2014年11月17日月曜日

老朽原発の延長 目先の損得勘定は困る

 運転開始から40年ほど経っている高浜原発1、2号機をさらに延長して運転しようとしていることに対して、京都新聞が15日、「老朽原発の延長 目先の損得勘定は困る」とする社説を載せました。
 
 この件については14日に取り上げていますが、京都新聞の社説によると関西電力はなんと20年延長することを検討しているということです。原子炉が60年もの寿命を持つとはまことに非常識な話なので再び取り上げます。
  11月14日 高浜原発2基、40年超運転を検討
 
 本当にそこまで延長できるのであれば、かなり大掛かりな改修を行っても採算が取れるでしょうが、肝心な原子炉に関してはそれを取り替えることは不可能なので、原子炉の劣化を詳細に調べて残存強度を把握するしかありません。
 しかし原子炉の残存強度を把握する(⇒ 使用可能寿命を把握する)ためのテストピースは炉内にいくつ装着されているのでしょうか。それは残存強度や脆性遷移温度を測定し、今後も定期的に測定を繰り返すための必要数を満足しているのでしょうか。
 そして仮に現状の値が把握されたとしても、今後それらがどのように推移するのかについての予測とその理論的裏づけを持っているのでしょうか。 
 
 もしも高浜原発で原子炉の爆発事故が起きれば、琵琶湖も汚染されるので少なくとも関西地方一帯は壊滅的な打撃を受けます。あやふやな根拠でそんな危険をおかすことが容認される余地など皆無です。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~
老朽原発の延長 目先の損得勘定は困る 
京都新聞 2014年11月15日
 目先の損得勘定で判断していいものだろうか。
 関西電力は、運転開始から40年前後の高浜原発1、2号機(福井県高浜町)を、さらに20年延長して運転できないか、検討している。延長となれば多額の安全対策費がかかるが、それ以上に再運転による利益が期待できるらしい。
 同じ敷地にある3、4号機の再稼働の審査も終えていない。関電の姿勢は前のめりに見える。
 
 老朽化した原発のリスクから、原子力規制委員会の新規制基準は運転を40年に制限している。20年延長は可能だが、あくまで例外であることを忘れてはならない。
 関電は年内にも判断する見通しだ。延長をめざすなら、原子炉容器などの劣化を詳細に調べる特別点検を実施して原子力規制委に申請、さらにケーブルの難燃化など新規制基準の適合審査を申請して認可を受けないといけない。
 これらの安全対策に多額のコストがかかるが、出力が82・6万キロワットの高浜1、2号機の再運転で、1カ月で約180億円の収支改善が見込まれる。一方で、それよりも出力の小さな美浜1、2号機は廃炉の方向という。まさに再運転のためのコストと採算性をてんびんにかけた、そろばん勘定がうかがえよう。
 
 国は、電力各社に老朽原発を廃炉にするのか、運転延長するのか判断を急ぐよう求めている。高浜1、2号機のほか敦賀1号機、島根1号機、玄海1号機など計7基が運転40年前後になる。延長する場合は来年4~7月までに審査を申請する必要があり、厳しいスケジュールが待っている。
 原発の廃炉に多額の費用がかかるため、電力各社は毎年の発電量に応じて積み立てているが、福島第1原発事故後の運転停止で積み立て不足が膨らんでいる。さらに廃炉となれば原発の資産価値はゼロとみなされ、巨額の損失が出る。このため国は会計処理の規則を見直し、廃炉しやすくなるよう検討している。原発立地の自治体にも財政上の配慮が要るだろう。
 
 福島第1原発事故による将来に及ぶ経済的損失が、一体どれくらいになるのか、見通すことさえできない。老朽化した原発は、やはり着々と廃炉を進めるべきだ。
 高浜原発から半径30キロ圏の緊急時防護措置準備区域(UPZ)に京都府の舞鶴市など7市町と滋賀県の高島市が含まれる。3、4号機の再稼働だけでなく、1、2号機の運転延長にも、関係自治体は目を向ける必要がある。