17日、トーマス・カントリーマン米国務次官補が上院外交委の公聴会で、日本の核燃料再処理・核燃料サイクルはプルトニウムの大量保有量を減らすことにはつながらずに、経済的合理性もない。核安全保障と不拡散にとって懸念をもたらす政策なので停止することが望ましいとの考えを示したと、18日、読売新聞などが簡単に報じました※1。
東京新聞は27日付の紙面で、その発言は米国で31日に始まる核安全保障サミットに向けた牽制であるとともに、1988年の日米原子力協定が2018年に期限を迎えるにあたり、米国は協定の自動更新を認めない意向であることを示したものであると伝えました。
因みに米国は、1977年に核燃料再処理事業から撤退したということです。
日本の核燃料サイクルがプルトニウムの減量につながらないことは誰が見ても明らかなのに、経済性も全く度外視して固執しているのは、かねてから小出裕章氏が警告してるように核兵器用のプルトニウムを確保するというのが本当の狙い※2だからとしか思えません。この際米国の警告に従って、意味不明の核燃料再処理・核燃サイクルは即刻中止すべきです。
※2 28日付別掲小出裕章ジャーナル
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減らぬ日本のプルトニウム 米、核再処理に懸念
東京新聞 2016年3月27日
【ニューヨーク=北島忠輔】米国で三十一日に始まる核安全保障サミットを前に、原発の使用済み燃料を再処理してプルトニウムを取り出し、再利用する核燃料サイクル事業に米国が神経をとがらせている。背景にあるのはオバマ大統領が問題視するプルトニウムの大量保有だ。核兵器六千発分相当の四十八トンを抱える日本は核燃料サイクル事業実現で減らすと強調するが、めどが立たない現状に米国が疑問を呈した形だ。
米上院外交委員会が十七日に開いた公聴会。国務省で国際安全保障や核不拡散を担当するカントリーマン次官補は「再処理事業に経済的合理性はなく、核の安全保障と不拡散に懸念をもたらす。すべての国の撤退が喜ばしい」と言い切った。AP通信は「異例の踏み込んだ発言」と報じた。
オバマ氏は「テロリストの手に渡らないよう努力している分離済みプルトニウムのような物質を絶対に増やし続けてはいけない」と述べている。
一九七七年に再処理事業から撤退した米国は他国の参入を止める一方、日本には一九八八年に定めた日米原子力協定で例外的に認めた。協定期限は二〇一八年七月。いずれかが再交渉を求めなければ自動更新される。米国には期限前に問題提起する狙いがあった。
背景には事業を請け負う認可法人を設ける日本側の法制定の動きが指摘されている。鈴木達治郎・長崎大教授は「法律は、使用済み核燃料が出たら再処理費用を積み立てると規定。必要以上に持たないとの合意に反すると米側がみなした可能性がある」と話す。
公聴会で民主党のマーキー上院議員は「(事業認可を求める)韓国の後追いを促し、北朝鮮の核保有を防ぐ米国の努力を台無しにする危険がある」と更新交渉の必要性を指摘した。
<米国のプルトニウム回収> オバマ大統領は2009年、「核なき世界」を訴えたプラハ演説で、各国が保有する核物質がテロなどに悪用されるのを防ぐため、管理を強化する考えを示した。日本やドイツ、ベルギー、イタリアなどにあるプルトニウムが対象となっている。
日米は14年の核安全保障サミットで、冷戦期に英米仏が日本に提供した研究用プルトニウム331キロの返還に合意。今月22日に英国の輸送船が茨城県東海村を出港した。ところが運搬先のサバンナリバー核施設がある米サウスカロライナ州の知事が「住民の安全と環境保護のために受け入れられない」と反発。5月ごろに到着する輸送船が滞留する恐れが出ている。