査するだけで、絶対に安全かどうかは判断していない。一方で政府は規制委が基準に合格していると判断しているから、問題はないとしている」。これまでの議論に疑念は尽きない。
 地震、津波、火山噴火の恐れにも直面している川内原発。噴火は予知が可能で、恐れがあれば原発を止めて燃料は持ち出すと説明する政府に対し、「御嶽山の被害を見れば、そんなことはできないと誰でも思う。慎重の上に、慎重であるべきだ」。
 原発をいいかげんな尺度で扱えば、必ず悲劇は繰り返され、自分たちが味わっている苦難を多くの人が味わうことになる。だからこそ、言いたい。
 「原発が動いていなくても、私たちの社会は問題なく動いている。原発と、人の命はてんびんにかける話ではない」
 
◇県内首長からは理解と懸念の声
 九州電力川内原発の再稼働に伊藤祐一郎鹿児島県知事が同意したことを受け、神奈川県内で再生可能エネルギーの推進を目指す首長らから、理解と懸念の声が上がった。
 黒岩祐治知事は「薩摩川内市長、同市議会、鹿児島県議会の同意に基づき、知事が判断したこと。正しい選択だったと思う」と述べ、地元住民の理解を得た判断との見方を示した。
 「脱原発」の言葉を使った“元祖”と自負する黒岩知事だが、「原発ゼロにできればいいが、すぐにはできない状況の中では、(原子力規制委員会が)厳しいチェックをし、安全性に関する確証が得られれば、再稼働していくことはいいと思っている」と述べた。
 
 全国の市町村長ら有志でつくる「脱原発をめざす首長会議」の設立呼びかけ人の加藤憲一小田原市長は「原発立地地域の皆さんが判断したことに異論を唱えることはできない」とした上で、「再稼働にゴーサインが出されたことは非常に残念」と述べた。
 再稼働の動きが他に拡大することを懸念し、「地域の安全性や次世代への不安など原発が抱えるリスクを考えると、万が一の際にははるかに大きな代償を払うことになる」と強調した。
 また、「エネルギーから経済を考える経営者ネットワーク会議」の鈴木悌介代表理事(小田原箱根商工会議所会頭)は、「これまで原発なしでやってきたのに、ここで再稼働させる意味が分からない」と疑問を呈した。