2014年11月1日土曜日

川内原発 放射能が漏れ出す前の避難は不可能

 30日の衆院予算委員会で共産党の笠井議員と政府との間で行われた川内原発の再稼動に関する論戦で、政府は避難計画の位置づけや実効性について、何の関心も持っていないことが明らかにされました。
 
 論議の前段は、巨大噴火を予知する手段がないのにどうして再稼動できるのかという指摘に対するもので、安倍首相は最後まで問題の正確な意味を理解できなかったようで、答えにならない的外れな文章を繰り返し読み上げて時間を浪費していました。
 
 笠井氏は次に過酷事故時に、5キロ圏内の住民が避難するのに5~16時間を要することを確認したのち、それでは事故の90分後に格納容器から放射能が漏れ出すという予測に対応出来ていないと指摘しました。
 
 政府側はこれまでただ漫然と避難に要する時間を算出しただけで、それで住民が被曝から守れるかのチェックは行っていないことが明らかにされました。
 90分後に放射能が漏れ出すのであれば、その前に住民が避難することなどは出来ません。再稼動は無理という結論以外にはあり得ません。
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川内原発 避難時間の計画なし 
    衆院予算委で笠井氏 再稼働中止を迫る
しんぶん赤旗 2014年10月31日
 日本共産党の笠井亮議員は30日の衆院予算委員会で、安倍政権が、巨大噴火への備えも、合理的な避難計画もなく、九州電力川内原発の再稼働を進めていると指摘し、「再稼働はキッパリやめるべきだ」と迫りました。 ( ⇒ 論戦ハイライト)
 
 笠井氏は、九電が巨大噴火を予知し、原子炉の核燃料を運び出すとしていることに対し火山専門家が、こぞって噴火予知も前兆現象の把握もできないと述べていると追及しました。安倍晋三首相は「九電は、噴火の可能性につながるモニタリング結果が観測された場合、必要な判断、対応をおこなう」などと言い張りました。
 笠井氏は「専門家よりも九電を信頼するというのでは、まさに新たな『安全神話』そのものだ」と首相の姿勢を批判しました。
 さらに笠井氏は、内閣府がまとめた「緊急時対応」には避難に要する時間が示されていないと指摘。九電は、川内原発で過酷事故が起これば19分後にはメルトダウンが起こり、90分で格納容器から放射能漏れが始まるとしているのに、「限られた時間内に避難ができると約束できるのか」とただしました。
 首相は「緊急時の対応にこれで完璧ということはない」などと開き直りました。笠井氏は「何日もかかって避難している最中に放射性物質を浴びたら、被ばくする。避難計画が未完成なのに、『具体的』『合理的』などとはとてもいえない」と批判しました。
 
(論戦ハイライト)
衆院予算委集中審議 笠井議員の質問
 
 九州電力川内原発(鹿児島県薩摩川内市)の再稼働に暴走する安倍政権。日本共産党の笠井亮議員は30日の衆院予算委員会集中審議で、ずさん極まる巨大噴火対策や避難計画を追及し、原発再稼働断念を迫りました。
 
巨大噴火対策  首相 “九電の保安規定は妥当”笠井 “専門家より九電を信頼する「安全神話」だ”
 
 巨大噴火の可能性があるカルデラ(火山噴火による陥没地形)が五つも存在する川内原発周辺。巨大噴火にどう備えるのか。
 九電の「保安規定」では、九電自ら巨大噴火を予知し、予知された時点で原子炉を止めて核燃料を運び出す手順が記されています。しかし、火山学の専門家は「前兆現象を数年前に把握できた例は世界にない」(藤井敏嗣東大名誉教授)と断言しています。
 
笠井 九電は「できる」と言うが、これが科学的か。
田中規制委長 破局的噴火の研究は十分に進んでいない。何らかの異常が検知された場合、空振り覚悟で措置を事業者に命ずる。
 
 実際に噴火があればどうするか。「保安規定」では、核燃料をどこに、どうやって、いつまでに運び出すか、そして核燃料の冷却方法も期間も記載されず、具体化はこれから。仮に予知できたとしても、肝心要の問題が未完成のままで、原子力規制委員会は再稼働に向けた“合格”を与えたことになります。
 
笠井 どうして「再稼働に求められる安全性は確保された」といえるのか。
安倍首相 九電は川内原発の運用期間中に火砕流が到達するような巨大噴火が起こる可能性は十分小さいと評価し、それを規制委員会は妥当と判断した。
笠井 専門家よりも九電を信頼している。まさに「安全神話」だ。
 
緊急時対応 望月担当相 “住民避難は5~16時間”笠井 “メルトダウンまで19分、数時間の話でない” 
   
 笠井氏は、内閣府が9月にまとめた緊急時対応について、避難にどれくらいの時間がかかるのかが一切示されていないと指摘しました。首相は答弁でも、それについて何も答えていません。
 
笠井 総理が原子力防災会議で「具体的かつ合理的なものと確認したと了承」した避難計画によって、いったい何時間で避難が完了するのか。
望月担当相 5キロ圏内の住民避難完了は、鹿児島県の推定によるとおおむね5時
     間から16時間。5キロ以遠は毎時20マイクロシーベルトを超える地域は1週
     間程度以内で一時移転をしていただく。   (担当相=原子力防災担当相)
 
 笠井氏は、川内原発で重大事故が起きた場合、19分後にメルトダウンが始まり、90分後には格納容器から放射能が漏れる九電自身の解析結果をパネル(上)で掲示しました。
 
笠井 数時間とか十数時間とかいう話ではない。時間との争いだ。限られた時間内に避難できると約束できないのに、どこが「具体的かつ合理的」なのか。
首相 全体として、極めて具体的な内容になってきている。これで完璧ではない。
 
 笠井氏は「完璧でないというより、避難計画は未完成」だと指摘し、「被ばくする前に避難を終えないと意味がない」「『具体的かつ合理的』なんて到底いえない」と批判しました。